転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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15章

攻略するママ

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大変お待たせしました。
ストーリーの続きになります。
感想にて「待っている」と言って下さった方々、ありがとうございます!
むちゃくちゃ励みになります。


--------キリトリ線--------


 朝ご飯を食べてから全員揃ってお城へ向かうと、応接間には王妃にロンヌ君、アーロンさんやブラン団長達、さらにカリダの街の領主であるレスリーさんまで集合していた。
 相変わらずのアーロンさんには開口一番におやつを求められた。

「これは?」
「キャロットケーキ。キャロの甘い焼き菓子だよ」
「ほう! キャロも菓子になるのか!」
「ありがとうございます。ガルド殿方も普段通りで大丈夫です。早速で申し訳ないですが、本題に入らせてもらいます。今日来ていただいたのはセナ殿への報告のためです。あの土地を浄化してもらいましたが……」

 ドヴァレーさんが説明している横で、キャロットケーキを食べる手を止めないアーロンさんは自分の分を食べ終わった瞬間、ススッとまだ手が付けられていないドヴァレーさんのお皿と自分のお皿を交換した。
 当人は話すことに夢中で気が付いていないけど、それを見ていた他のメンバーはアイコンタクトを取り合い、説明が終わるのを待たずに食べ始めた。

 説明は端的に言うと、自由が好きな私がキアーロ国に属していると思われないように、行動しやすいように……ここ王都の土地とは別に、シュグタイルハン国の王城で使っていた部屋、ジィジの国のお城の部屋、プラスしてカリダの街の家……と、私のを増やしたらしい。
 ドヴァレーさんの言い方から、他国に対しての言い訳的な面もありそう。
 カリダの街は宿舎だと気を遣うだろうし、ジィジ達やガルドさん達のことを考えて、新しく造ってくれたんだって。
 この説明のためにレスリーさんは来てくれたみたい。

「カリダの街はブランたっての希望で、第二騎士団の宿舎にほど近い場所になりました。留守時の安全性は高いと思います」
「えっと……うん。それは大丈夫」
「そうですか。では、何か疑問点はありますか?」

 疑問ねぇ……シュグタイルハン国はアーロンさんのお城より、イペラーさんの宿〝憩い亭〟の方が好きだったりするんだけど、これは普通に泊まっちゃえばいい話だもんね。
 別にここの土地を返還したところで私自身は全くもって困らないんだけど……せっかくインプが私好みの沖縄民家を作ってくれたから、それは言わない方がよさそうだし……

「ん~、特にないかな? ジルはある?」
「そうですね……セナ様の家を狙っている貴族がいると聞きましたが、ドヴァレー陛下はご存知でしょうか?」
「それは問題ないわ。ね、デラちゃん?」

 ジルはまっすぐドヴァレーさんを見つめて問い掛けたのに、反応したのはニキーダだった。
 同意を求められた王妃はフォークを置き、口元をナプキンで拭いてから頷いた。

「はい。ニキーダ様からお聞きしたのでお茶会を開き、わたくしの友人の方々に伝えて手を打ちました。ニキーダ様はセナ様の母ですもの。えぇ、わたくし達が手出しなどさせませんわ」
(え……ドヴァレーさんじゃなくて王妃なの?)
「もし手を出してきたら、遠慮なくやっつけていいらしいわよ」
「えぇ、えぇ。もちろんです。ニキーダ様の敵はわたくし共の敵ですわ」
「わーぉ……」
「……まぁ、そういうことなので安心してください」

 ドヴァレーさんはそう言って乾いた笑いを浮かべた。
 なんかいつの間にか王妃、ニキーダに心酔してない? ニキーダも洗脳スキル持ってるの? 安心できる要素はどこにあるの?
 ニキーダに顔を向けたけど、微笑まれただけだった。

