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74.引きこもり聖女
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部屋に閉じこもっていると言う、聖女様を訪ねる事になった。浄化を終わらせて来たはずの場所は、すでに魔物が溢れてきているそうだ。
彼女は聖女である事は、間違いないのだ。
「聖女様」
ミカエル様が、呼びかける。応答はない。
もう一度ノックをした。
中で唯一聖女様のお世話をしている侍女に王命と称して、ドアを開けさせる。
「ありがとうございます」
侍女と、ミカエル様と一緒に奥へと進んだ。
エドワード殿下を来させなかった理由は、俺を優先してしまうと思ったからだ。
そしてミカエル様と来た理由は、彼なら王国を優先出来る人だからだった。
薄暗い部屋のソファに膝を抱えた聖女様がいた。物音に気がついて、顔をあげた。その顔には、呪いのような模様が浮きでていた。
「な、部屋に入るなんて許して無いでしょう! 明るくしないで!私を見ないで」
クッションを投げて、癇癪を起こし始めた。
「聖女様。何を触りましたか? 彼は、どこにいましたか?」
ピタリと動きが止まった。
「何のこと?」
「ですから彼は、どこにいましたか?」
「知らない。知らないから!出てって」
「聖女様。神使様に本当の事を言って下さい。このままでは、貴方は元の世界に戻る所か、ここで死にますよ」
ミカエル様の言葉に反応した。聖女様の目からこぼれ落ちる涙。
「嘘だ。聖女だよ? ここで、ここでなら……幸せになれるって、誰一人心配なんてしてくれなくて。目立てば親だって、私を見てくれると思ったのに。私の事なんて皆、興味が無くて……なんで?私が幸せになったら駄目なの?注目して欲しいってだめなの?」
ソファから転げ落ちそうな勢いで、俺の服にしがみつく。
「ね、なんで? ここで呪われて死ぬの?」
「彼は、この世界に恨みがあるんです。度々、聖女様に浄化され力が微弱なる。それでも恨みの方が強いから……魔力持ちの力を借りるんです。浄化によって奪われた力を徐々に回復させます」
「私のせい? 私が回復させたの?」
「今も、呪いによって……魔力を吸い続けてます。この呪いを解かせてください」
「そ、そしたら……死なない?」
しがみついてきたその手にそっと触れた。
「俺が、今回は助けます。聖女様、助けたいと願うその気持ちがあれば大丈夫なんです。それに練習すれば、きっとこの先の浄化も、今後元の世界に戻る事も出来ると思います」
「お、お願いします。助けて下さい。私は、ずっと大切にされる貴方が羨ましくて……ごめんなさい。本当にごめんなさい」
目の前の人を助けたい──そう願うだけ。
「その呪いは、俺がもらいますから」
「えっ? どう言う意味……?」
驚く聖女様に、笑顔で大丈夫だと伝える。
しばらくして、聖女様のか首から頬に伸びかけていた模様が全て消えた。多分体の模様も消えただろう。
激痛が走る。きっとあの人にも伝わっただろう。大丈夫、これ以上は魔力は渡さない。ただ彼女が受けた呪いは、強過ぎて消せない。もう少しだけ体が持つように願うだけだ。
「痛くない……私は痛くないけど、その手。嘘でしょう? 引き受けるって、呪いを受け取ったの?だってこれ、めちゃくちゃ痛いのに……嘘だ。なんでこんな事、私」
「君は、聖女になる人だから。彼と会った場所を正確にミカエル様に伝えて……ミカエル様ごめん。後は頼むね。明日にはその場所へ行こう」
フラフラと立ち上がり、魔法で模様を隠す。
「これで、ジェイドにはバレないかな?」
「神使様、今日は神殿で過ごしてください。ここなら、少しでも呪いは抑える事が出来ると思います」
「何で、なんでそんな事──」
「大切な人を守りたい。それだけだよ」
ミカエル様に支えられて、部屋を後にしようとする。
「ごめんなさい。私が……欲張りで、神使様を恨んで……だからこんな事に」
「なら、先程言った神使様の言葉を実行しましょう。貴方には、その責任があるはずです」
ミカエルの言葉に、聖女様は頷づいた。
「やり直しは、いつでも出来るよ。これから頑張ればいいよ」
