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ゲストルームの扉の向こうで 4終
しおりを挟むアウディとホーエンスが部屋を出た後、レオンはミュラーに被せていた自分のコートをそっと外すと蹴破られた扉から部屋の中が見えない場所へと移動する為、ミュラーを抱き上げる。
「ミュラー、もうこの部屋には俺達しかいないから…声を出しても大丈夫だよ。俺しか聞いていない…」
「ぅ、や、です…っ」
レオンの言葉に、ミュラーはふるふると首を横に振ると拒否するようにレオンに答える。
小刻みに震えるミュラーの体をレオンは強く抱きしめると続けて言葉をかけた。
「…もし、俺がいる事で恥ずかしくて声を上げられないのであれば俺もこの部屋から出ていくから。無理してその熱を体内に宿し続ける方が辛いだろう」
「ゃ、レオン様…は居て…っ」
「…っ、俺も媚薬を盛られているんだ…解毒薬を飲んだとは言え、ミュラーに無体を働くかもしれないんだ、それでもいいの?」
「ん、んっ、」
ミュラーは懸命にレオンの耳元で声が上がってしまうのを抑えるようにこくこくと頷く。
レオンにだったら何をされてもいい。
あんな男に触れられるよりレオンにこうやって強く抱きしめられているだけで幸せな気持ちに満たされる。
ミュラーは熱でぼうっとする頭でレオンに言われた言葉にただ本能に従うように頷く。
普段であれば絶対に頷いたりしてはいけない場面であるが、思考が麻痺している今のミュラーには今まともな返答が出来ない。
媚薬に思考を麻痺させられて、衝動のまま本能のまま体を許すなど本来であればあってはいけない。普段の自分であれば絶対にこんな答えはしないのに。
けれど、もうミュラーは限界なのだ。
薬を飲まされてから大分時間が経っているにも関わらず解毒薬の効果が未だ現れていない。
体内を駆け巡るかのように熱が膨れ上がり、ぜいぜいと荒く吐息を零す。早く熱を解放したい。早く楽になりたい。
ふわ、と優しくスプリングの効いた肌触りのいいシーツの感触からゲストルームのベッドへと体を下ろされた事が分かる。
「…っ、ミュラー、一先ず落ち着こう。大きく息を吸って、吐いてを繰り返すんだ」
「ん、…っ」
焦ったように声音に焦燥の色を乗せてレオンがそう話しかけてくる。
そっと自分の体から離れて行くレオンの気配にミュラーは気付くと、離れないで、と懇願するようにレオンに強く抱き着いた。
ぎしり、とレオンの体が固まる。
ミュラーは固まってしまったレオンに衝動のまま抱き着いて自分の頬を擦り付ける。
鼻腔をくすぐるレオンの香りにほっと安心の息をつくと、ミュラーは一層抱きつく自分の腕に力を込めた。
ぐいぐいと強く抱きつくが、先程のようにレオンから抱き締め返してくれる腕の感触がいつまで経っても訪れない。
自分の体を抱きしめてくれるレオンの感触が欲しくて、ミュラーは熱に浮かされ潤んだ瞳でレオンを見上げた。
「レオン、様…レオン様も、座って下さい…」
「え?え、ああ、うん」
ミュラーからのお願いに、レオンは唖然とした表情のままミュラーに手を引かれベッドへ隣り合わせに腰掛けた。
その姿にミュラーは満足すると、再度レオンへと腕を伸ばして首筋に自分の両腕を絡ませるとぎゅう、っと抱き着いた。
「ひ…っ」
細く悲鳴のような情けない声がレオンから上がった気がするが、ミュラーは構わずにそのままレオンの膝上に乗り上げるとしっかりと抱きつく。
反射的にだろうか、レオンの両腕がするりとミュラーの背中に回り、すっぽりと抱きしめ返してくれる。
「は、ぁっ、」
ミュラーは安心感からレオンの耳元で甘い吐息を零すとすりすりとレオンの首筋に自分の頬を擦り付ける。
自然と自分の唇から吐息が零れ落ちてしまい、その度にレオンがびくり、と体を震わせている。
何かに耐えるように、レオンは唇を噛み締めていて噛み締めすぎた唇の端から薄らと血が滲んでしまっている。
次第にレオンの体もブルブルと震え始めていて、ミュラーは熱に浮かされた頭ではあるが、レオンの体調を心配した。
レオンもきっと自分のように辛い思いをしているのだ。それなのに、しっかりと自分の意識を保ちミュラーのように熱に浮かされていない。
これが大人の彼と子供の自分の差なのだろうか、とミュラーはしゅんと一瞬落ち込むが、少しずつ冷静に思考出来る時間が出来てきた事に、ミュラーはほっと安心した。
それでも、まだ体の熱は甘く疼くし、レオンにどうしようもなく触って欲しい。
その気持ちのままレオンの耳元で小さく喘ぎ声を上げながら、自分の体を押し付けてしまう。
(ああ、何てはしたない事をしているのかしら私…)
薄らと思考回路が戻ってきて、今の自分の状況にとてつもなく恥ずかしくなる。
けれど、力強く抱きしめてくれるレオンの腕の中に収まっているのが気持ちよくてもう少し、もう少しだけ、と目を閉じた。
きっと、今の状況をアウディやホーエンスが見たらレオンはとても同情されただろうし、ミュラーの父親に見られたらレオンは殴り飛ばされているかもしれない。
そんな少しだけ色の孕む2人の接触はレオンには拷問に等しい時間ではあったがもう暫くだけ続いた。
そんな2人の雰囲気を壊したのは、ミュラーの父親が部屋に乗り込んで来た事で呆気なく終わった。
アウディに言われて暫く部屋の外で待っていたが、一向に姿を表さないレオンとミュラーに痺れを切らしてアウディとホーエンスを振り切り、部屋に乗り込んできたのだ。
そこで、父親とアウディ、ホーエンスの目に飛び込んできたのはレオンの膝に乗りながらミュラーがぎゅうぎゅうとレオンに抱きついている姿で、レオン本人は唇を噛み締めて血を滲ませながら耐えるようにミュラーを強く抱きしめている姿であり、レオンの瞳は色々な物を我慢しているのだろう涙の膜が張っていて今にも零れ落ちそうな程だった。
次第に意識がハッキリとしてきたミュラーが顔を真っ赤にしてレオンの膝上から飛び退くと、レオンはそのままベットに仰向けに倒れてしまった。
混乱するミュラーに、レオンは優しく笑いかけると改めて今回の事態の説明も合わせて話すことが沢山ある為、明日ハドソン家へ伺うよ、と言ってくれたのであった。
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