気付くのが遅すぎた

高瀬船

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どくり、どくりと真っ暗な視界の中で自分の鼓動の音だけが嫌に耳についた。
フィミリアは、恐怖感から乾ききった自分の唇をひと舐めし、唇を潤す。

(気を強く持たないと、恐怖感から泣き喚いてしまいそうだわ…)

部屋の外からの足音、複数の男の声が近付いてきて、そして自分が押し込まれたこの部屋の前でピタリと止まった。


がちゃり、と音を立てて複数の男達が会話をしながら入室する。

「もう騒ぎになり出してる、ここはすぐには見つかる場所ではないが、さっさと済ませてずらかるぞ」
「あー、折角の機会なのに、あの旦那もせっかちだよなぁ」
「まあ、俺たちはおこぼれで女を抱けるんだ我慢しようや」
「…さっさと済ませろよ」

男達の慈悲のない会話がフィミリアの耳に届く。
一番最後に言葉を発したのは、先程フィミリアを攫ってきた人物だろう。
低く、冷たい響のするその声音にびくり、と体が跳ねる。

「よっしゃ、さっさとやるか」
「今日は四人だな、誰やる?」
「それにしても旦那も好き者だよなぁ、自分の国に連れ帰って娶った後、他の男達に金で売るんだろう?」
「違いねぇや」

ははは、と談笑しながら男達が近付いてくる。
フィミリアの他にも三人令嬢が攫われて来ているのだとその会話から分かった。

(国に連れ帰った後、娶る─?)

明確な情報が分かりそうで、分からない。
きっと男達は重要な事に関しては口を割らないだろう。
男達の会話から察するに、この後攫われた自分達は犯され、そして国に連れ去られ知らない男に娶られる。娶られた後も、他の男に金で売られ体を暴かれる事が続くようだ。

その事実に、フィミリアはくらり、と目眩を覚えた。

「それにしても、いつもいつもどうやってターゲットを決めてるのか…旦那はすげえよなぁ」
「ああ、犯しても攫ってもそこまで騒ぎにならない女を選んでるからな」
「おら、お目見えだ!」

「きゃあ!」
「いやっ、離して!」
「いやあっ!」

自分の耳に、女性らしい甲高い声が響く。
次いで自分の目元を覆っていた目隠しが、乱暴な手つきで取り払われる。

「ーっ!!」

突然明るくなる視界に、フィミリアは瞳を窄めた。
咥内に詰められた布切れも全て取り払われる。

視界に飛び込んできた情報に、フィミリアは自分の顔を真っ青に変える。



女性に馬乗りになり、纏っていたドレスを力任せに破り肌を暴く男。

女性の背後から抱きつき、羽交い締めにしながら胸元のドレスを引き下げ乱暴な手つきでその胸元に手を這わす男。

女性の髪の毛を掴み、地面に引き倒しながらドレスの裾から腕を差し入れている男。

周囲から女性の悲鳴と、嗚咽が痛いほど耳を付く。
これから、自分もあのようにされてしまうのだろうか。

フィミリアはぶるぶると震えながら、自分の拘束を解いた目の前の男に視線を移す。


「大声を出そうが、この部屋から逃げようが無駄な事だ。大人しく犯されてれば殺しはしないぜ?」
「ーっ!」

その冷たい声音に、この目の前の男が自分を攫った人物なのだと理解する。
その男の瞳にはなんの感情も浮かんでいなく、話が通じるような相手でも無さそうだった。

「素直に感じてりゃあ気持ち良くしてやるよ」

にたり、と口端に笑みを浮かべたその男にぞわっと背筋に悪寒が走る。
固まる思考に鞭打ち、フィミリアは唇を開いた。

「…っ何故、何故私たちを攫ったのですか…」
「…さあな、それは俺たちの雇い主である旦那が決めた事だ」

フィミリアのその問いかけに、男は面白そうに片眉を釣り上げると、愉悦が滲んだ声音で言葉を放つ。
─会話は出来そうだ
フィミリアは、その光明に縋り付くように尚も唇を開く。

「ならば、あなた達の雇い主は何故私達を酷い目に合わせる為だけに国に連れ帰るのですか…」
「しっかり俺たちの話を聞いてた、って訳か。見た目に反して冷静でしっかりしたお嬢さんだ」

男は面白そうに話しを続けながら、徐にフィミリアの縛られた両手首を片手で掴み、頭上へ持ってくるとその場に押さえつける。

「お喋りも楽しいが、俺はもっと楽しい事がしてぇんでな」
「──っきゃあ!」

─びりりっ
自分の胸元から、布が避ける悲痛な音が響く。
視線を移せば、男の手が力任せにドレスの胸元から腰辺りまでを一息に引きちぎったようで、コルセットに包まれた自分の体が男の眼前に晒される。

「お話もいいが、やっぱ怯えた表情が一番興奮する」
「ぅぐっ」

男は片手をまろびでたフィミリアの真っ白で柔らかそうな胸へと手を伸ばしコルセットの胸元の中に手を差し入れると力任せに掴み込んだ。

「うぅっ」

男への恐怖と嫌悪感、力任せの胸への痛みを伴う接触。
自分の視界にぐにゃり、と胸の形が変わるほど強く揉みこまれているその情景が映り何とか耐えていたフィミリアのその輝くような美しい瞳から一筋涙が零れ落ちる。
男は楽しそうに、そのフィミリアの瞳から零れ落ちる涙を見つめながら胸への刺激を続けている。


周囲の女性達は、他の男達の行動が早かったからかドレスを全て取り払われている女性もいる。

視界の端に、大きく足を開かれて絶叫している女性の姿が映る。

体を晒け出され、男の腰が激しく女性の足の間を行き来している女性もいる。

「この絶望に堕ちる瞬間が堪らねぇ」

男は何処か恍惚とした表情と声音で、フィミリアのドレスの裾を大きく捲り上げるとドロワーズの上から下半身を強い力で鷲掴んだ。

「ーっきゃああっ!」

自分の下半身で激しく蠢く男のその掌に吐き気がせり上がってくる。
ぐいぐいと、誰も触れた事の無いその場所を掌全体で覆われ揉み込まれるその感触に、嗚咽混じりの掠れた声がフィミリアの唇から零れ落ちる。
次いで自分の膝辺りまでドロワーズを勢い良く引き下げられ、何も見に纏わない自分の下半身が男の眼前に晒された。

厭らしくその場所を這い回るその男の指に、フィミリアはただただ叫ぶ事しか出来ない。
拘束された自分の両手を滅茶苦茶に動かすが、目の前の男は愉快そうに力でねじ伏せ、徐に自分のトラウザーズを寛げた。

いよいよ自分ももう駄目かもしれない。

泣き濡れた瞳で、男を見つめる。
やはり、その男は抵抗するフィミリアを楽しそうに眺めながら、フィミリアの両足の間に無理矢理自分の体を捻じ入れると、両足を大きく開いて腰を進めて来た。

──ぎち、
と自分のそこに男の昂りがめり込んだ、瞬間。

















自分達のいる部屋の外から荒々しく複数の足音が響いた。
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