23 / 541
番外編まとめ
【番外編】お年玉企画:雪まつりアゲイン2
しおりを挟む◇ ◆ ◇
今日はスノボ。ショートスキーは滑れれるようになったとはいえ、誰かしらが苦手かな~なんて思っていのに、予想外にガルドさん達は三十分もらかからずに全員滑れるようになった。しかも上手いの。
インストラクターを頼んでいた村人は「今日は大丈夫そうですね」と昨日とは違う意味で苦笑していた。
ギャチョー君はまた新しい技を考案したみたいでジャンプ台で飛びまくっているし、それに対抗心が刺激されたのかグレンだけじゃなくてジルまでこぞってジャンプ台に向かっている。
運動オバケ達すごいな……
午後、休憩を挟みつつチマチマ滑っていると、ガルドさんが私目掛けて滑り下りてきた。
「セナ、疲れたのか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「お前さん、すぐ無理するんだから疲れてるならやめておけよ」
「ふふっ、は~い」
大丈夫なのに心配性なんだから。
「そういや、ジュードが『今日はなんの料理かなー』って言ってたが、今日も新しい料理なのか?」
「へ!? え、マジで??」
私はそんな話知らないぞ!
驚きにバッと顔を上げると、目を見開いたガルドさんと目が合った。
「あー……新しい料理が食えるって朝からやる気だったんだが……違ったみてぇだな」
私の反応で違うことがわかったガルドさんは困ったような顔で顎髭を触っている。
朝から真剣だった理由がわかったよ……今日も新作が食べられると思ってたのね。てっきり楽しさを見出したのかと思ってたのに……まぁ、笑顔で滑っているから楽しんではくれていそうだけど。
「ジュード達に言ってくるか?」
「いや、大丈夫。新作考えておくよ」
「無理なら無理って言わねぇと調子乗るぞ」
「んーん。本当に大丈夫だよ」
そう返した私を見極めるかのようにガルドさんは目を細めた。
やっぱり心配性だよね。大事にされていることをダイレクトに感じるからちょっとくすぐったい。
思わずニヤついちゃったら、訝しげに眉を寄せられてしまった。
「私レシピ確認したいから、あそこの休憩所に行ってくるね」
「あー……一人になりてぇワケじゃないなら俺も行く」
グレン達には念話を飛ばし、コース脇の休憩所に入ると中は喫茶店仕様だった。
二人で薬草茶を頼んでコースが見える窓際の席に座る。
「おぉ、ギャチョーすげぇな。今四回転してたぞ」
「あはは、ギャチョー君は最初からすごかったんだよ。固定もしていないただの板に乗って、ジャンプ台もないところでジャンプしてたもん。しかもその後泉に連れてってくれたんだけど、この寒さの中で水に飛び込んで寒中水泳やってたからね」
パンツ一丁で五分経っても水中から上がってこなかったことも話すと、信じられないようなものを見るかのような顔を向けられた。
うんうん、やっぱ驚くよね。私と同じ気持ちでいてくれて嬉しい。
ガルドさんと雑談しながら私はレシピアプリで検索をかける。
昨日はブータンの料理だったから、どうせなら今日も海外の料理がいい。日本で食べたことのない料理にしちゃおうかな。寒い国の料理なら体も温まりそうじゃない?
「あ……面白い名前の料理見付けた」
「面白い名前?」
「うん、〝ヤンソンの誘惑〟だって」
「誘惑?」
「なんかね、菜食主義……野菜しか食べないって決めているヤンソンって名前の人が、思わず食べちゃったんだって」
「そんなんで料理名になんのか?」
「それくらい美味しいって意味で付けたんじゃない?」
「ほぉー」
アンチョビの入ったポテトグラタンで、スウェーデンの料理らしい。ミートボールとサーモンのイメージくらいしかなかった。ごめんなさい。
ガルドさんがちょっと気になるみたいだからキープしておこう。
もう一つ〝空飛ぶヤコブさん〟っていう名前の料理があったんだけど、これはバナナが必要らしくて諦めた。
チコリを使ったベルギーの料理もグラタンだった。ヤンソンの誘惑とグラタンで被っちゃう。
「ねぇねぇ、ギャチョー君達もお米食べられると思う?」
「あー……大丈夫じゃねぇか? グラなんとかっつー、目玉みてぇなやつ食ってんだろ?」
目玉がよくわからなくてすり合わせしたところ、グラトゥロイユ――イクラのことだった。
そういえば見た目が気持ち悪いってあんま食べられてないんだっけ。
調べていてわかったことは、わりと似たようなモノであればすでに食べているってこと。私的には美味しそう、珍しい、初めて、みたいな感じを希望だったんだけれど。調べ方が悪いのかな?
