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15章
閑話:神界side
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ーー同時刻。
前日にセナがクラオルにカラオケの話をしたことで、クラオルからガイアに報告がいき、神達はそれぞれセナの様子を神界から覗っていた。
事の発端は転生時に音楽再生のスキルを望まれたこと。好きだと言っていたし、度々歌っていたことに起因する。お気に入りであるセナのために日本の神に聞いたものの、〝カラオケの機能〟が多すぎて作成に時間がかかってしまったことと、ソレが出来る環境がなかった。それ故にこのタイミングとなった。
エアリルは自信なさげに、アクエスは少し緊張気味に、イグニスはワクワクと、ガイアは微笑みながら、ヴィエルディーオはインプと共に、セナがカラオケルームに入るのを今か今かと待っていた。セナの反応をつぶさに確認したかったからだ。
それぞれ別の場所にいるのに、映し出されているのは同じ光景である。
セナが全員分のお小遣いを渡したところで、神達はそれぞれ反応を示した。
「はぁ……セナさんってば優しいんだから」
「やはりセナだな」
「流石妾の癒し」
「ふふっ。セナさんは変わらないね」
「ヒャーッヒャッヒャ! ジャルも困惑しておるの」
「イーッヒッヒ! そうですねぇ、まさか従魔の分まで用意しているとは」
セナに甘い四神はいいように受け取り、また一つセナの好感度を上げる。ヴィエルディーオとインプはいつも予想外のことをしでかすセナが興味深くてしょうがない。
セナはガルドの咎める声をスルーして、小走りでカラオケルームに入った。
部屋をキョロキョロと見回すセナは一瞬小首を傾げたものの、すぐに破顔した。
ーー「まぁいいや。歌って歌いまくらねば! ふふふっ。まずはどの曲にしようかな~」
そう楽しそうに言いながらセナは音楽再生アプリのスキルをいじっている。
イントロが流れてもいじり続けた次の瞬間、セナの心の声が聞こえた。
ーー(おおおお! マジなカラオケだぁぁぁ! この重低音よ! パパ達ありがとう! 大好き!)
大好きーーそのセリフで神達は揃って満面に喜色を浮かべた。
その言葉だけで面倒な仕事も頑張れてしまうのだ。
セナの心の声は聞こえるときと聞こえないときがある。それはセナが無意識に選択していると神達は認識していた。
肝心なことが聞こえなくてジレったく思うこともあるが、指摘なんぞしてしまえば全て聞こえなくなってしまうことはわかりきっている。貴重な心の声なのだ。
そのままセナは笑顔で歌い始めた。
神の間に現れたガルド達と話している間も神達の視線は映し出したセナにあった。
しかし、そこは神。彼らにはキチンと指示やアドバイスも出す。なぜなら、セナのためだからだ。
神との会話を済ませたガルド達はそれぞれの目的のため、バラバラに飛ばされていった。
ガルド達を送った神達の目は再びセナを注視した。
そのうち踊り始めたセナを見て、神達は息を合わせたように目を丸くする。それは普段のセナとは違った愛くるしさを放っていた。
「「「「あぁ……可愛い」」」」
「ヒャーッヒャッヒャ! ほんに楽しそうじゃの」
「イーッヒッヒ! あのライトも用意しておいて正解でしたねぇ。この様子なら使ってもらえそうです。イッヒッヒ」
四神から同じ言葉が零れたとき、ヴィエルディーオとインプは嬉しそうに笑っていた。
「おお? その曲は二回目じゃの」
「へぇー、日本の言葉ではないものも歌えるんだね」
「わぁ……すごい早口。噛まないなんてセナさんすごい!」
「ん? さっきと声が違うな。歌によって変えてるのか……」
セナが曲を歌う度に神達からは感想が漏れる。
頭を振り回していたときも、涙を流していたときも、〝懐かしさ〟や〝嬉しさ〟、〝楽しさ〟に〝幸せ〟とセナの心の中はよい感情が溢れていた。それによって神達は取り乱すこともなく、見守っていられた。
途中、没頭するあまり、報告に来たジュードを「今いいところだから、しばし待て」と待たせたり、コルトに対して反応が遅くなったりすることもあった。
セナに夢中の四神は気付いていなかったが、ヴィエルディーオとインプはグレンとガルドが驚いた様子も見ていた。
「ヒャーッヒャッヒャ! タイミングが悪かったのぅ。ほんにセナは面白い」
「いつものセナ様からは想像できませんからねぇ。イーッヒッヒ」
「じゃがガルドに言っておかぬと勘違いするやもしれんの」
「ふむ。それは困りますねぇ。後ほど呼びましょうかね。イッヒッヒ」
そう話していた二人はガルドが教会を訪れるのを待ち、自身の空間にガルドを呼び出した。
ヴィエルディーオは全てを話すような野暮なことはしない。関係に水を差しかねないからだ。したがって、「セナは嘘はつかぬ」や「己の直感を信じろ」など、内容はとても簡潔なものだった。
ガルドを送り返したヴィエルディーオとインプは再びセナを映し出し、セナの歌声をBGMに仕事に着手した。
地上で一日が経過しても、セナはまだ歌い続けていた。食事はちょこちょことつまんでいるものの、眠る気配はない。
そのことを心配しつつも、四神はそれぞれ秘書の役割を担っている眷属に焚きつけられ、渋々仕事を再開させた。
カラオケを作ったのは大成功だった。セナの様子を見る限り、神達全員がそう思うのに充分な成果だと言えるだろう。
仕事始めに苦い表情を見せた神達は一転、流れ続けるBGMに一様に朗らかな笑顔を浮かべていた。
「はぁ……この曲もいい歌だよね」
「……そうですね。こちらの確認もお願いいたします」
「ゲッ! これ面倒なやつじゃん」
「ヴィエルディーオ様がエアリル様が適任であるとおっしゃっておられました」
「むぅ……しょうがないか。僕パパだもん。頑張るよ」
「…………こうも機嫌がいいと若干の気持ち悪さを感じますね……」
いつもなら手を付けるまで時間がかかる案件も今日は文句も言われない。
エアリルの補佐をしている眷属の最後の呟きは機嫌よく仕事をこなすエアリルには聞こえていなかった。
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