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夜会当日、慰労の夜会は王家主催の為宮殿にて開催される。
普段は滅多に足を踏み入れる事のない煌びやかな宮殿で開催される舞踏会メインの夜会に、国内の貴族は勿論、聖女を一目見ようと自国のアレンドール国外からも力を持った貴族や商人が参列していた。
宮殿の馬車停めで、ハーツウィル家の馬車からフィミリアは父、フレディから差し出された手のひらに自分の手のひらを乗せて馬車から降り立つ。
サミエルと話したあの後。
自宅へと帰宅したフィミリアはフレディに書斎に呼ばれた。
そこで、サミエルのバーデンウィット家と正式に婚約を解消する事を了承してもらった事を静かに話される。
お互いの家の領主同士、話し合いサミエルの父メイソンからは謝罪の言葉を貰った事も合わせて伝えられる。
これでもう、本当にサミエルとは何も関係が無くなる。
自ら申し出た事とは言え、本当にこれでサミエルとの関係が無くなってしまう事に悲しさを感じるが、サミエルと今後愛を育んで行くことは無理だ。
未だ残るサミエルへの恋焦がれる気持ちは見ないふりをして、フィミリアはしっかりと前を見据え、力強く地面を踏み締めた。
「フィミリア、今日はラティシアが不在だからいつも以上に周囲の人間には気をつけるんだ。聖女様のエスコートを彼がした段階で、君達の婚約が解消された、と周囲は分かるだろう。悪意のある人間も近付いてくるかもしれない。」
「はい、お父様。お父様が不在の際は宮殿内で人が多い場所に居るように致します」
母は体調を崩し、邸で寝込んでいる。
愛娘であるフィミリアの婚約解消が余程ショックだったのだろう、家族で話したあの日から元気がなくなり、体力が落ちていたのだろう、風邪を引いてしまい、現在は寝込んでいる。
少しずつ回復しているが、無理に今日の夜会に参加して悪化してはいけない、とフレディに休むよう請われ、邸で留守番をしている。
なので、今日は現子爵家の当主、フレディと子爵家の一人娘フィミリア、侍女のミアを伴い夜会へと赴いた。
(最後にサミエル様のお顔を拝見出来ればもう十分だわ)
フレディにエスコートされながら宮殿へと足を踏み入れて行く。
家同士、付き合いがある貴族の人間からはフィミリアのエスコート役が父である事に驚きの視線を向けられるが、フィミリアは俯く事なく微笑みを浮かべながら背筋を伸ばししっかりと前を見据えて沢山の人達の輪の中へと足を進めた。
父親の顔見知りや、フィミリアは友人達と和やかに挨拶を交わしていると、王家の入場がアナウンスされる。
そのアナウンスに皆が一斉に頭を垂れる。
男性は左腕を胸の前に添わせ、頭を下げ、女性は膝を軽く降り頭を下げる。
数秒後、周囲がざわめきに包まれる。
「聖女様の隣にいるのは近衛騎士団の第二師団団長ではないか?」
「何故、聖女様のエスコートをなさっているの?」
と周りがざわめく。
王族の入場に合わせて聖女も夜会へと姿を表した事に決して王族と同列ではないが、聖女は王族の次に尊い人物だと言わしめるような入場の順番であった。
国外から参列している貴族や、商人にも周知したいというアレンドール国の表明である。
それよりも、周囲は今
聖女の横でエスコート役を務める近衛騎士団の若き団長に、戸惑いを隠しきれていない。
サミエルのエスコートに嬉しそうに表情を綻ばせ、聖女はその艶やかな金の髪を靡かせながらしっかりとした足取りでフロアへと足を進めた。
普段は滅多に足を踏み入れる事のない煌びやかな宮殿で開催される舞踏会メインの夜会に、国内の貴族は勿論、聖女を一目見ようと自国のアレンドール国外からも力を持った貴族や商人が参列していた。
宮殿の馬車停めで、ハーツウィル家の馬車からフィミリアは父、フレディから差し出された手のひらに自分の手のひらを乗せて馬車から降り立つ。
サミエルと話したあの後。
自宅へと帰宅したフィミリアはフレディに書斎に呼ばれた。
そこで、サミエルのバーデンウィット家と正式に婚約を解消する事を了承してもらった事を静かに話される。
お互いの家の領主同士、話し合いサミエルの父メイソンからは謝罪の言葉を貰った事も合わせて伝えられる。
これでもう、本当にサミエルとは何も関係が無くなる。
自ら申し出た事とは言え、本当にこれでサミエルとの関係が無くなってしまう事に悲しさを感じるが、サミエルと今後愛を育んで行くことは無理だ。
未だ残るサミエルへの恋焦がれる気持ちは見ないふりをして、フィミリアはしっかりと前を見据え、力強く地面を踏み締めた。
「フィミリア、今日はラティシアが不在だからいつも以上に周囲の人間には気をつけるんだ。聖女様のエスコートを彼がした段階で、君達の婚約が解消された、と周囲は分かるだろう。悪意のある人間も近付いてくるかもしれない。」
「はい、お父様。お父様が不在の際は宮殿内で人が多い場所に居るように致します」
母は体調を崩し、邸で寝込んでいる。
愛娘であるフィミリアの婚約解消が余程ショックだったのだろう、家族で話したあの日から元気がなくなり、体力が落ちていたのだろう、風邪を引いてしまい、現在は寝込んでいる。
少しずつ回復しているが、無理に今日の夜会に参加して悪化してはいけない、とフレディに休むよう請われ、邸で留守番をしている。
なので、今日は現子爵家の当主、フレディと子爵家の一人娘フィミリア、侍女のミアを伴い夜会へと赴いた。
(最後にサミエル様のお顔を拝見出来ればもう十分だわ)
フレディにエスコートされながら宮殿へと足を踏み入れて行く。
家同士、付き合いがある貴族の人間からはフィミリアのエスコート役が父である事に驚きの視線を向けられるが、フィミリアは俯く事なく微笑みを浮かべながら背筋を伸ばししっかりと前を見据えて沢山の人達の輪の中へと足を進めた。
父親の顔見知りや、フィミリアは友人達と和やかに挨拶を交わしていると、王家の入場がアナウンスされる。
そのアナウンスに皆が一斉に頭を垂れる。
男性は左腕を胸の前に添わせ、頭を下げ、女性は膝を軽く降り頭を下げる。
数秒後、周囲がざわめきに包まれる。
「聖女様の隣にいるのは近衛騎士団の第二師団団長ではないか?」
「何故、聖女様のエスコートをなさっているの?」
と周りがざわめく。
王族の入場に合わせて聖女も夜会へと姿を表した事に決して王族と同列ではないが、聖女は王族の次に尊い人物だと言わしめるような入場の順番であった。
国外から参列している貴族や、商人にも周知したいというアレンドール国の表明である。
それよりも、周囲は今
聖女の横でエスコート役を務める近衛騎士団の若き団長に、戸惑いを隠しきれていない。
サミエルのエスコートに嬉しそうに表情を綻ばせ、聖女はその艶やかな金の髪を靡かせながらしっかりとした足取りでフロアへと足を進めた。
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