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15.神託
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カイル様が、伯爵様の領地関係の仕事を手伝いながらダンジョンへと向かう。僕と組む事もあれば、他の冒険者と組む事もあった。
魔族領と呼ばれる地域は、不可侵領域でその約束を守る事で共存しているようなものだ。それなのに最近魔物出現の話が出ている。
ダンジョン内でも、今までとは違う動きがある為に注意喚起が頻繁になっている。
何かが起こるかも知れない、そんな不安からか、冒険者のランク上げは隣国でも力を入れているようだ。貴族の後継になれない、なりにくい次男以降の子息が騎士や魔法師の力を得ようとする意味もここに繋がる。活躍出来れば、爵位を貰える可能性があると聞いた。
カイル様がランク上げをする理由も、そうなのかもしれない。
僕自身は、アルト様に教わる事が多いので必然的にクエストを一緒にこなしている。アルト様の時は、前の方に出て魔法の精度を上げるようにしている。
カイル様がこちらに戻って来て、一年が過ぎた。カイル様が二十歳になり、僕は十八歳になった。従者としてそばにいる事になり、書類仕事も手伝っている。
あれから、魔物もティム出来てしまった訳だけど、あまり使わない様にしている。
「テイマーでも、こんな凶暴そうなのをティムするとか聞いた事ないからねぇ……」
アルト様は、色々と調べてくれているみたいだった。
「琥珀の瞳……って両親ともだった?」
「父親は、知りません。母親は、茶色の明るい感じだった位しか、もう記憶がさだかではないので」
「神官様は、テイマーだった?」
「違うと思います。教わっていたのは一般的な魔法の使い方や指揮棒の使い方くらいです。あ、でも……神官様は雨を降らせるから、神に愛されてるって皆に言われてましたけど」
「雨……ね。他になんか、特別な力があったのかねぇ」
ソファに深く沈みこんで、考え込んでいる。アルト様でも知らない事あるのだと、思うと……少し親近感が湧く。
「う~ん。シェリルが小さい頃の大規模な干ばつね。神官が各地に派遣された時があったのは覚えてるんだけどね。王都の方はそこまで影響が無かったんだよ。半年近く派遣されて、土砂災害に巻き込まれ行方不明になった方だよね。調べてみるか」
途端に不安になってしまう。神の怒りで、領地は壊滅した。
「シェリル、そんな顔しないで。神官様の故郷に、いつか花を持って行ってやりたいだろ?」
「はい」
また、クシャりと髪を撫でてきた。
不機嫌なカイル様は、神官様の話も、僕がテイマーとしての能力がある事も気にした様子はない。
ただ従者としてそばに居れば、それだけでいいと言われただけだ。
僕の居ない時に、難しいクエストもこなし、S級になった事をアルト様から聞いた。
「護衛には選ばれそうにないな。盾位になれたらいいけど……」
部屋に戻り、母の裁縫道具を引っ張り出した。気を紛らわすのに集中出来るからだ。小さなぬいぐるみを作っていて、ようやく掌サイズの黒兎が出来上がった。
「本当に、クロは僕の行く先に現れるよね。しかも、いっつも襲われそうになってる」
可愛い。本当に可愛い。でもティムしたのは蛇蜥蜴鳥獣とかだし、地上に連れて回る訳には行かない。
「クロなら、一緒にいても……駄目かな?駄目だな。役に立ちたいのに、上手くいかない」
そして僕は、ランク上げの試験は受けない事に決めたのだ。
これ以上、怒らせたくないから。
テイマーの事も、本当は言うつもりは無かったのだ。内緒にしていたかったのに、クロが食べられてしまうかと焦ったのだ。
本当に馬鹿だな。掌の黒兎マスコットを撫でてみた。
「蛇蜥蜴鳥獣を抑えられなかったらどうするんだ? 何かあってからじゃ困るんだ。それしか使う物がない時以外は呼ぶな」
そう言われてしまって、解除を考えた。でもなぜか解除が上手く出来なくて……本当に最悪。
ああ~クロだったら良かったかな。
そんな、ある日。
王都の神殿から、神の神託が降りたと噂が届いてきた。
魔王が目覚め、世界を恐怖に陥れる。勇者とその仲間によって世界を守れと言う様なものだ。
