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番外編まとめ
【番外編】お年玉企画:雪まつりアゲイン2
しおりを挟む◇ ◆ ◇
今日はスノボ。ショートスキーは滑れれるようになったとはいえ、誰かしらが苦手かな~なんて思っていのに、予想外にガルドさん達は三十分もらかからずに全員滑れるようになった。しかも上手いの。
インストラクターを頼んでいた村人は「今日は大丈夫そうですね」と昨日とは違う意味で苦笑していた。
ギャチョー君はまた新しい技を考案したみたいでジャンプ台で飛びまくっているし、それに対抗心が刺激されたのかグレンだけじゃなくてジルまでこぞってジャンプ台に向かっている。
運動オバケ達すごいな……
午後、休憩を挟みつつチマチマ滑っていると、ガルドさんが私目掛けて滑り下りてきた。
「セナ、疲れたのか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「お前さん、すぐ無理するんだから疲れてるならやめておけよ」
「ふふっ、は~い」
大丈夫なのに心配性なんだから。
「そういや、ジュードが『今日はなんの料理かなー』って言ってたが、今日も新しい料理なのか?」
「へ!? え、マジで??」
私はそんな話知らないぞ!
驚きにバッと顔を上げると、目を見開いたガルドさんと目が合った。
「あー……新しい料理が食えるって朝からやる気だったんだが……違ったみてぇだな」
私の反応で違うことがわかったガルドさんは困ったような顔で顎髭を触っている。
朝から真剣だった理由がわかったよ……今日も新作が食べられると思ってたのね。てっきり楽しさを見出したのかと思ってたのに……まぁ、笑顔で滑っているから楽しんではくれていそうだけど。
「ジュード達に言ってくるか?」
「いや、大丈夫。新作考えておくよ」
「無理なら無理って言わねぇと調子乗るぞ」
「んーん。本当に大丈夫だよ」
そう返した私を見極めるかのようにガルドさんは目を細めた。
やっぱり心配性だよね。大事にされていることをダイレクトに感じるからちょっとくすぐったい。
思わずニヤついちゃったら、訝しげに眉を寄せられてしまった。
「私レシピ確認したいから、あそこの休憩所に行ってくるね」
「あー……一人になりてぇワケじゃないなら俺も行く」
グレン達には念話を飛ばし、コース脇の休憩所に入ると中は喫茶店仕様だった。
二人で薬草茶を頼んでコースが見える窓際の席に座る。
「おぉ、ギャチョーすげぇな。今四回転してたぞ」
「あはは、ギャチョー君は最初からすごかったんだよ。固定もしていないただの板に乗って、ジャンプ台もないところでジャンプしてたもん。しかもその後泉に連れてってくれたんだけど、この寒さの中で水に飛び込んで寒中水泳やってたからね」
パンツ一丁で五分経っても水中から上がってこなかったことも話すと、信じられないようなものを見るかのような顔を向けられた。
うんうん、やっぱ驚くよね。私と同じ気持ちでいてくれて嬉しい。
ガルドさんと雑談しながら私はレシピアプリで検索をかける。
昨日はブータンの料理だったから、どうせなら今日も海外の料理がいい。日本で食べたことのない料理にしちゃおうかな。寒い国の料理なら体も温まりそうじゃない?
「あ……面白い名前の料理見付けた」
「面白い名前?」
「うん、〝ヤンソンの誘惑〟だって」
「誘惑?」
「なんかね、菜食主義……野菜しか食べないって決めているヤンソンって名前の人が、思わず食べちゃったんだって」
「そんなんで料理名になんのか?」
「それくらい美味しいって意味で付けたんじゃない?」
「ほぉー」
アンチョビの入ったポテトグラタンで、スウェーデンの料理らしい。ミートボールとサーモンのイメージくらいしかなかった。ごめんなさい。
ガルドさんがちょっと気になるみたいだからキープしておこう。
もう一つ〝空飛ぶヤコブさん〟っていう名前の料理があったんだけど、これはバナナが必要らしくて諦めた。
チコリを使ったベルギーの料理もグラタンだった。ヤンソンの誘惑とグラタンで被っちゃう。
「ねぇねぇ、ギャチョー君達もお米食べられると思う?」
「あー……大丈夫じゃねぇか? グラなんとかっつー、目玉みてぇなやつ食ってんだろ?」
目玉がよくわからなくてすり合わせしたところ、グラトゥロイユ――イクラのことだった。
そういえば見た目が気持ち悪いってあんま食べられてないんだっけ。
調べていてわかったことは、わりと似たようなモノであればすでに食べているってこと。私的には美味しそう、珍しい、初めて、みたいな感じを希望だったんだけれど。調べ方が悪いのかな?
