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13.謎
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結果としてカイル様に助けられ、ギルド内は盛り上がってしまった。
二階では、喧嘩腰だったアルト様が妙にご機嫌になっている。あの後、何を話したんだろう?
ギルド内は突然現れた、金髪青眼のヒーローに釘付けだった。女性冒険者達からは、黄色い歓声が上がる。
倒れてる二人のランクは分からない。皆厄介事は好まないから、見て見ぬふりする者がほとんどだ。しかも、絡まれたのは平民の僕だ。か弱い女性なら違ったとは思う。 倒せない相手ではなかったけれど、部屋を出てから拘束するつもりだった。
アルト様が、ポーションを持ってきた。
少し小声で二人に話しかける。
「腕の治療……必要? この子、マーティスの育ててる子なんだよねぇ。ポーション、慈悲であげようかな~」
「マ、マーティス……雷神のマーティスか?」
ガタイのいい男は、マーティス様の二つ名を知っていたみたい。
「そうそう。あいつは、理不尽な奴を許さないんだ。報復は早いよ。今飲まずに後に取っておくといい。早く逃げたほうがいいかもね。でもこれ高いから、一人分しかあげない」
彼等の前に片膝を立て目線を合わせると、アルト様は満面の笑顔で対応する。
「ギ、ギルマス……マーティスには、上手く言ってくれ。俺は安全に帰してやろうと思っただけだ!!」
アルト様は更に何か囁く。唇の動きをじっと見る。
〈この子は俺の大切な弟子でもあるんだよ。バーカ〉
そんな風に動いた。
カイル様は、黙ったままだ。
「ほら、さっさと──消えて。なんなら、俺が鍛えてやろうか?」
殺気を孕んだギルマスの言葉に、彼らは真っ青になる。もちろん一本しかないポーションを握り締めて、二人は競うようにギルドを出て行った。
アルト様が立ち上がり、手をパンパンと鳴らす。
「──新入りを紹介する。カイルだ。双剣使いで既にランク持ちだから、無闇に誘ってからかうなよ」
また歓声が上がりテーブルに座るようにと、お姉様方に囲まれている。受付の子も赤面している。
和やかな雰囲気の中、質問攻めだ。飲み物などが運ばれて先程の事で感謝されているみたいだ。こちらをチラリと見たが、そばに行ける雰囲気でも無かった。アルト様がカイル様に手を振った後、僕の手を引いて階段を登る。二階の踊り場でウィンクをして見せた。
「歓迎は素直に受けて。じゃ後で」
バタンとドアが閉まった。
「アルト様。カイル様はギルド会員だったのですか?」
「Aランク……もうすぐSに届きそうだ。他所にある支部で登録してたよ。学園の仲間と、剣や魔法を鍛えるためかなり頻繁にダンジョンに行ってただろうね。だから伯爵家には、帰ってこなかっただろ?」
「勉強が忙しいのかと思っていました」
「──意外と、可愛いとこあるねぇ。ふふふ。不器用だし……からかいがいのある」
「え?」
マーティス様みたいに髪の毛をクシャっとされてしまう。
「いや……優秀な兄に追いつこうと必死なのかもね。シェリルが近くで支えてやったらいいんじゃないか?」
「でも、目立たないように支えるのは、難しいです。さっきも倒すのは簡単でしたが、目立つ訳には行かなくて。アルト様、影のスキルや魔法の指導をこれからもお願いします」
「本当に、伝わってない。応援したくなるねぇ」
「あの?」
「一度、カイルも連れて実際のレベルの確認行こうか……それに、あの黒兎も捕まえたい」
何が伝わってなくて、応援したいのか謎だ。 確かにカイル様は、長兄様を気にしている。いや、気にしすぎかも知れない。
最低でも速攻魔法が使えるようにしなくては役に立ちそうも無い。まだまだ、勉強不足だ。新しい魔法も試そう。ただクロは、大切だから捕まえて欲しくないと何となくその時思ったのだ。
二階では、喧嘩腰だったアルト様が妙にご機嫌になっている。あの後、何を話したんだろう?