侍女に支えられ、何度も謝りながら大泣きする聖女様を頼み部屋を後にする。
廊下を進んだ先、今回泊めてもらう部屋の前にジェイドが立っていた。
彼女は聖女である事は、間違いないのだ。
「聖女様」
ミカエル様が、呼びかける。応答はない。
もう一度ノックをした。
中で唯一聖女様のお世話をしている侍女に王命と称して、ドアを開けさせる。
「ありがとうございます」
侍女と、ミカエル様と一緒に奥へと進んだ。
エドワード殿下を来させなかった理由は、俺を優先してしまうと思ったからだ。
そしてミカエル様と来た理由は、彼なら王国を優先出来る人だからだった。
薄暗い部屋のソファに膝を抱えた聖女様がいた。物音に気がついて、顔をあげた。その顔には、呪いのような模様が浮きでていた。
「な、部屋に入るなんて許して無いでしょう! 明るくしないで!私を見ないで」
クッションを投げて、癇癪を起こし始めた。
「聖女様。何を触りましたか? 彼は、どこにいましたか?」
ピタリと動きが止まった。
「何のこと?」
「ですから彼は、どこにいましたか?」
「知らない。知らないから!出てって」
「聖女様。神使様に本当の事を言って下さい。このままでは、貴方は元の世界に戻る所か、ここで死にますよ」
ミカエル様の言葉に反応した。聖女様の目からこぼれ落ちる涙。
「嘘だ。聖女だよ? ここで、ここでなら……幸せになれるって、誰一人心配なんてしてくれなくて。目立てば親だって、私を見てくれると思ったのに。私の事なんて皆、興味が無くて……なんで?私が幸せになったら駄目なの?注目して欲しいってだめなの?」
ソファから転げ落ちそうな勢いで、俺の服にしがみつく。
「ね、なんで? ここで呪われて死ぬの?」
「彼は、この世界に恨みがあるんです。度々、聖女様に浄化され力が微弱なる。それでも恨みの方が強いから……魔力持ちの力を借りるんです。浄化によって奪われた力を徐々に回復させます」
「私のせい? 私が回復させたの?」
「今も、呪いによって……魔力を吸い続けてます。この呪いを解かせてください」
「そ、そしたら……死なない?」
しがみついてきたその手にそっと触れた。
「俺が、今回は助けます。聖女様、助けたいと願うその気持ちがあれば大丈夫なんです。それに練習すれば、きっとこの先の浄化も、今後元の世界に戻る事も出来ると思います」
「お、お願いします。助けて下さい。私は、ずっと大切にされる貴方が羨ましくて……ごめんなさい。本当にごめんなさい」
目の前の人を助けたい──そう願うだけ。
「その呪いは、俺がもらいますから」
「えっ? どう言う意味……?」
驚く聖女様に、笑顔で大丈夫だと伝える。
しばらくして、聖女様のか首から頬に伸びかけていた模様が全て消えた。多分体の模様も消えただろう。
激痛が走る。きっとあの人にも伝わっただろう。大丈夫、これ以上は魔力は渡さない。ただ彼女が受けた呪いは、強過ぎて消せない。もう少しだけ体が持つように願うだけだ。
「痛くない……私は痛くないけど、その手。嘘でしょう? 引き受けるって、呪いを受け取ったの?だってこれ、めちゃくちゃ痛いのに……嘘だ。なんでこんな事、私」
「君は、聖女になる人だから。彼と会った場所を正確にミカエル様に伝えて……ミカエル様ごめん。後は頼むね。明日にはその場所へ行こう」
フラフラと立ち上がり、魔法で模様を隠す。
「これで、ジェイドにはバレないかな?」
「神使様、今日は神殿で過ごしてください。ここなら、少しでも呪いは抑える事が出来ると思います」
「何で、なんでそんな事──」
「大切な人を守りたい。それだけだよ」
ミカエル様に支えられて、部屋を後にしようとする。
「ごめんなさい。私が……欲張りで、神使様を恨んで……だからこんな事に」
「なら、先程言った神使様の言葉を実行しましょう。貴方には、その責任があるはずです」
ミカエルの言葉に、聖女様は頷づいた。
「やり直しは、いつでも出来るよ。これから頑張ればいいよ」
侍女に支えられ、何度も謝りながら大泣きする聖女様を頼み部屋を後にする。
廊下を進んだ先、今回泊めてもらう部屋の前にジェイドが立っていた。
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