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番外編まとめ
【番外編】お年玉企画:雪まつりアゲイン1
しおりを挟む去年はありがとうございました。
友人に「インプの声がフリーザ様で脳内再生される」と言われ、今年の初笑いを掻っ攫われた作者です。豪華すぎる!
今年もよろしくお願いします。
皆さまの安寧を心よりお祈りしております。
お年玉といいつつ正月は過ぎていますが……まだ一月中ということで。少しでも元気を出していただけたら幸いです。
今回のお年玉番外編は特に時期は決めておりません。2021年の番外編「雪まつり」の続編という感じです。なので設定がフワッとしております。IFバージョンと言ってもいいかもしれない。フワッと読んでくださいませませ。
--------キリトリ線--------
それは突如としてもたらされた情報だった。
「珍しいモノが見られそうだよ」
ある日突然、ガイ兄からクラオルに連絡が入ったのだ。
教会から神界に赴き、詳細を聞いた私達は以前お世話になったギャイオさんに連絡を取った。雪まつりを開催した村の村長さんね。
そこからさらに大好きな古の雪族の村とも連絡を取り、準備にバタつくこととなった。
◇
そして今日、もろもろの準備も終え、やってきましたギャイオさんの村!
ちょうど雪まつりのタイミングだったから忙しそうだったのに「ハハハッ! 遠慮すんな。ギャチョーも会いたいってよ」とギャイオさんは軽く許可してくれたのである。ありがたいよね。
「おぉ~! 今年はこの辺にも雪像があるんだね。それに建物増えた?」
「そうですね、以前より人も多いのでお祭りとして定着したのでしょう」
村の入口には歓迎を表すかのように、右側には可愛らしいデフォルメ調の兎の雪像、左側には今にも飛びかかってきそうなリアリティ溢れる豹の雪像が置かれている。
左右の差が激しい……獲物の兎を狙ってる豹ってこと?
「セナちゃーん!」
声の方へと顔を向けると、ギャチョー君が手を振りながら駆け寄ってくるところだった。
「天狐さんも久しぶり!」
「あら、ギャチョーのお迎えなのね」
「久しぶりだね。元気そうでよかった」
「うん、おれ達みんな元気だよ! ……その人達?」
首を傾げたギャチョー君に頷き、ニキーダの腕の中から順番にガルドさん達を紹介する。
そう、今回はガルドさん達も一緒です。
ギャチョー君は「おれ、ギャチョー。よろしく!」とニカッと笑った。
そんなギャチョー君に続いてギャチョー君宅へ向かう。
「あったけぇ……」
「だねー、生き返るー」
玄関に入った途端、ガルドさんとジュードさんが揃って息を吐いた。前回同様、雪族のおばさん達に言って服作ってもらったんだけど……それでも寒かったらしい。まだ入れていないコルトさんとモルトさんは無言で身を寄せ合っている。
「おー、らっしゃ……ハハハッ! 前のグレンみてぇになってんじゃねぇか。入って来いよ」
廊下から玄関に顔を出したギャイオさんが笑いながら手招きした。
リビングは……相変わらず暑いくらい。入った瞬間、顔を見合わせたガルドさん達が無言で上着を脱ぎだして笑ってしまった。
ギャイオさんによると、参加希望者が増えたため、今年から村別対抗ではなくなり、エントリー制の個人競技となったそう。優勝者への景品は〝次年一泊無料券〟。
ツアーもあるけど個人客も増え、このお祭りシーズンは宿泊施設が超満員。今年は宿泊施設を増やしたものの、すぐに埋まってしまったらしい。
この村は会場であるため宿泊施設はない。最初のやり取りがそのまま継がれているみたい。