「ねぇ、ガルドさんはさっき話してた〝ヤンソンの誘惑〟食べたい?」
「ん? 違うやつなら無理に作らなくていいぞ?」
「作るのはおやつだから、食後のデザートになると思う。食べたいならメインとして作るよ?」
「面倒じゃないなら食ってみてぇな」
特に買い足すものもないので無問題。
今日作るのは決めたから、戻ってもいいんだけど……
スノボしにコースに戻るかガルドさんに聞いたところ、グレンやジュードさんのテンションが高すぎてノリに付いていけなかったんだそう。
「セナが戻るなら戻るぞ」
「んー、こうしてガルドさんと二人でのんびり~ってなかなかないから、今日はこのままがいいな」
「……そうかよ」
照れているのかガシガシと頭を撫でられた。
◇
そのままガルドさんとたくさんお喋りして私は大満足。グレン達はめいっぱい滑って大満足。
風が冷たさを増す夕刻前、グレン達のお迎えでギャイオさん宅に戻ってきた。休憩らしい休憩はお昼しか取っていないハズなのに、彼らはまだまだ元気みたい。流石体力オバケ。
ジュードさんは子供達にも新作が楽しみだと話していたらしく、「あたし達も食べたい!」と望まれた。
予想していたから大丈夫よ。
「新作の方はおやつだから食後のデザートだよ。ジュードさんには肉料理とスープお願いしてもいい?」
「いいよ、いいよー。いっぱい作るねー」
軽く了承してくれたジュードさんは、私が出した食材を確認してからスープ作りに取り掛かった。
系統合わせてくれるのね。優しい!
グラタン皿……いっぱいあってよかった。赤のアレスから渡されたときはこんな数量使わないよって思ったのに……ありがとう、アレスとクロノス。
オーブンをフル稼働でグラタンを焼き、その間にコールスローサラダとサーモンと人参のマリネを作った。
「こっちはほとんど出来たから手伝うよー」
「ありがとう」
レシピを見つつジュードさんに説明すると、「へぇー! これがおやつになるのー?」と驚いていた。
スープを作っていたときよりも明らかにテンションが上がっていらっしゃる……
みんなに声をかけて席につく。ただでさえお皿が大きいのに各それぞれ五品あるからテーブルはいっぱいいっぱいだ。
子供達は目を輝かせてフォークを手にとった。
「これが誘惑っつーやつか?」
「そうそう。〝ヤンソンの誘惑〟って名前のグラタンだよ。中にアンチョビが入ってるの」
よくわかっていないメンバーにガルドさんと休憩していたときの話をしている間に、子供達はスープのおかわりに走っていた。食べるの早すぎじゃない?
「セナちゃんおかわりしないの? 昨日もしてなかったよね?」
「これで充分おなかいっぱいだよ」
「「「「「「え……」」」」」」
ギャチョー君に答えただけなのに子供達全員に驚かれた。しかも「食べれないからちっちゃいんだね……」なんて可哀想な子を見るような目を向けられてしまった。
背が伸びないのは私も甚だ疑問だけど、ご飯の量は間違いなく関係ないぞ。日本にいたときより食べてるくらいなんだから。
気を取り直し、お待ちかねのデザートだ。
作ったのはフィンランド料理の〝カレリアパイ〟。〝カルヤラン・ピーラッカ〟ともいうらしい。ライ麦粉の生地にミルク粥を包んだもの。卵バターやジャムを載せることもあるんだって。
今回はオーソドックスに……ってことでノーマルです。食べてみて次回どうするか決めるつもり。
〈あんまり甘くないが美味い!〉
「素朴な甘さがいいですね」
グレンとジルは気に入ったみたい。もう二つ目に手を伸ばしていた。
子供達も好きみたいでそこかしこから美味しいと声が聞こえてくる。
「んー、んまっ! これがシラコメなんてビックリだよねー」
「シラコメ!?」
ジュードさんのセリフにギャイオさんが驚きの声を上げた。
ギャチョー君達は内容というよりも声を荒げたギャイオさんに注目している。ギャチョー君達が驚いていないことが驚きです。
「あれ、食えるのか……」
「うん、私の故郷みたいなとこでは普通に食べられてるよ」
「オレっち達も最初は驚いたんだよねー」
驚いた? ジュードさんって「流石セナっちー」って爆笑してなかったっけ??
ギャチョー君達は驚いていないことを指摘すると、「あぁ、あいつらはシラコメ自体知らねぇんじゃないか」だって。この辺だとシラコメは育たないから、家畜には違うものを与えているらしい。特にこの村は雪深い辺境にあるから余計に。
馴染みがなかったなら納得。わざわざ運ばせるとなればコストもかかっちゃうしね。
「今日のもすごい美味しかったけど、おれ昨日のスープが好き。また食べたい」
「あたしも!」
ギャチョー君の感想に女の子が同意したと思ったら、他の子達も同調していた。唯一今日のそら豆のスープの方が好きだと言ったのは女の子と同い年の男の子のみ。
マジで? かなりの辛さだよ? 寒さに強いと辛さにも強いの????
ベッドに入ってから思ったよ。そういえば辛味酒のおかげか、お酒にも強かったなって……
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