ギルド内は突然現れた、金髪青眼のヒーローに釘付けだった。女性冒険者達からは、黄色い歓声が上がる。
倒れてる二人のランクは分からない。皆厄介事は好まないから、見て見ぬふりする者がほとんどだ。しかも、絡まれたのは平民の僕だ。か弱い女性なら違ったとは思う。 倒せない相手ではなかったけれど、部屋を出てから拘束するつもりだった。
アルト様が、ポーションを持ってきた。
少し小声で二人に話しかける。
「腕の治療……必要? この子、マーティスの育ててる子なんだよねぇ。ポーション、慈悲であげようかな~」
「マ、マーティス……雷神のマーティスか?」
ガタイのいい男は、マーティス様の二つ名を知っていたみたい。
「そうそう。あいつは、理不尽な奴を許さないんだ。報復は早いよ。今飲まずに後に取っておくといい。早く逃げたほうがいいかもね。でもこれ高いから、一人分しかあげない」
彼等の前に片膝を立て目線を合わせると、アルト様は満面の笑顔で対応する。
「ギ、ギルマス……マーティスには、上手く言ってくれ。俺は安全に帰してやろうと思っただけだ!!」
アルト様は更に何か囁く。唇の動きをじっと見る。
〈この子は俺の大切な弟子でもあるんだよ。バーカ〉
そんな風に動いた。
カイル様は、黙ったままだ。
「ほら、さっさと──消えて。なんなら、俺が鍛えてやろうか?」
殺気を孕んだギルマスの言葉に、彼らは真っ青になる。もちろん一本しかないポーションを握り締めて、二人は競うようにギルドを出て行った。
アルト様が立ち上がり、手をパンパンと鳴らす。
「──新入りを紹介する。カイルだ。双剣使いで既にランク持ちだから、無闇に誘ってからかうなよ」
また歓声が上がりテーブルに座るようにと、お姉様方に囲まれている。受付の子も赤面している。
和やかな雰囲気の中、質問攻めだ。飲み物などが運ばれて先程の事で感謝されているみたいだ。こちらをチラリと見たが、そばに行ける雰囲気でも無かった。アルト様がカイル様に手を振った後、僕の手を引いて階段を登る。二階の踊り場でウィンクをして見せた。
「歓迎は素直に受けて。じゃ後で」
バタンとドアが閉まった。
「アルト様。カイル様はギルド会員だったのですか?」
「Aランク……もうすぐSに届きそうだ。他所にある支部で登録してたよ。学園の仲間と、剣や魔法を鍛えるためかなり頻繁にダンジョンに行ってただろうね。だから伯爵家には、帰ってこなかっただろ?」
「勉強が忙しいのかと思っていました」
「──意外と、可愛いとこあるねぇ。ふふふ。不器用だし……からかいがいのある」
「え?」
マーティス様みたいに髪の毛をクシャっとされてしまう。
「いや……優秀な兄に追いつこうと必死なのかもね。シェリルが近くで支えてやったらいいんじゃないか?」
「でも、目立たないように支えるのは、難しいです。さっきも倒すのは簡単でしたが、目立つ訳には行かなくて。アルト様、影のスキルや魔法の指導をこれからもお願いします」
「本当に、伝わってない。応援したくなるねぇ」
「あの?」
「一度、カイルも連れて実際のレベルの確認行こうか……それに、あの黒兎も捕まえたい」
何が伝わってなくて、応援したいのか謎だ。 確かにカイル様は、長兄様を気にしている。いや、気にしすぎかも知れない。
最低でも速攻魔法が使えるようにしなくては役に立ちそうも無い。まだまだ、勉強不足だ。新しい魔法も試そう。ただクロは、大切だから捕まえて欲しくないと何となくその時思ったのだ。
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