この村だけあんまり稼げてないな……と思うでしょ? ところがどっこい、お祭りシーズン以外でもコースの開放を始めたそうで、入場料(コース使用料)、道具のメンテナンス、インストラクター付きの実技教室……とそれ以外で稼いでいるんだって。
しかもインストラクターとメンテナンス、道具類販売はもちろんのこと、コース作り、監視員、食堂……と雇用先が増えた。仕事はあるし、スノボやスキーなどで遊べると村には移住希望者が続出。レッスンで教えていた人と恋愛に発展し、結婚した人までいるとのこと。
二重の意味で恐るべしゲレンデマジック……
「祭りは四日後だから、好きなだけ遊んでってくれよ」
「ありがとう」
ギャイオさんからの話が一段落するのを見計らっていたようで、ニキーダが立ち上がった。
「じゃあ、アタシは行ってくるわね」
「はーい」
「セナちゃん、遊ぶのはいいけど、外に出るときはちゃんと着なきゃダメよ。わかった?」
朝、辛味酒入りのスープを飲んだせいで暑くて、コートを嫌がったことを指しているらしい。寒くなったらちゃんと着るのに……
返事をした私の頭を満足そうに撫で、ニキーダは仕事に向かって行った。戻ってくるのはお祭り当日の予定です。
そのままギャイオさんと冷凍庫関係の話をしていると、突然玄関が騒がしくなった。
「セナちゃんいるって聞いた!」
「あ! ホントにいた!」
「ジルベルト君もいるー!」
バタバタとリビングに飛び込んできたのは一緒に遊んだことのある、あの子供達だ。
玄関を開けに行ったギャイオさんが子供達の後ろから苦笑いでリビングに戻ってきた。
「「「「「遊ぼー!」」」」」
勢いがすごい。そんな子供達にガルドさん達をご紹介する。
「ガルドさん達も遊ぼーよ!」
「その前に昼メシだ。お前らもう食ったのか?」
口を揃えてまだだと言う子供達を一度帰らせ、私達もお昼ご飯。辛味酒や生姜などを使った料理で体を温めて準備は万端。
再び突撃してきた子供達に手を引かれ、私達は雪山へと繰り出した。
最初はショートスキー。
ガルドさん達は初心者のため、村人にレッスンをお願いしたんだけど……
「うわわわわ! 滑るぅぅー!」
「お、おい! 掴むな!! コケる、コケる……! お゛あ゛っ!」
ジュードさんがアチャ並みに苦手なようで、ガルドさんを巻き込んでコケまくっている。インストラクターの村人もあまりの出来なさ具合にずっと苦笑いだ。
滑れる子供達とコースに出たがっていたグレン、保護者枠でジルを先に向かわせたのは正解だったかもしれない。
見えないけど、盛り上がっている声が聞こえてくる。
ちなみに、ジュードさんほどではないものの、モルトさんもわりとへっぴり腰だったりする。支えてあげているコルトさんは平気そうなのに……
一時間ほど経ったころ、私達の様子を見にグレン達が戻ってきた。
〈セナ、ジュードはどうだ?〉
「本人は悔しいからマスターしたいみたいなんだけど、スノボのが合ってるかもしれないからそろそろあっちに連れて行こうかと思ってたとこ」
ジュードさんの方にグレンと顔を向けると、ガルドさんだけじゃなく、モルトさんとコルトさんも巻き込んで派手に転んだ瞬間だった。
〈ふむ……我がやる気を出させてやる〉
「やる気は今もあると――」
思う、と言い終わる前にグレンはすでに歩き始めていた。
〈ジュード、さっさと出来るようにならんとセナの新作料理が食えないぞ〉
「「え!?」」
私とジュードさんの驚いた声が揃った。
そんなん聞いてないよ、グレンさん。せめて先に私に一言プリーズ!
