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番外編まとめ
【番外編】お年玉企画:雪まつりアゲイン3
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今日はスケートデーでございます。
ジュードさんのテンションが朝から高くて、今日も新作を期待されているんだろうなと察した。
スケートエリアは空いていて、私達で一つのリンクを貸切状態だった。
今日の子鹿さんは……なんとガルドさん達四人全員。急遽インストラクターを増援してもらい、マンツーマンでレッスンとなった。
「ちょっ、待て待て待て……!」
「ゆっくり、ゆっくりしてー!」
「こ、これはバランスが……」
「……止まれない……」
といった具合に大変盛り上がっていらっしゃる。
グレンとジルは普通に滑れるのでギャチョー君達が考案した高度な技を教わっている。ジャンプの回転数や高さで勝負したり、リフトしたまま高速回転したり……股抜けから支える側が軽く投げ、投げられた側は回転して着地……なんてこともやってのけていた。
エルミスとプルトンが補助に入っているとはいえ、運動オバケ達め……! プロスケーターが泣いちゃうよ。
もちろん私にそんなことできるワケがない。最初はグレン達と一緒にいたものの、高度な技の数々に付いていけなくなってジルと交代。今はクラオルとグレウスが氷の上ではしゃいでいるのを見守っている。今日も私の天使達は癒やしである。
「クラオルさん、グレウスさん。アトラクションはいかが?」
『あとらくしょん?』
『?』
「試してみようか? 苦手だったら言ってね」
木製のボウルを出し、二人には中に入ってもらう。フチに掴まったのを確認したら、リンクの上でボウルをゆっくり回転させる。モデルは遊園地にあるコーヒーカップだ。
『『わぁ~!』』
クラオルもグレウスも楽しそうな声を上げたことに一安心。
回転が収まるのを待ち、大丈夫だったか問いかけると『面白いからもう一回!』とリクエストがきた。何回でもやってあげるわ。
要望に応えているうちにボウルの回転はどんどん速さをあげ、今はコマ回しのようなスピードで回っている。
『キャァ~~~~!』
『わわわわわ……!』
回す度に叫んではいるものの、その声は楽しそう。
一時間ちょっとでグレウスの目が回ってしまい、今日はここまで。そりゃ一時間も高速回転しまくってたら目も回る。なのに二人共またやりたいとのこと。このボウルは遊び用にしちゃおうかな。
◇
午後は予定を変更してお出かけ。
理由は慣れないスケートで疲れちゃったから。ここ数日、普段使わない筋肉を使ったせいで筋肉痛も起こしていたみたい。転びまくってできたアザはヒールで治したものの、スケートはお休みして普通のことがしたいんだって。
ギャチョー君達に「じゃあ泳ぎに行く?」って聞かれて、ガルドさんが間髪入れずに断っていた。昨日寒中水泳の話をしたばかりだもんね。
ギャチョー君達はまだ狩りに慣れていないそうなのでお留守番。きっとスノボやスケートで盛り上がっているに違いない。
目指すはギャイオさんから聞いた、村から離れた場所にある雪山の森だ。
それぞれ龍走馬に跨り、雪山を駆けていく。
かなり雪深い道なき道でもグリネロ達は余裕らしい。スピード的には平地との差はほとんどない。とは言っても、蹴散らした雪で私達の視界は真っ白。プルトンが結界を張ってくれなきゃ、吹雪をモロに浴びるところだった。
到着した森はほとんど人が立ち入らない。なのに森の中は道中より若干雪が少なかった。木々が屋根の役割りでも担っているのかね? まぁ、それでも私が埋もれてしまいそうなほど積もっているんだけど。身長が欲しい……
ガルドさん達もこの積雪だとロクに動けないため、騎乗したまま。久しぶりにネラース達を呼んだ。
こんなに雪が積もっている中、気配はあっても魔物が見つかるのか疑問だったんだけど……そんな心配は杞憂に終わった。
先導していたアクランが雪に突っ込んで行ったのを皮切りに、狐・兎・狸・熊……と雪の中から出てくる出てくる。
ネラース達やグレンが肉弾戦となるのはわかる。でもね、まさかグリネロ達もそこに参加するとは思ってなかったのよ。ガルドさん達は慣れているみたいで武器を構えて参戦していたけど、私は必死にグリネロにしがみついているだけだった。
『ご主人様、あっちにデカいのがいたっち!』
連続の戦闘が終わり、そろそろ休憩したいところ。
偵察に行っていたルフスが戻ってくるなり嬉しそうな声で報告してきた。休憩出来そうな場所を見てきてって頼んだハズなんだけどな……
向かった先には三メートルはありそうな巨大な鹿の魔獣。二足歩行で、見た目はシュグタイルハンのマッチョダンジョンに現れた魔物みたい。あそこまでマッチョじゃないけど。
近付いた段階で魔法の気配を察知。口早にガルドさん達に向け叫ぶ。
「魔法がくるよ!」
ダークボールとアイスボールが飛んでくる中、グレンとネラース達が突撃し、残りのメンバーは少し離れた場所から魔法で援護に回ることに。魔獣は魔法の間隔が短い挙句に物理での攻撃を繰り出してくる。かなり戦い慣れているみたい。
プルトンと私がネラース達にスピードが上がるようにバフをかけ、エルミスとジルが魔法を相殺。ガルドさん達はランダムに魔法を打ち込み、相手の集中力を削いでくれている。
いつもより時間はかかったものの、なんとか誰もケガをすることなく戦闘を終えられた。
ネラース達やグレンは元気だけど、私やガルドさん達はお疲れだ。
〈久しぶりにそこそこの魔獣だったな〉
「あ……これ美味しいらしいよ」
〈本当か!?〉
鑑定結果をグレンに教えると目を輝かせた。
〝ダークスノートイフェルヒルシュ〟という名前の悪夢級の魔獣で、冬の大陸にのみ生息するとても珍しい個体だそう。黒毛和牛並みに上質な脂が乗っていてお肉は絶品。生食も可能。肉はもちろんのこと、骨も皮もツノも素材は高額で取引されているらしい。
いつもより戦闘時間が長かったから強さは納得なんだけど、名前長くない?
