【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船

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自宅へと帰宅する馬車の中、ミュラーは気まずさでいっぱいだった。
父親の顔を見れないし、心配して駆けつけてくれたラーラの顔も見れない。
まさか自分がレオンの膝に乗り上げ、抱きついている姿を身内に見られるとは思わなかった。

馬車の中は異様な静けさに包まれており、誰もが言葉を発せれなかった。
そわそわとしながら、ミュラーは場所の窓からまだ自宅へは着かないのか、と何度も景色を確認してしまう。
散々な目にあってしまった舞踏会ではあったが、ミュラーはレオンの事を思い出し、頬を赤く染める。あの、最後のゲストルームでの事は熱に浮かされうろ覚えではあるが、ゲストルームに入る前、王宮の庭園で確かに自分はレオンに求婚された。
そして、自分はレオンの求婚に頷いたのだ。
そこでまるで強く求められるようにレオンに口付けられた。
その後、自分は恐らくあのニック・フレッチャーに媚薬を盛られてしまったのだろう。
それからは自分の体の熱に翻弄されて断片的にしか記憶がない。
レオンにゲストルームへと連れて来て貰い、その場で過ごすように言われた気がする。
そこへ以前アレイシャのお茶会で話しかけられたキャロン・ホフマン嬢とニック・フレッチャーが自分の記憶が確かであればゲストルームに潜んでいた。
あの状況、とても危ない状況だったのではないだろうか。もし、あの場にレオンが居てくれなかったら…、とそこまで考えてミュラーはぶるり、と自分の体を震わせる。

「ミュラーお嬢様…?…っ、お顔が真っ青です…!」

侍女のラーラがミュラーの異変に気付き、視線を向けると真っ青に顔色を悪くしたミュラーがぶるぶると震えていた。
ラーラの悲痛な叫びに反応したのか、ミュラーの父親も心配そうに娘に近寄った。

「大丈夫、大丈夫よ…」
「ミュラー。無理しなくていい、こんな事が起きたんだ…」

今になって恐怖が湧き上がってくる。
本当に、自分はレオンがいなければあの場で傷物にされていただろう。
ソファへと近付いてくるニックに、おぞましいほどの恐怖を感じた。
抱きしめられて吐き気が湧き上がった。

自分はよくレオンを諦め、他の男性を探そうと出来たものだ。
レオン以外の男性になんか最初から興味なんて持てて無かったのに。レオン以外の男性に触れられただけで恐怖で体が竦んでしまうのに。

「やっぱり、私はレオン様しか好きになれなかったのよ…」

震える体を温めるように、と自分の父親とラーラがストールやコートを掛けてくれる。
ミュラーは肩に掛けてもらったコートをぎゅっと握ると、強く目を瞑った。









翌日、王宮で起きた事件についてレオンが詳細を話に来る。
後日改めて王宮の近衛騎士にも説明をしなければいけない。何が起きたのか、ミュラーも事件に巻き込まれた当事者である。辛いだろうが、あの日何が起きたのか把握しておいて欲しいとの事だ。

ミュラーはレオンが訪問する時間が近付くにつれてそわそわと落ち着かない気分になる。
昨日はバタバタとしてしまってレオンとゆっくり話す事が出来なかった。

(あ、あんなはしたない事をしてしまった事をお詫びしないと…)

赤く染まる頬を両手で覆う。
恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない気持ちになるが、レオンに会いたい。
あんな事になってしまったけれど、レオンには聞きたい事が沢山あるのだ。

ミュラーは、自室の窓からアルファスト侯爵家の紋を付けた馬車が門前に到着する姿をそっと見つめた。





「ハドソン伯爵。今日は時間を取ってもらい申し訳ない、ありがとう」
「いや、問題には及ばん。昨日はミュラーを助けて貰った礼も出来ずこちらこそ申し訳なかった、ありがとう。アルファスト侯爵がいなければどうなっていた事か…」

レオンを出迎え、玄関ホールを抜けて客室へと向かう間父親とレオンがそう話しているのをミュラーはレオンのやや後ろを歩きながら聞いていると、ふとレオンがミュラーへと視線を向ける。

「っ、」

ドキリ、と自分の鼓動が跳ねる。
優しく瞳を細めながら、レオンはミュラーの頬を自分の手のひらでするり、と撫でる。

「ミュラー、体調は?もう平気?」
「は、はいっもうすっかり元に戻りました…っ」

自分の頬を優しく撫でるレオンの指先に、甘い熱の籠った瞳に見つめられてミュラーはバクバクと大きく鼓動を打つ心臓にそっと自分の手を持っていくと、レオンの視線から逃げるようにそっと視線を外す。
きっと、自分の顔は真っ赤になっているだろう。
そんな自分をレオンはどんな瞳で見つめ続けているのか確認する勇気はない。

「んんっ、──着いたぞ、アルファスト侯爵、入ってくれ」
「ああ、ありがとう」

ミュラーの父親は軽く咳払いをすると、客室の扉を開き、レオンに入室を促す。
父親がいる目の前で娘を熱の籠った瞳で見つめるのは自重してもらいたいものだ、とミュラーの父親はどこか諦めたように嘆息した。


ミュラーと父親、2人の目の前にレオンが座るとメイドがお茶を用意してそれぞれ3人の前に置き、一礼すると部屋から退出していく。
予めハドソン伯爵が退出するように申し伝えていたのだろう。

(まあ、重い話が続くから人払いをするのは当然だな)

レオンは出された紅茶のカップを持ち上げると、口を付ける。

「さて…何から話せばいいのか…長くなりそうだが…ミュラー、辛くなったら遠慮せず言ってくれ」
「…っ、分かりました」

ミュラーが力強く頷くその姿を見て、レオンも一つ頷き返すと唇を開いた。

「今回の媚薬を盛られた件だが…あれは違法な製法で作成された薬だった。通常より効き目が強く、効果が切れにくい。それを作り、ニック・フレッチャーに流したのがキャロン・ホフマンだ」
「…何故、そんな事を…」
「それは…先日、成人の舞踏会前にミュラーが参加した夜会があっただろう?そこで、ミュラーが身内以外とワルツを踊った事によって婚約者探しを行っていると言うのが広く知れ渡った」

ここまではミュラーもわかるよね?とレオンが聞いてくる。
ミュラーは無言で頷いた。

「今までは俺とミュラーが、その…結婚するだろう、というのが周囲の認識だったし…、俺もそうやって動いてきた」
「…えっ!?」

初めてレオンから語られるその言葉にミュラーは驚きに大きく目を見開くと、咄嗟に自分の父親へと視線を向ける。
視線を向けられた父親は、その通りだと言うようにミュラーを見ながら大きく頷いた。

「ミュラーが驚くのも無理はないよ。ミュラーには悟られないようにしてきたから…」

──知らなかった。
自分の知らない所で、レオンと自分がそう認識されていたなんて。しかも、それは父親も了承していたようでミュラーは話が始まったばかりだと言うのに何が起きているのかまったく分からずただただぽかん、とレオンの話す言葉達をただただ呆然と聞く事しか出来なかった。

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