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165(閲覧注意)
しおりを挟む処刑の描写があります。
そう言った描写が苦手な方はお気を付け下さい。
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その場に集まった貴族達を見回して、マーベリックがゆるりと口を開く。
「──病床に伏す国王陛下に代わり、私マーベリック・ディオ・サリオが此度の一件を裁く。……事前に報せを出した通り、大罪を犯したケネブ・ルドランの裁きを始めるぞ」
マーベリックの言葉に呼応するように後方の扉が開き、罪人であるケネブが頭から布を被せられた状態で執行人に両脇を囲まれ連行されて来る。
以前連行された時の姿とは違い、随分と薄汚れ、足取りも覚束無い。
その姿を見たクォンツはそっと連行されるケネブから視線を外した。
(あれは……マーベリックは相当やったみたいだな……。情報を得るためになりふり構わずやった、って感じだ……それに……)
クォンツは集まった貴族達に向かって話を続けるマーベリックに視線を向ける。
(マーベリックのあの表情……、ありゃあ欲しかった情報が全て出なかったな……)
参ったな、とクォンツは自分の額に手を当てる。
病床に伏すこの国の国王。
国王が病に倒れてからキナ臭い動きがそこかしこで認められた。
(陛下が倒れてからこの邪教の騒ぎ……仕掛け自体は十年前にされていた筈だが──……表に出てきたこのタイミング……出来すぎてんだろ……)
ふう、と溜息を吐き出したクォンツはマーベリックと執行人に視線を向ける。
後方で目立たぬ場所にいる執行人の顔と頭を隠す覆面からちらりと覗く躑躅色の髪の毛に口元を緩めた。
「──故に、このケネブ・ルドランの罪は重い。本日、ここで極刑に処す」
マーベリックの凛とした声が響き、処刑場が緊張感に包まれる。
ぴん、と張り詰めた空気にクォンツも、マーベリックも、そして目立たぬ場所にいるリドルも周囲を分からぬように見回す。
これは、この王国を貶めようとした者の見せしめのような物だ。
ケネブ・ルドランのような目に合いたくなければこの国から手を引け、と言うような、そんな意味を込めた処刑。
クォンツも、マーベリックも、リドルもこれからこの国が荒れる事を予感し、国を守るために今一度気を引き締めた。
そして、マーベリックの言葉に連行されたケネブの顔から布が外され顔を晒す。
その顔からは血の気が失せ、やつれたような表情をしている。
「断頭台へ進め、ケネブ・ルドラン」
「──その声は、」
ケネブの背後から執行人が声を掛け、背中をどん、と押す。
背を押されながら足を進めるケネブの後ろをその執行人は付いて行きながら小さな声で話し続ける。
「とんだ罪を犯したものだな。家族も失い……、この国での地位も名誉も失い、無様な事だ」
「……白々しい。全部分かっているだろう……お前が私をこの場に突き出した張本人だろう」
「──お前、?」
断頭台の前に辿り着いたケネブの首を鷲掴み、跪かせる。
両膝を付き、頭を枠内に押し付けられケネブは自分にその格好をさせる男を仰ぎ見る。
執行人は口元だけを吊り上げながらケネブだけに聞こえる声で呟いた。
「──お兄様と呼べ、と言っただろう?」
そしてその執行人は「ああ、それに」と言葉を続けた。
「可愛い娘にお前なんてこの世に要らないとか言ったそうだな? 僕からすればケネブ、お前こそこの国に要らないよ」
「──っ! ウィルバー……っ!」
ケネブが叫び切る前に、ダンっ、と断頭台で鈍い音が響いた。
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