そして勇者の歳は二十歳。金糸の髪に青い瞳の該当する青年は、王都の神殿へ集うように王家からの召集がかかったのだ。
魔族領と呼ばれる地域は、不可侵領域でその約束を守る事で共存しているようなものだ。それなのに最近魔物出現の話が出ている。
ダンジョン内でも、今までとは違う動きがある為に注意喚起が頻繁になっている。
何かが起こるかも知れない、そんな不安からか、冒険者のランク上げは隣国でも力を入れているようだ。貴族の後継になれない、なりにくい次男以降の子息が騎士や魔法師の力を得ようとする意味もここに繋がる。活躍出来れば、爵位を貰える可能性があると聞いた。
カイル様がランク上げをする理由も、そうなのかもしれない。
僕自身は、アルト様に教わる事が多いので必然的にクエストを一緒にこなしている。アルト様の時は、前の方に出て魔法の精度を上げるようにしている。
カイル様がこちらに戻って来て、一年が過ぎた。カイル様が二十歳になり、僕は十八歳になった。従者としてそばにいる事になり、書類仕事も手伝っている。
あれから、魔物もティム出来てしまった訳だけど、あまり使わない様にしている。
「テイマーでも、こんな凶暴そうなのをティムするとか聞いた事ないからねぇ……」
アルト様は、色々と調べてくれているみたいだった。
「琥珀の瞳……って両親ともだった?」
「父親は、知りません。母親は、茶色の明るい感じだった位しか、もう記憶がさだかではないので」
「神官様は、テイマーだった?」
「違うと思います。教わっていたのは一般的な魔法の使い方や指揮棒の使い方くらいです。あ、でも……神官様は雨を降らせるから、神に愛されてるって皆に言われてましたけど」
「雨……ね。他になんか、特別な力があったのかねぇ」
ソファに深く沈みこんで、考え込んでいる。アルト様でも知らない事あるのだと、思うと……少し親近感が湧く。
「う~ん。シェリルが小さい頃の大規模な干ばつね。神官が各地に派遣された時があったのは覚えてるんだけどね。王都の方はそこまで影響が無かったんだよ。半年近く派遣されて、土砂災害に巻き込まれ行方不明になった方だよね。調べてみるか」
途端に不安になってしまう。神の怒りで、領地は壊滅した。
「シェリル、そんな顔しないで。神官様の故郷に、いつか花を持って行ってやりたいだろ?」
「はい」
また、クシャりと髪を撫でてきた。
不機嫌なカイル様は、神官様の話も、僕がテイマーとしての能力がある事も気にした様子はない。
ただ従者としてそばに居れば、それだけでいいと言われただけだ。
僕の居ない時に、難しいクエストもこなし、S級になった事をアルト様から聞いた。
「護衛には選ばれそうにないな。盾位になれたらいいけど……」
部屋に戻り、母の裁縫道具を引っ張り出した。気を紛らわすのに集中出来るからだ。小さなぬいぐるみを作っていて、ようやく掌サイズの黒兎が出来上がった。
「本当に、クロは僕の行く先に現れるよね。しかも、いっつも襲われそうになってる」
可愛い。本当に可愛い。でもティムしたのは蛇蜥蜴鳥獣とかだし、地上に連れて回る訳には行かない。
「クロなら、一緒にいても……駄目かな?駄目だな。役に立ちたいのに、上手くいかない」
そして僕は、ランク上げの試験は受けない事に決めたのだ。
これ以上、怒らせたくないから。
テイマーの事も、本当は言うつもりは無かったのだ。内緒にしていたかったのに、クロが食べられてしまうかと焦ったのだ。
本当に馬鹿だな。掌の黒兎マスコットを撫でてみた。
「蛇蜥蜴鳥獣を抑えられなかったらどうするんだ? 何かあってからじゃ困るんだ。それしか使う物がない時以外は呼ぶな」
そう言われてしまって、解除を考えた。でもなぜか解除が上手く出来なくて……本当に最悪。
ああ~クロだったら良かったかな。
そんな、ある日。
王都の神殿から、神の神託が降りたと噂が届いてきた。
魔王が目覚め、世界を恐怖に陥れる。勇者とその仲間によって世界を守れと言う様なものだ。
そして勇者の歳は二十歳。金糸の髪に青い瞳の該当する青年は、王都の神殿へ集うように王家からの召集がかかったのだ。
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