もう日が陰ってきているので、帰りは転移でギャイオさんの村まで戻る。
ギャイオさんに鹿の魔獣の話をすると「倒したのか!?」と驚かれた。
「え、うん。ダメだった?」
「いや、そういやグレンって古代龍だったな…………なぁ、解体手伝うから骨とツノ、ちょっと融通してくれないか?」
とても言いづらそうにギャイオさんがお伺いを立ててきた。
ごめん、今日食べようと思って、無限収納でもう解体しちゃった。
そのことを告げると、「もう解体したのか!?」と再び驚かれてしまった。
「お世話になってるし、骨とツノなら普通にあげるよ。どれくらい欲しいの?」
「いやいやいやいや、売ったらかなりの金額になるんだよ。タダでもらうわけにはいかねぇわ。んー……五十……いや百か?」
悩んでいるギャイオさんには悪いけど、時間的に私はそろそろご飯を作りたい。交渉は後でにして欲しいとお願いして、ジュードさんとキッチンに入った。
今日はお昼に作る物を決めていたのである。そのため、ギャイオさんにも協力してもらって卓上コンロを六つ用意してもらった。ギャイオさんによると子供達の家に借りたからすぐに集まったそうです。
今日はジルにも手伝ってもらい、大量の野菜の下準備を終わらせる。
お肉戦争が起きることが容易に想像できたため、一人分ずつ。グレンがお肉ばっかりで野菜を食べない気がしたから、各それぞれの野菜皿も用意した。
おかげでテーブルはミチミチ。私達とガルドさん達は自分達のテーブルを出すことになった。
「さて、今日はチーズフォンデュとオイルフォンデュです。三、四人で分かれてコンロの鍋を使ってね。好きなものを串に刺して、好きな方にひたしてから食べるの。赤いお皿の一口大のお肉が今日狩ったダークスノーなんちゃらってやつで、白いお皿のがオーク、黄色いお皿がモウ牛のお肉だよ」
「は!? 超高級肉だぞ!?」
驚いた声を上げたのはギャイオさんだ。ビクッと反応した子供達が様子を窺っている。
だって私達だけ食べるのもなんかアレじゃん? グレンもギャイオさん達に出すのはいいって言ってたし。一応気にするかなって思ってギャイオさん達のダークスノーなんちゃらのお肉は少なめにしてある。
〈せっかくセナが用意したのに、いらないなら我が食べるぞ〉
「……ありがとうよ」
ニヤニヤ顔のグレンのセリフで意図を察したらしい。
一度、食べ方を見せ、後はお任せ。
「熱いからヤケドに気を付けてね」
「「「「「「はーい!」」」」」」
とっても元気なお返事である。次の瞬間には「おいしー!」と叫び声が聞こえてきた。
久しぶりなチーズフォンデュはめちゃウマ。ジュードさんが作ったトマトスープとも相性バッチリ。ダークスノーなんちゃらは……マジで美味い。お肉は柔らかく、脂は甘い。口の中で解けていく……っていうことはこういうことなんだと実感した。
功労者である精霊達やネラース達、パパ達にも食べさせたい。ローストビーフならぬロースト鹿なんてどうだろうか?
食事中、私は何回もギャチョー君達とギャイオさんにそんなんで足りるのかと確認された。大丈夫です。回転寿司で十皿以上食べていたので、成人女性の中ではかなり食べる方であります。
三種のお肉と野菜で、総重量四キロ以上。子供達はちょっと少なめでも三キロ以上。さらにスープと山盛りのパンもあったのに、全員ペロリと食べきった。なんならガルドさん達とグレンはお肉と野菜をおかわりしていた。胃袋ヤバくない??
子供達は「おなかいっぱいで苦しい」なんて言ってるけど、まず食べ切れることがすごいと思います。
夜、子供達が家に帰った後、ギャイオさんと交渉し、全面的に私の要望を通すことに成功。素材をタダであげる代わりに冷蔵庫と冷凍庫を好きなサイズで好きなときに好きなだけ作ってもらえることになった。ジィジに頼むと職人さん達が萎縮しちゃうし、払おうとしてもお金受け取ってもらえないんだよね。
「手間を考えても素材のが高ぇんだけどな……」
「そう? この先、私の注文数によっては素材の値段を超えることになるんだよ? 私の方がお得じゃん」
「…………んまぁ、そうなることを願ってるわ」
なんか言い方が解せないんですけれども。契約書を交わしたから撤回はできない。私的には交渉は大成功だからよしとします!
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