25 / 530
番外編まとめ
【番外編】お年玉企画:雪まつりアゲイン2
しおりを挟む◇ ◆ ◇
今日はスノボ。ショートスキーは滑れれるようになったとはいえ、誰かしらが苦手かな~なんて思っていのに、予想外にガルドさん達は三十分もらかからずに全員滑れるようになった。しかも上手いの。
インストラクターを頼んでいた村人は「今日は大丈夫そうですね」と昨日とは違う意味で苦笑していた。
ギャチョー君はまた新しい技を考案したみたいでジャンプ台で飛びまくっているし、それに対抗心が刺激されたのかグレンだけじゃなくてジルまでこぞってジャンプ台に向かっている。
運動オバケ達すごいな……
午後、休憩を挟みつつチマチマ滑っていると、ガルドさんが私目掛けて滑り下りてきた。
「セナ、疲れたのか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「お前さん、すぐ無理するんだから疲れてるならやめておけよ」
「ふふっ、は~い」
大丈夫なのに心配性なんだから。
「そういや、ジュードが『今日はなんの料理かなー』って言ってたが、今日も新しい料理なのか?」
「へ!? え、マジで??」
私はそんな話知らないぞ!
驚きにバッと顔を上げると、目を見開いたガルドさんと目が合った。
「あー……新しい料理が食えるって朝からやる気だったんだが……違ったみてぇだな」
私の反応で違うことがわかったガルドさんは困ったような顔で顎髭を触っている。
朝から真剣だった理由がわかったよ……今日も新作が食べられると思ってたのね。てっきり楽しさを見出したのかと思ってたのに……まぁ、笑顔で滑っているから楽しんではくれていそうだけど。
「ジュード達に言ってくるか?」
「いや、大丈夫。新作考えておくよ」
「無理なら無理って言わねぇと調子乗るぞ」
「んーん。本当に大丈夫だよ」
そう返した私を見極めるかのようにガルドさんは目を細めた。
やっぱり心配性だよね。大事にされていることをダイレクトに感じるからちょっとくすぐったい。
思わずニヤついちゃったら、訝しげに眉を寄せられてしまった。
「私レシピ確認したいから、あそこの休憩所に行ってくるね」
「あー……一人になりてぇワケじゃないなら俺も行く」
グレン達には念話を飛ばし、コース脇の休憩所に入ると中は喫茶店仕様だった。
二人で薬草茶を頼んでコースが見える窓際の席に座る。
「おぉ、ギャチョーすげぇな。今四回転してたぞ」
「あはは、ギャチョー君は最初からすごかったんだよ。固定もしていないただの板に乗って、ジャンプ台もないところでジャンプしてたもん。しかもその後泉に連れてってくれたんだけど、この寒さの中で水に飛び込んで寒中水泳やってたからね」
パンツ一丁で五分経っても水中から上がってこなかったことも話すと、信じられないようなものを見るかのような顔を向けられた。
うんうん、やっぱ驚くよね。私と同じ気持ちでいてくれて嬉しい。
ガルドさんと雑談しながら私はレシピアプリで検索をかける。
昨日はブータンの料理だったから、どうせなら今日も海外の料理がいい。日本で食べたことのない料理にしちゃおうかな。寒い国の料理なら体も温まりそうじゃない?
「あ……面白い名前の料理見付けた」
「面白い名前?」
「うん、〝ヤンソンの誘惑〟だって」
「誘惑?」
「なんかね、菜食主義……野菜しか食べないって決めているヤンソンって名前の人が、思わず食べちゃったんだって」
「そんなんで料理名になんのか?」
「それくらい美味しいって意味で付けたんじゃない?」
「ほぉー」
アンチョビの入ったポテトグラタンで、スウェーデンの料理らしい。ミートボールとサーモンのイメージくらいしかなかった。ごめんなさい。
ガルドさんがちょっと気になるみたいだからキープしておこう。
もう一つ〝空飛ぶヤコブさん〟っていう名前の料理があったんだけど、これはバナナが必要らしくて諦めた。
チコリを使ったベルギーの料理もグラタンだった。ヤンソンの誘惑とグラタンで被っちゃう。
「ねぇねぇ、ギャチョー君達もお米食べられると思う?」
「あー……大丈夫じゃねぇか? グラなんとかっつー、目玉みてぇなやつ食ってんだろ?」
目玉がよくわからなくてすり合わせしたところ、グラトゥロイユ――イクラのことだった。
そういえば見た目が気持ち悪いってあんま食べられてないんだっけ。
調べていてわかったことは、わりと似たようなモノであればすでに食べているってこと。私的には美味しそう、珍しい、初めて、みたいな感じを希望だったんだけれど。調べ方が悪いのかな?