「ねぇ、ガルドさんはさっき話してた〝ヤンソンの誘惑〟食べたい?」
「ん? 違うやつなら無理に作らなくていいぞ?」
「作るのはおやつだから、食後のデザートになると思う。食べたいならメインとして作るよ?」
「面倒じゃないなら食ってみてぇな」
特に買い足すものもないので無問題。
今日作るのは決めたから、戻ってもいいんだけど……
スノボしにコースに戻るかガルドさんに聞いたところ、グレンやジュードさんのテンションが高すぎてノリに付いていけなかったんだそう。
「セナが戻るなら戻るぞ」
「んー、こうしてガルドさんと二人でのんびり~ってなかなかないから、今日はこのままがいいな」
「……そうかよ」
照れているのかガシガシと頭を撫でられた。
◇
そのままガルドさんとたくさんお喋りして私は大満足。グレン達はめいっぱい滑って大満足。
風が冷たさを増す夕刻前、グレン達のお迎えでギャイオさん宅に戻ってきた。休憩らしい休憩はお昼しか取っていないハズなのに、彼らはまだまだ元気みたい。流石体力オバケ。
ジュードさんは子供達にも新作が楽しみだと話していたらしく、「あたし達も食べたい!」と望まれた。
予想していたから大丈夫よ。
「新作の方はおやつだから食後のデザートだよ。ジュードさんには肉料理とスープお願いしてもいい?」
「いいよ、いいよー。いっぱい作るねー」
軽く了承してくれたジュードさんは、私が出した食材を確認してからスープ作りに取り掛かった。
系統合わせてくれるのね。優しい!
グラタン皿……いっぱいあってよかった。赤のアレスから渡されたときはこんな数量使わないよって思ったのに……ありがとう、アレスとクロノス。
オーブンをフル稼働でグラタンを焼き、その間にコールスローサラダとサーモンと人参のマリネを作った。
「こっちはほとんど出来たから手伝うよー」
「ありがとう」
レシピを見つつジュードさんに説明すると、「へぇー! これがおやつになるのー?」と驚いていた。
スープを作っていたときよりも明らかにテンションが上がっていらっしゃる……
みんなに声をかけて席につく。ただでさえお皿が大きいのに各それぞれ五品あるからテーブルはいっぱいいっぱいだ。
子供達は目を輝かせてフォークを手にとった。
「これが誘惑っつーやつか?」
「そうそう。〝ヤンソンの誘惑〟って名前のグラタンだよ。中にアンチョビが入ってるの」
よくわかっていないメンバーにガルドさんと休憩していたときの話をしている間に、子供達はスープのおかわりに走っていた。食べるの早すぎじゃない?
「セナちゃんおかわりしないの? 昨日もしてなかったよね?」
「これで充分おなかいっぱいだよ」
「「「「「「え……」」」」」」
ギャチョー君に答えただけなのに子供達全員に驚かれた。しかも「食べれないからちっちゃいんだね……」なんて可哀想な子を見るような目を向けられてしまった。
背が伸びないのは私も甚だ疑問だけど、ご飯の量は間違いなく関係ないぞ。日本にいたときより食べてるくらいなんだから。
気を取り直し、お待ちかねのデザートだ。
作ったのはフィンランド料理の〝カレリアパイ〟。〝カルヤラン・ピーラッカ〟ともいうらしい。ライ麦粉の生地にミルク粥を包んだもの。卵バターやジャムを載せることもあるんだって。
今回はオーソドックスに……ってことでノーマルです。食べてみて次回どうするか決めるつもり。
〈あんまり甘くないが美味い!〉
「素朴な甘さがいいですね」
グレンとジルは気に入ったみたい。もう二つ目に手を伸ばしていた。
子供達も好きみたいでそこかしこから美味しいと声が聞こえてくる。
「んー、んまっ! これがシラコメなんてビックリだよねー」
「シラコメ!?」
ジュードさんのセリフにギャイオさんが驚きの声を上げた。
ギャチョー君達は内容というよりも声を荒げたギャイオさんに注目している。ギャチョー君達が驚いていないことが驚きです。
「あれ、食えるのか……」
「うん、私の故郷みたいなとこでは普通に食べられてるよ」
「オレっち達も最初は驚いたんだよねー」
驚いた? ジュードさんって「流石セナっちー」って爆笑してなかったっけ??
ギャチョー君達は驚いていないことを指摘すると、「あぁ、あいつらはシラコメ自体知らねぇんじゃないか」だって。この辺だとシラコメは育たないから、家畜には違うものを与えているらしい。特にこの村は雪深い辺境にあるから余計に。
馴染みがなかったなら納得。わざわざ運ばせるとなればコストもかかっちゃうしね。
「今日のもすごい美味しかったけど、おれ昨日のスープが好き。また食べたい」
「あたしも!」
ギャチョー君の感想に女の子が同意したと思ったら、他の子達も同調していた。唯一今日のそら豆のスープの方が好きだと言ったのは女の子と同い年の男の子のみ。
マジで? かなりの辛さだよ? 寒さに強いと辛さにも強いの????
ベッドに入ってから思ったよ。そういえば辛味酒のおかげか、お酒にも強かったなって……
148
お気に入りに追加
25,052
あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。