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14.ダンジョンクエスト
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思い立ったら、即動く。ギルドマスターのアルト様の行動力はすごい。
次のダンジョンのクエストが決まった。
一緒に行くのは、ギルマスのアルト様。リリー様。カイル様に僕の四人だ。
マーティス様は、何やら別件でお礼をしたい人に会いに行ってくると言っていた。
せっかくの休みにどこに行ったのか、少し気になる。
「自分の事は自分で守りなよ~」
アルト様も万が一に備えて、手荷物は完璧にしている。
ポーションや食料は、一緒に居たら分けられるけど。問題は一緒に居れなくなった時だ。
一人だけ、はぐれる事もある。初心者に多いのは、ゴブリンに連れ去られるか、誘蝶の様な幻覚作用の影響を受け、道に迷い自分のレベルに合わない相手に遭遇するなどだ。
セーフティポイントへの地図や道標を頭に入れておく。各階の特徴を覚え自分の位置の把握。暗闇の対応や水の確保。全て生き残る為に必要な事だ。
アルト様が幻影兎を捕獲したい……ティムしたいのも分かる。でもクロを捕獲するのは、躊躇う。ただ、遭遇するのがクロだけなのだ。
(他の幻影兎を見かけないのは何でだろう? )
クエストの内容は、蛇蜥蜴鳥獣の鱗だ。十階層に転移ポイントがある。二十階層の攻略した者で尚且つB級以上が使用可能になっているのだ。それに見合わないと、転移した先で命を落としかねない。
S級のアルト様。A級である僕とカイル様。カイル様はすでにSよりだ。リリー様は、B級と言っているが、ランク上げを申請していないだけなので。問題ないはずだ。
さらに深層に行くのに、体力を温存する為に先人が作ったものの……楽をしようとした結果、命を落とした者は多いと聞いた。
日程は、三泊の予定だ。四日目の夕方に戻って来ない場合は、翌日には捜索隊が動くようになっている。ただ地下深くになればなるほど、間に合う可能性はない。
「足を引っ張るようであれば、何時でも切り捨てて下さい」
そう、カイル様に伝える。自分が行方不明になった時や大怪我を負った場合は、見捨てて欲しいと言う意味だ。
カイル様は、何故かしかめっ面のままだ。アルト様が何故か吹き出している。
「ほら、行くよ。そんな事をシェリルが言っても、私にとってシェリルは大切な弟子だからね」
神官様を思い出す。シェリルは大切な私の弟子だよ。涙が出そうだ。あの時神官様を助けられる力があったなら、どんなに良かっただろう。
「アルト様も絶対に生きて下さい」
ポンッと背中を叩かれる。
「本当に、お前は……」
アルト様に呆れられてしまった。言葉を間違えただろうか?
「とにかくシェリルは、俺の後ろにいたらいいんだ」
カイル様の邪魔にならないように、補助して行こう。
「はい。分かりました」
転移の先、遭遇した魔物の殲滅。速攻魔法で補助に入っていく。地形も、よく出る魔物も頭に入っている。
アルト様、カイル様の邪魔にならないように動く。リリー様とは普段から、手合わせをしているので気配を感じ取りやすい。合わせるのが簡単だ。
──皆、連携しやすい。
そして、蛇蜥蜴鳥獣が出た先に……幻影兎がいる。
クロだ。蛇蜥蜴鳥獣が大きな口を開けた。
「──クロ」
真黒の幻影兎の深紅の瞳が、僕をとらえた。
(食べられたら、どうするんだよ!)
