男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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8章 頼り切った者たち

8-13 説明は不足するもの

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 ソイ王国の前国王もあの温泉に連れて行ってから、宿屋に戻った。
 前国王が国内初の温泉にどうしても入りたいと駄々を捏ね繰り回したので、仕方なしに。
 帰りが遅くなった。

「おかえりなさいませ、オルト様」

「先に休んでいて良かったのに」

 ルイジィが立ってお出迎え。
 今日は小さい街に辿り着いた。
 宿屋ではルイジィと俺の二人部屋になった。

 グジが強く要求した。
 他の奴らと同じ部屋にするのは危険すぎると。
 彼らもお年頃。性欲が強い者たちも多いようだ。
 相手がルイジィなら皆が納得すると。

 ルイジィは主人と同部屋というのは、、、と最初は渋っていたが、彼らの面子を見回してから諦めた。
 そして、俺を一人部屋にするという提案はルイジィからはされなかった。一人にするといつのまにか別行動されるという懸念を察知したようだ。

 手袋を外し、上着を脱ぐ。
 さり気に俺の上着を受け取るのが、さすがルイジィ。
 アルティ皇太子のそばで世話していたのがよくわかる行為だ。

「災害級の魔物を売却したのですから、もう少し良い宿にお泊りになられれば良かったのではないですか?」

「と言っても、この街には三つしか宿屋がないし、真ん中レベルで良いじゃないか」

 ルイジィの場合、駆け出し冒険者や下っ端商人用の一番下の宿屋にすると一人部屋でも文句言いそうと思ったので、とりあえずグジと相談して真ん中の宿にした。
 一番上の宿屋は最高級レベルの宿である、貴族用の。
 ランクの差がかけ離れている。
 グジたちは即座に首を振った。俺も嫌だね、お値段が全然お優しくない。
 小さい街でも貴族用の宿があるのは、ここが街道に近いせいである。貴族もよく行き来するから、ということらしい。

 ゆっくり休むには宿屋の方が良いのだが、野営の方が格差はわかりにくい。
 ルイジィは帝国の皇子と一緒に行動していただけあって、最上級の暮らしを知っている人間である。困ったものだ。
 ウィト王国の貴族学校にいるなら別に良かったんだけどねえ。
 どんな状況にも耐えうる皇帝の影だから、特に強くは言わないけど、目は語る。

 俺はどうしても節約志向に走る。
 コレは王都に行くのだから、何か対策を考えた方が良いかな?
 王都の宿屋は千差万別。
 ソイファ王太子殿下に相談してみようかな。
 王都に滞在する間、夢幻回廊の空間を一つ貸してくれませんか、と。
 あそこが王都では一番快適な宿泊施設だから。

 王太子も前国王も温泉に連れて行ったし、何なら無料奉仕で人が入れる温泉作ったんだから、ソイ王国に多分に貢献しただろ。そんなに連泊する予定もないし、最高級なお宿代ぐらいにはなっただろ。

「、、、オルト様、このソイ王国の王都にもイー商会の支店がありますので」

「ルイジィの指示通りに災害級の魔物持っていったから知っているよ」

 ルイジィは帝国が買い取ると言っていたのだが、横槍が入った。

 我が愛しの婚約者イーティが、冒険者ギルドの買取価格なんて下も下の、買取先を他に知らない冒険者の足元を見ている団体に多少色をつけたくらいで本当に良いと思っているの?と圧力をかけたらしい。イーティとルイジィとの秘密の話し合いで買取先がイー商会になった。
 俺は冒険者ギルドより高く買い取ってもらえるなら、どこでもいいけど。

 量が量なので収納しておくのも魔力がかかるため、王都のイー商会にさっさと納品に行った。
 イー商会も貸し倉庫を手配して待っていてくれたくらいだ。手持ちの倉庫では足りなかったらしい。

 もちろん俺たちのお肉一塊はすでに確保している。

「支店の者に宿を紹介してもらいましょう。オルト様にこのような宿はふさわしくありません」

 ソイ王国の高級なお宿は紹介者がいなければ、一見さんお断りらしい。
 国外からの客はどうなの?という疑問もわくが、この国の貴族や商会が紹介もしない客はどんなに国では国王レベルだったとしても相手にしません、という態度を貫くらしい。
 他国からの客でも、お忍びをお忍びにさせないのである。
 宿にはしっかり身分を示せ、と言っているのだ。