「ねぇ、ガルドさんはさっき話してた〝ヤンソンの誘惑〟食べたい?」
「ん? 違うやつなら無理に作らなくていいぞ?」
「作るのはおやつだから、食後のデザートになると思う。食べたいならメインとして作るよ?」
「面倒じゃないなら食ってみてぇな」
特に買い足すものもないので無問題。
今日作るのは決めたから、戻ってもいいんだけど……
スノボしにコースに戻るかガルドさんに聞いたところ、グレンやジュードさんのテンションが高すぎてノリに付いていけなかったんだそう。
「セナが戻るなら戻るぞ」
「んー、こうしてガルドさんと二人でのんびり~ってなかなかないから、今日はこのままがいいな」
「……そうかよ」
照れているのかガシガシと頭を撫でられた。
◇
そのままガルドさんとたくさんお喋りして私は大満足。グレン達はめいっぱい滑って大満足。
風が冷たさを増す夕刻前、グレン達のお迎えでギャイオさん宅に戻ってきた。休憩らしい休憩はお昼しか取っていないハズなのに、彼らはまだまだ元気みたい。流石体力オバケ。
ジュードさんは子供達にも新作が楽しみだと話していたらしく、「あたし達も食べたい!」と望まれた。
予想していたから大丈夫よ。
「新作の方はおやつだから食後のデザートだよ。ジュードさんには肉料理とスープお願いしてもいい?」
「いいよ、いいよー。いっぱい作るねー」
軽く了承してくれたジュードさんは、私が出した食材を確認してからスープ作りに取り掛かった。
系統合わせてくれるのね。優しい!
グラタン皿……いっぱいあってよかった。赤のアレスから渡されたときはこんな数量使わないよって思ったのに……ありがとう、アレスとクロノス。
オーブンをフル稼働でグラタンを焼き、その間にコールスローサラダとサーモンと人参のマリネを作った。
「こっちはほとんど出来たから手伝うよー」
「ありがとう」
レシピを見つつジュードさんに説明すると、「へぇー! これがおやつになるのー?」と驚いていた。
スープを作っていたときよりも明らかにテンションが上がっていらっしゃる……
みんなに声をかけて席につく。ただでさえお皿が大きいのに各それぞれ五品あるからテーブルはいっぱいいっぱいだ。
子供達は目を輝かせてフォークを手にとった。
「これが誘惑っつーやつか?」
「そうそう。〝ヤンソンの誘惑〟って名前のグラタンだよ。中にアンチョビが入ってるの」
よくわかっていないメンバーにガルドさんと休憩していたときの話をしている間に、子供達はスープのおかわりに走っていた。食べるの早すぎじゃない?
「セナちゃんおかわりしないの? 昨日もしてなかったよね?」
「これで充分おなかいっぱいだよ」
「「「「「「え……」」」」」」
ギャチョー君に答えただけなのに子供達全員に驚かれた。しかも「食べれないからちっちゃいんだね……」なんて可哀想な子を見るような目を向けられてしまった。
背が伸びないのは私も甚だ疑問だけど、ご飯の量は間違いなく関係ないぞ。日本にいたときより食べてるくらいなんだから。
気を取り直し、お待ちかねのデザートだ。
作ったのはフィンランド料理の〝カレリアパイ〟。〝カルヤラン・ピーラッカ〟ともいうらしい。ライ麦粉の生地にミルク粥を包んだもの。卵バターやジャムを載せることもあるんだって。
今回はオーソドックスに……ってことでノーマルです。食べてみて次回どうするか決めるつもり。
〈あんまり甘くないが美味い!〉
「素朴な甘さがいいですね」
グレンとジルは気に入ったみたい。もう二つ目に手を伸ばしていた。
子供達も好きみたいでそこかしこから美味しいと声が聞こえてくる。
「んー、んまっ! これがシラコメなんてビックリだよねー」
「シラコメ!?」
ジュードさんのセリフにギャイオさんが驚きの声を上げた。
ギャチョー君達は内容というよりも声を荒げたギャイオさんに注目している。ギャチョー君達が驚いていないことが驚きです。
「あれ、食えるのか……」
「うん、私の故郷みたいなとこでは普通に食べられてるよ」
「オレっち達も最初は驚いたんだよねー」
驚いた? ジュードさんって「流石セナっちー」って爆笑してなかったっけ??
ギャチョー君達は驚いていないことを指摘すると、「あぁ、あいつらはシラコメ自体知らねぇんじゃないか」だって。この辺だとシラコメは育たないから、家畜には違うものを与えているらしい。特にこの村は雪深い辺境にあるから余計に。
馴染みがなかったなら納得。わざわざ運ばせるとなればコストもかかっちゃうしね。
「今日のもすごい美味しかったけど、おれ昨日のスープが好き。また食べたい」
「あたしも!」
ギャチョー君の感想に女の子が同意したと思ったら、他の子達も同調していた。唯一今日のそら豆のスープの方が好きだと言ったのは女の子と同い年の男の子のみ。
マジで? かなりの辛さだよ? 寒さに強いと辛さにも強いの????
ベッドに入ってから思ったよ。そういえば辛味酒のおかげか、お酒にも強かったなって……
242
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜
咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。
元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。
そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。
「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」
軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続!
金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。
街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、
初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊!
気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、
ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。
本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走!
ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!?
これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ!
本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
転生令嬢は庶民の味に飢えている
柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!!
もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ!
ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。
まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
【5/22 書籍1巻発売中!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。