復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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16.復讐の終わり

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「明日、梓の家に挨拶に行こう。その後で、うち。で、夜には役所」

 彼の鼻先が、頬に押し付けられる。

 涙でベトベトなのに。

「いや、やっぱ、明後日にしよう」

「どうして?」

「明日はベッドから出してやれる気がしない」

「そっちの方が大事?」

「当然」

 こめかみに口づけられ、私は目を細めた。

「早く帰ろう」

 お腹が空いた、と言うより先に唇を重ねられた。

 チュッと触れて離れ、また触れる。

 互いの唇の隙間から舌を挿しこむ。

「ん……」

 肩も腰もきつく抱かれて逃げられない。

 それでなくても、背後は壁だ。

 私の足の間に、皇丞の足が割り込んできて、スカートの裾が上がる。

 身体がピタリと密着し、感じる鼓動がどちらのものか、わからない。

 そのうち、リズムまで重なった。

「やば……」

 夢中で舌を絡ませていると、わずかな隙間から彼が声を漏らした。

 私の足の間の皇丞の足が膝を折ったせいで、私はつま先立ちとなる。

 力を抜くと、彼の膝に座ってしまう。

 もぞ、と体勢を直すと、皇丞の舌が私の口内で動きを止めた。

 唇が離れ、互いが熱い息を吐く。

「あぶね……」

「……?」

「マジで反応しそうだった」

「もうっ……」

 皇丞の手が私の頬を撫で、髪に差し込まれて梳いていく。

「帰ろう」

「うん」

 言葉とは裏腹に、ぎゅっと抱きしめられる。

「皇丞」

「ん?」

「おかえり」

「ん」

「会いたかったよ」

「俺も」

「ねぇ」

「ん?」

「林海さんの動画、見た?」

「お前……」

 皇丞がついたため息が首筋をくすぐる。

「萎えること言うなよ」

 ふふっと笑うと、両手で頬を挟まれた。

 唇が寄せられ、突き出る。

「けど、すごいらしいぞ」

 見たんじゃない、と言いたいのに、頬を掴まれていて唇がピクピク動くだけ。

「見てねーよ。見たのは、欣吾」

 さすが、女癖が悪いと皇丞が言い切るだけはある。

 なんでもござれ、か。

「欣吾がピクリとも反応しなかったらしい」

 いい加減息苦しくて、彼の手を払った。

「それくらい、会議室での林海が強烈過ぎて、男に跨って腰を振る姿にゾッとしたらしい」

 確かに、すごい。

「癒されたくて、今日は女のとこじゃなくて実家帰るって」

「実家で癒されるの?」

「平井の子供。悶えるくらい可愛いらしい」

 甥っ子か姪っ子が増えたら、栗山課長の女遊びも減るかもしれない。

「俺たちも作る? 子供」

「気が早い」

「だな。まだしばらくは、梓を抱いてたい」

 ムードがあるんだかないんだか。

 それなのに喜んでしまう自分に、呆れる。

「帰ろう」

「ああ」

「お腹空いたし」

「ムード、ねえの」

 皇丞が笑う。



 食べなきゃ、もたないじゃない。



 なんて思ったことは、秘密だ。

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