あなたの事はもういりませんからどうぞお好きになさって?

高瀬船

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第九十四話

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ノルトが窓へと近寄り、室内にネウスを入れようと窓を開ける。
そうすると、ネウスはするりとその体を室内へと滑り込ませて床へと降り立った。
ネウスが室内に入った事を確認すると、ノルトはしっかりと窓を閉め直して呆れたようにネウスに唇を開く。

「何で外に居たんだ……城内に潜んでいるとばかり思っていたが……」
「いや、一度外から魔力の歪みでもねぇかな、と思って眺めてたんだよ。中に戻ってからここに来るのは面倒だし、窓から来る方が楽だったからな」

ネウスは自分の体に付いた汚れをぱたぱたと手で叩いて落とすと、ちらりとノルトに意味ありげな視線を向ける。
そして、ミリアベルには聞こえないくらいの声量で、ノルトをからかうように言葉を零す。

「──邪魔して悪かった、と本心からそう思ってるぜ?」
「──っ、ネウス……」

ネウスははは、と声を出して笑うとノルトの肩を何度か自分の手で叩いてからミリアベルの座るソファへと近付いて行く。
何の躊躇いもなく、ミリアベルの隣に腰を下ろしたネウスに、ノルトは眉を顰めると仕方ないと溜息を吐いて自分はミリアベルの真正面のソファへと腰を下ろす。

座ろうと思えばネウスが座った反対側にミリアベルを挟むように座る事も出来るが、そうしてしまうとネウスと無駄な争いをして時間を消費してしまいそうで、ノルトはネウスを牽制するように真正面からネウスをひたり、と視界に捉えながら唇を開く。

「──それで、ネウスは全て終わったのか?」

ノルトのその言葉に、ネウスはにんまりと嫌な笑みを浮かべると「ああ」と肯定の言葉を返す。

「証拠になる臨時団員達の身柄も持ってる……いつでも出す事は可能だな。この後の国王陛下と教会の奴らの出方で乱入してやろうと思ってる」

ネウスの言葉に、ミリアベルは二人の会話に割って入るように唇を開いた。

「あの……っ、その証拠だけだと、大元の人間が誰か、と言うのが分からないと思うのです。なので、先程ノルト様にも相談させて頂いたのですが、私が王城に残っているその間にノルト様に証拠探しをして頂こうと思っているのです」
「──ミリアベル嬢っ」

慌てたようにノルトがミリアベルに向かって唇を開くが、ネウスはミリアベルの考えに素直に頷く。

「ああ、それもいいんじゃねぇか?」

ネウスの言葉にミリアベルはぱっと明るい表情を浮かべ、反対にノルトはギョッとしたようにネウスに視線を向ける。

「だって、ミリアベルが言う事も一理あるだろ?確かに臨時団員達は誰かに破壊されているのは分かるが、その"誰か"が分からないままだろう?ミリアベルがあいつらの注意を引き付けてくれている間に言い逃れ出来ねぇような証拠を見つければ万事解決じゃねぇか」
「──簡単に言うがっ、その間に教会の人間がミリアベル嬢を洗脳しようとしたらどうする!?近くに居なければ守れないんだぞ?」

ノルトの言葉に今度は逆にネウスが驚いたような表情を浮かべてその後呆れたようにノルトに視線を向ける。

「──おいおい……俺でさえミリアベルを操る事が出来なかったのにたかが人間如きがミリアベルに害を為せる訳ねぇだろ?過保護にし過ぎると雁字搦めになって沈んじまうぞ」
「……っ、それは分かっている、が……まて。ネウスも操ろうとしてたのか……?」

どう言う事だ?と表情を険しくしたノルトに、ネウスは部屋の扉の方向に視線を向けるとソファから腰を上げる。

「──ああ、時間切れだ。またな」
「──ネウスっ」

ネウスはその場でひょいと片手を上げると、転移の魔法を使ってその場から姿を消してしまった。
ネウスが姿を消した瞬間、扉をノックする音が聞こえて声を掛けられる。




「お待たせ致しました。謁見の間にご案内致します」

移動しなければいけなくなり、ノルトはネウスの先程の言葉にこの謁見が終わったらしっかりと問いたださねばと心に決めると、外の者に返事をする。

ノルトもソファから腰を上げると、ミリアベルに手を差し出して「行こう」と声を掛けた。
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