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1.夢に見る、会いたくなかった男
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「近藤、今はイ〇ンに入ってる美容室の店長してるんだけどさ」
「美容師なの?」
「そ! 今じゃ、ツーブロックを作る方」と、真奈美。
「本人は?」
「ロン毛。パーマかけて結んでんの」
「うそぉ!」
「ホント、ホント!」
四人の笑い声が響く中、ファーストドリンクが運ばれてきた。
「ひとまず、乾杯しよ!」と、真奈美がジョッキを持ち上げた。
「バツイチにかんぱ~い!」
「そんなのに乾杯とかしないから!」と言って、香苗がさっさとジョッキに口をつける。
私と簑島は笑いながら互いのジョッキを軽く合わせ、一口飲む。
そして、簑島に「で?」と話の続きを催促した。
「で、一年前のクラス会に飛び入り参加してたんだけどさ? 泥沼離婚調停中だって言ってたんだよ」
「え」
思わず笑顔が引きつる。
「なんか、デキ婚したんだけど、生まれた子供が自分の子供じゃなかったらしくて」
「うわぁ」と、思わず心の声が漏れる。
現実にあるんだ、と思った。
「なのに、奥さんが別れてくれなくて、調停だって」
「旦那が調停を申し立てるのって珍しいよね」と言った香苗のジョッキの中身は、既に半分。
「そうなんだ?」
「最近はそうでもないのかな? 私の時は、妻側からの申し立てが多いって聞いた」
「香苗、調停したの?」
「したよー。子供三人もいるんだよ? きっちり養育費貰わないと! 口約束なんて、当てにならないじゃない」
「なるほど」
「千恵はしなかったの?」
「私は――」
料理を持ったスタッフが歩いて来るのに気が付いて、私は言葉を切った。
すぐに、スタッフから声をかけられる。
「――失礼致します」
スタッフは両手に持った大皿をテーブルの中央に置いて。「サーモンと玉ねぎのカルパッチョと自家製ピクルス、生ハムとサラミの盛り合わせです」と説明をして去る。
「美味しそう!」
満面の笑みでそう言うと、香苗が取り皿とトングを持つ。
「全員分、分けちゃっていい?」
「皿ばっか増えるから、後の奴らは後でいいんじゃないか?」と、簑島。
「そ? あ、皿分ける?」
「一緒にのっけちゃっていーよ」
香苗が率先して、テキパキと料理を取り分ける。
私と真奈美は手持ち無沙汰で顔を見合わせ、笑った。
「そういえば、香苗と簑島って一緒に学級代表してたよね?」
「そうそう」
「体育祭の参加競技も、学校祭の出し物も、二人でテキパキ決めてくれて」
「仕切りたがりでウザがられてたけどね」
料理を載せた皿を、香苗が簑島に渡し、簑島が私に渡す。
「あのクラス、自己主張が強いクセに適当な奴ばっかだったじゃん。香苗と簑島くらいしっかり者が仕切ってくれててちょうど良かったんだよ」
真奈美がカルパッチョを食べて、「ん! おいし」と唸る。
「そう言ってくれて、嬉しいわ。別れた旦那には、『お前に仕切られるばっかの人生なんてうんざりだ』って言われたけど」
「え」
三人の視線を集めながら、香苗は生ハムを頬張る。
「結婚前は、優柔不断な自分にはしっかり者の私が必要だ、なんて言ってたくせに」
「子供三人もいるのに、そんな理由で別れたのか?」
「まさか。決定打は『騙された!』って泣かれたことかな」
「騙す!?」
「泣かれた!?」
私と真奈美が同時に違うことを聞き返し、香苗がアハハッと笑った。
「美容師なの?」
「そ! 今じゃ、ツーブロックを作る方」と、真奈美。
「本人は?」
「ロン毛。パーマかけて結んでんの」
「うそぉ!」
「ホント、ホント!」
四人の笑い声が響く中、ファーストドリンクが運ばれてきた。
「ひとまず、乾杯しよ!」と、真奈美がジョッキを持ち上げた。
「バツイチにかんぱ~い!」
「そんなのに乾杯とかしないから!」と言って、香苗がさっさとジョッキに口をつける。
私と簑島は笑いながら互いのジョッキを軽く合わせ、一口飲む。
そして、簑島に「で?」と話の続きを催促した。
「で、一年前のクラス会に飛び入り参加してたんだけどさ? 泥沼離婚調停中だって言ってたんだよ」
「え」
思わず笑顔が引きつる。
「なんか、デキ婚したんだけど、生まれた子供が自分の子供じゃなかったらしくて」
「うわぁ」と、思わず心の声が漏れる。
現実にあるんだ、と思った。
「なのに、奥さんが別れてくれなくて、調停だって」
「旦那が調停を申し立てるのって珍しいよね」と言った香苗のジョッキの中身は、既に半分。
「そうなんだ?」
「最近はそうでもないのかな? 私の時は、妻側からの申し立てが多いって聞いた」
「香苗、調停したの?」
「したよー。子供三人もいるんだよ? きっちり養育費貰わないと! 口約束なんて、当てにならないじゃない」
「なるほど」
「千恵はしなかったの?」
「私は――」
料理を持ったスタッフが歩いて来るのに気が付いて、私は言葉を切った。
すぐに、スタッフから声をかけられる。
「――失礼致します」
スタッフは両手に持った大皿をテーブルの中央に置いて。「サーモンと玉ねぎのカルパッチョと自家製ピクルス、生ハムとサラミの盛り合わせです」と説明をして去る。
「美味しそう!」
満面の笑みでそう言うと、香苗が取り皿とトングを持つ。
「全員分、分けちゃっていい?」
「皿ばっか増えるから、後の奴らは後でいいんじゃないか?」と、簑島。
「そ? あ、皿分ける?」
「一緒にのっけちゃっていーよ」
香苗が率先して、テキパキと料理を取り分ける。
私と真奈美は手持ち無沙汰で顔を見合わせ、笑った。
「そういえば、香苗と簑島って一緒に学級代表してたよね?」
「そうそう」
「体育祭の参加競技も、学校祭の出し物も、二人でテキパキ決めてくれて」
「仕切りたがりでウザがられてたけどね」
料理を載せた皿を、香苗が簑島に渡し、簑島が私に渡す。
「あのクラス、自己主張が強いクセに適当な奴ばっかだったじゃん。香苗と簑島くらいしっかり者が仕切ってくれててちょうど良かったんだよ」
真奈美がカルパッチョを食べて、「ん! おいし」と唸る。
「そう言ってくれて、嬉しいわ。別れた旦那には、『お前に仕切られるばっかの人生なんてうんざりだ』って言われたけど」
「え」
三人の視線を集めながら、香苗は生ハムを頬張る。
「結婚前は、優柔不断な自分にはしっかり者の私が必要だ、なんて言ってたくせに」
「子供三人もいるのに、そんな理由で別れたのか?」
「まさか。決定打は『騙された!』って泣かれたことかな」
「騙す!?」
「泣かれた!?」
私と真奈美が同時に違うことを聞き返し、香苗がアハハッと笑った。
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