 中堅以下の宿屋でも身分証が必要なところもあるが、前金制で何の確認もなく泊まらせてくれるところも多い。
 宿屋のランクに応じて、この辺りが変わるのは当然のことだ。

 つまり、紹介が必要な宿というのはそれなりの宿だ。
 だが、俺はそこまでの宿に泊まりたくない。
 宿に応じて、お金ももちろん大金が飛んでいくから。
 しかも、十五人もいるからねえ。
 貴族だと従者やら護衛やらで軽くそれくらいの一団になるみたいだが。

 心のなかでため息を吐く。

「ルイジィ、宿の件は保留。王都に着くまでに考える」

 とは言っても、何事もなければ明後日には着いてしまうだろうけど。
 寝る前にちょっとソイファ王太子殿下のところに行って来ようかなあ。
 もう寝る前なんだけど。。。
 あの王太子と前国王のせいで遅くなってしまった。
 ルイジィの目もあるし、明日にしようか。もう勝手に皆で夢幻回廊にお邪魔しようか。




 朝食の場。
 この宿はほどほどの宿屋なので、朝食は好きな物を好きなだけ食べられるバイキング形式だ。
 とは言っても、パンの種類が豊富って感じで、そこまで選べるオカズの種類もない。

「兄ちゃんはパンも大好きなのか?」

「柔らかいパンは好きだよ」

 焼きたてパンって美味しいよね。
 硬いカチコチのパンを食べていた頃とは雲泥の差だ。食べられるだけマシだと思っていたからね。

 グジも俺の量には及ばなくとも皿にパンを並べているが。

「宿も食事や寝床を作らなくても良いから楽なんだが、兄ちゃんには朝から肉を食わせてやりたい気分になる」

「肉も好きだけど、美味しい物は何でも好きだよ。お腹いっぱいに食べられるのが幸せ」

「兄ちゃん、コレも食え」

「いや、自分で取ってきた物は自分で食え。ところで、王都の宿をどうするか?」

「紹介状とかはないぞ。俺たちは住んでいた街の領主にも面識ないし」

 必要な紹介状というのは領主という貴族クラスが必要な宿屋か。

「王都では上級冒険者がいい宿に泊まることもある。高級な宿でもそこまで肩肘はらなくても済む宿も多いらしい」

 グジの慌ててのフォロー。
 そういえば、王族や貴族お抱えの冒険者も多いという。

「やっぱりソイファ王太子殿下に頼もうかな」

 宿屋を探すのも面倒だ。

「オルト様、、、ソイファ王太子殿下とお知り合いなのですか?」

 後ろを振り返るとにっこりと微笑んだルイジィが。
 俺がソイファ王太子殿下と知り合いだと何か不都合でもあるのか?

「聞き方を変えましょう。婚約者のイーティ様の手ではなく、ソイファ王太子殿下の手を取るということですか?」

 グジが盛大に牛乳を吹き出したので、さっと避ける。
 多少の犠牲は目を瞑ろう。俺の後ろに座っていたのは、、、まあ、いいか、グジが謝るだろう。

「ソイ王国王都の宿ぐらいのことでイーティの手を煩わせることもない」

 これが帝国とか、イーティが詳しく知る国とかなら頼るけど。
 今回はイーティの手を直接煩わせるわけではないが、イー商会だっていい迷惑だ。

「他の男の手を取ったなんて知ったら、怒りますよ」

「宿の手配ぐらいで大袈裟な」

 と言ったら、ルイジィがものすごく暗い顔になった。

「怒られるのは私なんです」

「、、、は?」

 意味がわからないぞ。
 それとも、帝国ではそういうものなのか?
 婚約者の宿も手配できない軟弱者とか思われるのかな??

 いや、おかしいだろう。
 俺がいるのは帝国じゃなくて、ソイ王国だぞ。

 誰か俺にわかるように説明してくれ。

「いや、俺にもわからん」

 グジがおしぼりで被害者を拭いていた。
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