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15章
観光地と化す城
しおりを挟むキヒターの教会に泊まった翌朝、聖泉のところにみんなを連れて行って朝ご飯を食べた。
これにはスタルティとアチャがポワポワと浮かぶ精霊の子達の光源に感動していた。
ご飯を食べたら行動開始。
気になっていたシルキーの髪の毛を私が切り、プルトンが髪の毛をまとめる。隠れていた顔は中性的な美人さんだった。
おばあちゃんがボロボロなブカブカワンピースをメイド服に変えていたから、これから女の子に成長しそうな気がする。
ジィジの私兵が住む家の建築が今日から始まるため、すっきりしたシルキーとジィジと共に王都に戻った。アチャとスタルティは教会でお留守番だ。
シルキーに家の説明をすると《任せて》と一言残して姿を隠した。
ちょっと楽しそうだったから気に入ったのかもしれない。
職人達による建築が始まったら、サルースさんに任せてジィジは自国へ、私達は教会へ戻った。
そこからは教会の像の修理、精霊の国への顔出し、タルゴー商会やデタリョ商会とのやり取り、作り置き料理の大量生産……と、忙しく動き回っていた。
ジィジはジィジで自国と行ったり来たり。
その間、教会ではスタルティのための勉強会が開かれ、ガルドさん達からは冒険者としての知識や戦い方、ニキーダからは薬草や魔道具についての知識、アチャから簡単な料理の作り方のレクチャーを受けていた。
◇ ◆ ◇
やっと少し落ち着いたので、今日はガルドさん達も一緒に少なくなった食材を買いに出てきた。
まず向かったのはカリダの街。最初のころにお世話になっていたお店を中心に買えるだけ買わせてもらう。
それでも人数が増えた今だと心許ないので、王都にやってきた。
『主様、まだ買うの?』
「うん。特に野菜はシュグタイルハン国もヴィルシル国も少なめだったから……ありあまるくらいでちょうどいいんだよ。どうせ食べちゃうし」
『なるほどね』
――「セナー!」
「ん?」
後ろから呼ばれて振り返ると、懐かしい人達が手を振りながら駆け寄ってきた。
「おおお! ヤーさんだ! 久しぶり~!」
「おう! 久しぶりだな!」
「セナ様、こちらの方々は?」
「カリダの街でお世話になったヤークスさん達だよ。面白い依頼に行きたいって言ったら、スライム討伐に連れて行ってくれたの」
「なるほど。お知り合いなのですね」
知らない人物の登場に怪しんでいたジルは知り合いだと知って肩の力を抜いた。
相変わらずちょっと汗臭い。【クリーン】をかけて紹介する。
ヤーさんはガルドさん達がSランクパーティであることを知った途端、緊張して姿勢を正した。
ガルドさん達も顔が引き攣るくらい、ヤーさんの強面の凶悪さが増してるのがちょっと面白い。
「ヤーさん達は今王都で活動してるの?」
「いや、今回はロガス様の護衛で来ただけだ。兄に挨拶ついでに噂の建物を見てきた」
緊張から固まってしまったヤーさんの代わりに答えてくれたのはフォスターさん。
「噂って?」
「知らないのか? 見たこともないデカい建物が建ったんだ。ここからでも少し見えるぞ。……アレだ」
フォスターさんが指さした先を見てみれば松本城の天守が。
「マジか……噂になってたんだ……」
「すごかったよ! 中には入れなかったけど、近くで見たら大きくてさ! 職人っぽいのが出入りしてたから、別な建物が増えそうなんだよ! きっとそれも珍しい建物だよ! あたし達以外にも見てるやつらがいたけど、聞いていたほど混んでなかったね」
「ハハハ……そうなんだ……」
まさか噂になって観光地みたいになっているとは……
興奮するガルダさんに私は乾いた笑いでやり過ごす。
そんな私を見てフォスターさんは察したみたいで、小声で確認された。
さらにフォスターさんは「兄から聞いたが、あの邸を手に入れようと貴族が動いているらしいから気を付けろ」なんてフラグになりそうなことまで教えてくれたよ。
ヤーさん達と別れた私達は真っ直ぐネライおばあちゃんのお店へ。
頼んでいたものを受け取ると、ガルドさん達は目を丸くした。
「お、おい! これ俺達のなのか?」
「うん! 似合うと思って」
ジルとガルドさん達が試着しているのはグレンに作ってもらった軍服と同じもの。
鼻血がでそうなくらい五人とも似合っている。
リアル二次元、最の高です!
「直しが必要なところはあるかい?」
「ううん。流石おばあちゃん。デザインは完璧! ガルドさん達は気になるところある?」
「い、いや、見た目の割に動きやすいが……」
「それなら大丈夫だね。おばあちゃんありがとう! 着替えて大丈夫だよ」
私が言うと、何か言いたげなガルドさんをジュードさんが引っ張っていった。
「こちらこそ、作っていて楽しかったよ。また何かあったら言っておくれ。ところでセナちゃん、王様に会ったかい?」
「ドヴァレーさん? 帰ってきてからは会ってないかな?」
「昨日、お城から使いの人が来てね。セナちゃんを知らないかって聞かれたんだよ」
「そうなんだ。じゃあこの後行ってみるね」
「そうしてくれると助かるよ」
いつもの服に戻ったガルドさん達とお店を出てお城へ向かう。
ネライおばあちゃんは私達が見えなくなるまでお見送りしてくれた。
「おい、セナ。あの服はなんだ?」
「ガルドさん達ちゃんとした服持ってないって言ってたから、ネライおばあちゃんに頼んだの。デザインは私の趣味! グレンも同じやつ作ってもらったんだ~。やっぱりイケメンが着るとサマになるよね。わわっ!」
笑顔が隠せない私に諦めたのか、ガルドさんに頭をクシャクシャされた。
ガルドさんに《ちょっと! せっかくセットしたのが崩れたじゃないの!》なんて文句を言いながら、乱れた髪をプルトンが直した。
そんなやり取りをしながら王城へ着くと、すぐにブラン団長の部屋へ通された。
ジィジが言っていた呼び出しの件で私を探していたらしい。
明日はジィジ達も一緒に登城しなくちゃいけなくなってしまった。
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