「セナっちの、新しい料理……!?」
〈うむ〉
「……もう……滑れる人は……?」
〈連帯責任だな〉
「マジかよ。おい、ジュード」
「……モルト……」
顔を輝かせたのはジュードさん、確認を取ったのはコルトさん。グレンの〝連帯責任〟と聞いて、ガルドさんとコルトさんが上手く滑れない二人に非難めいた視線を向けた。
「セナっち新しい料理ってホントー!?」
「……え、あ、うん、わかった」
新しい料理なんかで滑れるようになるのか疑問なところである。が、断れる雰囲気ではない。
ただ、ジュードさんは「ちょっとオレっち本気でやるー!」と、モルトさんは「これは真剣にならないとですね」と、二人共やる気が目に見えて変わっていた。
――それから一時間後。
モルトさんもジュードさんも滑れるようになった。
おかしい。ほんの少し前まで一歩歩いたら転倒するくらいだったのに……そんなやる気で変わるもんなの?? まぁ現実、あんなに転ぶ~って叫んでいたのが嘘のようにシャーシャー滑ってらっしゃるんですけれども。
そんなすぐに滑れるようになると思っていなかった私は、ロクに滑らずにレシピアプリで検索しまくるハメになった。
夜、ルンルンと機嫌のいいジュードさんにはお肉などのおかずを頼んだ。
あの発言を聞いていた子供達からも望まれたため、いつもの倍以上作らなきゃいけないのにジュードさんは……
「あったらしい料理~料理~セナっち~の料理~料理~美味しい料理~♪」
なんてよくわからない歌を口ずさんでいる。作詞作曲ジュードさんっぽい。
美味しいかどうかはわかりません……今まで新しいレシピを出しても歌なんて歌ってたことなかったじゃん。なんで? そんなに?? いつになくプレッシャーを感じる……
ギャイオさん宅のコンロだけでは足りないため、私のコンロとジュードさんのコンロも出して大量生産だ。
「本日は〝エマ・ダツィ〟というスープです。これは私も過去食べたことがありません。今日初めて味見で食べました。とても辛いので苦手な人はアッチのコンロに置いてあるミルクスープを食べてください」
最初の一杯はどっちがいいか選んでと言ったのに、全員エマ・ダツィの鍋に殺到した。
子供達のことも考えて大きな寸胴鍋三つずつ作ったのに……みんな辛いの平気なの?
エマ・ダツィはブータンの料理らしい。簡単に言えば唐辛子を使った煮込み料理。エマが唐辛子、ダツィはチーズを示す言葉だそうなのでアレンジしてもよさそうだ。ってことで、私が見たレシピにはあんまり野菜が入っていなかったから、カサ増しにじゃが芋とピーマン、味付けでコンソメをちょっと入れちゃった。ちゃんと味見はしたから、大丈夫なハズ。
すごく辛いけどあとを引く美味さだそうで、一口目は驚いていたものの、子供達もおかわりするのはエマ・ダツィの方だった。
私は……辛いのはそこまで得意じゃないことと、ピーマンを入れたのでミルクスープ。ジュードさんが作ってくれたお肉料理がタンドリーチキンだったから相性が抜群にイイのよ。
「これミルクスープと交互に食べるの最高ー! どっちもさらに美味しく感じるよー!」
「ふぅ……美味いけどあちーな。これ以上脱いだら裸になっちまう」
「ギャチョー、玄関のドア開けてこい。チビ達は窓開けろ」
「「「「「「はーい」」」」」」
みんな一杯目を食べた後、服を脱ぎ始め、すでにズボンとシャツ一枚。お風呂上がりばりに薄着である。
ジュードさんとガルドさんの会話を聞いて、ギャイオさんが子供達に指示を出した。
窓は雪が入ってこないようになっていて、風だけが通り抜ける。私はストーブが消されていないのをいいことに、ストーブ前に移動した。ちょっと辛味酒を飲んだものの、そんなの意味ないくらい夜風が冷たいのよ。
結局、ジュードさんのセリフに触発された面々はミルクスープもおかわりし始め、作った鍋は全て空っぽになった。
いくらお腹がペコペコだとはいえ、この世界、本当に大食い具合がすごいよね……体の構造が地球とは違うのではないかと最近は疑っている。美味しいって食べてもらえるのは嬉しいんだけどね。
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