「さて、私も……え? 私のは?」
「終わったようだから聞いてもいいか?」

 問いかけたドヴァレーさんをスルーして、待ち構えていたアーロンさんが話しかけてきた。

「ん? なーに?」
「私のケーキは? 誰が食べたんですか?」
「あの黒や赤の建物はなんだ? 見たことがないぞ」
「あぁ、あれね……」
「え……無視ですか? アーロンですよね?」
「旦那様うるさいです。今はアーロン陛下がセナ様と話していますのよ」

 ケーキがなくなっていることに気が付いたドヴァレーさんに王妃がピシャリと言い放つ。
 しかも「大体あなたはセナ様に幾度となく助けられているのに、感謝の気持ちが足りません!」なんてお説教が始まってしまった。
 これは触れたら巻き添えをくらいそうだから放っておこう……
 他のメンバーも思うことは同じなのか意図的にそちらに目線を向けていない。
 触らぬ神に祟りなしってね!

「あれは私の故郷の建物だよ。インプが職人さんに依頼したらしいから、細かいことはわからない」
「インプ……あの男か。中はどうなっている?」
「どう……? 木造建築だけど……説明は難しいな。見に来る?」
「おお! 明日でもいいか?」
「別にいいよ~。来客用のホテルっていうか宿だし」
「セナの家じゃないのか? 黒じゃなくて赤い方か?」
「それとも別だよ。赤い建物は……集会所みたいな感じ?」

 パパ達のことは言えなくて適当に言ったけど、アーロンさんは気にしてなさそう。
 その後も続いた王妃からのお小言をくらったドヴァレーさんは大人しく、明日希望者は見学することに決まった。



 家に戻ってきた私は、早速ニキーダに王妃が言っていた件について聞いてみた。

「ふふっ。元々デラちゃんの相談に乗ってあげてたのもあるんだけど、これよコレ」

 ニキーダが取り出したのは見覚えのある直径五センチほどの丸型の容器だった。
 
「これって……しもやけ用の軟膏だよね?」
「そうよ。手足の指先が冷えて眠りにくいって言ってたから、温まるコレを試させたの。あと、もう一つ。フローラルウォーターのおかげもあるわね」
「フローラルウォーターって前にニキーダに渡したやつ?」
「そうそう。あれを少しわけてあげたの」

 精霊達が作ってくれた卓上蒸留器を試したときのやつか。
 お試しだったから、そんなに量はなかったハズなんだけど……

「それがなんで王妃のお茶会の話になるの?」
「ふふふっ。女には女の情報網があるのよ。王妃であるデラちゃんや自分の妻のお気に入りに手を出したりしないでしょ? それぞれの貴族にも繋がりがあるから、あることないこと噂されたり、物が手に入らなくなったり、行動が制限されたり……最悪、報復……なんてことになったら困っちゃうじゃない?」
「あぁ……なるほど」
「話題になったら手に入りにくくなるだろうから、ってことで優先的に売ることにしたの」

 つまり、私に害を及ぼしたら、しもやけ用の軟膏やフローラルウォーターが手に入らなくなるってことか。
(この世界にも冷え性はあるのね。それより…………完全に掌握してるじゃんか……ママん……)

 さらにニキーダは「こんな安上がりで済むなんて、世の中何が役に立つかわからないものよねぇ」なんて笑っている。
 うん。現地で買えば、しもやけ軟膏は一つ銅貨五枚で買えるもんね……
 ただ、輸出用に温まる効果を特化させ、〝ジャレッド・ジュラル認可のニキーダ印〟を付けて金貨二枚で売るらしい。
 ぼったくり過ぎじゃない!? って思ったけど、一般的なものより効能が高いことと、雪族のおばあちゃん達が儲かるシステムみたいだから何も言うまい。
 ニキーダいわく、「わざわざ配合変えるし、セナちゃんを利用しようとした前科があるドヴァレーだからいいのよ」だって。
 表面上は仲いい感じだけど、信用しきってはいない感じかな?

 そしてタルゴーさんにも送ったそうで、「カルちゃんの興奮具合が面白かったわ」とのこと。
 お礼の手紙が分厚かったらしい。
 それは容易に想像ができてしまった。
 きっと〝ですわ〟のオンパレードだったに違いない。


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