思わず、前に出てクロを抱きかかえて、奴の前に立ってしまった。
「シェリル!!」
カイル様が叫んだ。
アルト様が、紅蓮の剣を手にする。
指揮棒を持ち、奴を睨みつける。
『魅了、我が支配下に入れ』
蛇蜥蜴鳥獣の動きが止まり、口を閉じ頭を下げて来た。そのまま動かなくなった。
「シェリル……琥珀の瞳に戻ってる」
カイル様の言葉に、慌ててしまう。
「あ、ごめん、なさい」
アルト様が剣を持ったまま、近付いてきた。
「シェリル……幻影兎じゃなくて、蛇蜥蜴鳥獣をティムしたのか?」
クロは、いつの間にか背中の方に張り付いていた。
「え……あれ? 嘘」
地上の動物以外で、初めてティムした魔物が蛇蜥蜴鳥獣になるとは、思わなかった。
次のダンジョンのクエストが決まった。
一緒に行くのは、ギルマスのアルト様。リリー様。カイル様に僕の四人だ。
マーティス様は、何やら別件でお礼をしたい人に会いに行ってくると言っていた。
せっかくの休みにどこに行ったのか、少し気になる。
「自分の事は自分で守りなよ~」
アルト様も万が一に備えて、手荷物は完璧にしている。
ポーションや食料は、一緒に居たら分けられるけど。問題は一緒に居れなくなった時だ。
一人だけ、はぐれる事もある。初心者に多いのは、ゴブリンに連れ去られるか、誘蝶の様な幻覚作用の影響を受け、道に迷い自分のレベルに合わない相手に遭遇するなどだ。
セーフティポイントへの地図や道標を頭に入れておく。各階の特徴を覚え自分の位置の把握。暗闇の対応や水の確保。全て生き残る為に必要な事だ。
アルト様が幻影兎を捕獲したい……ティムしたいのも分かる。でもクロを捕獲するのは、躊躇う。ただ、遭遇するのがクロだけなのだ。
(他の幻影兎を見かけないのは何でだろう? )
クエストの内容は、蛇蜥蜴鳥獣の鱗だ。十階層に転移ポイントがある。二十階層の攻略した者で尚且つB級以上が使用可能になっているのだ。それに見合わないと、転移した先で命を落としかねない。
S級のアルト様。A級である僕とカイル様。カイル様はすでにSよりだ。リリー様は、B級と言っているが、ランク上げを申請していないだけなので。問題ないはずだ。
さらに深層に行くのに、体力を温存する為に先人が作ったものの……楽をしようとした結果、命を落とした者は多いと聞いた。
日程は、三泊の予定だ。四日目の夕方に戻って来ない場合は、翌日には捜索隊が動くようになっている。ただ地下深くになればなるほど、間に合う可能性はない。
「足を引っ張るようであれば、何時でも切り捨てて下さい」
そう、カイル様に伝える。自分が行方不明になった時や大怪我を負った場合は、見捨てて欲しいと言う意味だ。
カイル様は、何故かしかめっ面のままだ。アルト様が何故か吹き出している。
「ほら、行くよ。そんな事をシェリルが言っても、私にとってシェリルは大切な弟子だからね」
神官様を思い出す。シェリルは大切な私の弟子だよ。涙が出そうだ。あの時神官様を助けられる力があったなら、どんなに良かっただろう。
「アルト様も絶対に生きて下さい」
ポンッと背中を叩かれる。
「本当に、お前は……」
アルト様に呆れられてしまった。言葉を間違えただろうか?
「とにかくシェリルは、俺の後ろにいたらいいんだ」
カイル様の邪魔にならないように、補助して行こう。
「はい。分かりました」
転移の先、遭遇した魔物の殲滅。速攻魔法で補助に入っていく。地形も、よく出る魔物も頭に入っている。
アルト様、カイル様の邪魔にならないように動く。リリー様とは普段から、手合わせをしているので気配を感じ取りやすい。合わせるのが簡単だ。
──皆、連携しやすい。
そして、蛇蜥蜴鳥獣が出た先に……幻影兎がいる。
クロだ。蛇蜥蜴鳥獣が大きな口を開けた。
「──クロ」
真黒の幻影兎の深紅の瞳が、僕をとらえた。
(食べられたら、どうするんだよ!)
思わず、前に出てクロを抱きかかえて、奴の前に立ってしまった。
「シェリル!!」
カイル様が叫んだ。
アルト様が、紅蓮の剣を手にする。
指揮棒を持ち、奴を睨みつける。
『魅了、我が支配下に入れ』
蛇蜥蜴鳥獣の動きが止まり、口を閉じ頭を下げて来た。そのまま動かなくなった。
「シェリル……琥珀の瞳に戻ってる」
カイル様の言葉に、慌ててしまう。
「あ、ごめん、なさい」
アルト様が剣を持ったまま、近付いてきた。
「シェリル……幻影兎じゃなくて、蛇蜥蜴鳥獣をティムしたのか?」
クロは、いつの間にか背中の方に張り付いていた。
「え……あれ? 嘘」
地上の動物以外で、初めてティムした魔物が蛇蜥蜴鳥獣になるとは、思わなかった。
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