上 下
493 / 538
15章

最終防衛ライン

しおりを挟む


 朝早く、クラオルに叩き起こされた。
 ガイにぃから「全員でパパ達の像がある祈りの間へ来て欲しい」と連絡が入ったらしい。
 眠気まなこのまま像のある祈りの間に向かうと、すでにシルキーやスタルティを含めた全員が集合していた。ガルドさん達はベンチに座って頭カクカクさせているけど。

 いつも素通りか裏口を使っていた私は久しぶりに像を見上げて違和感に襲われた。
(あれ? パナーテル様じゃなくて……おばあちゃんになってる?)
 作ったハズのパナーテル様の頭部が明らかにボヤけている。
 私は本人にあったことがあるから、多分、おそらくおばあちゃんだろうと雰囲気でわかる程度。
 一度気になると気になって仕方ない。
 なるべく早く他の像と同じようにハッキリとした顔立ちにするべく、直そうと心に決めた。

 全員で祈りを捧げると、エアリルパパの声が聞こえて神界へ。
 花畑にはパナーテル様以外の神様が集合していた。
 久しぶりの対面だからか、パパ達を落ち着かせるのに一苦労。

「ヒャッヒャッヒャ。これこれ、落ち着かぬか。スタルティは初めてじゃろぅ」
「あ、そうでした。セナさんに会えたのが嬉しくてつい……」

 おばあちゃんが揉みくちゃにされていた私を腕の中に避難させる。
 おばあちゃんの言葉で気が付いたエアリルパパが「まずは自己紹介からですねと」順番に神様ズを紹介。
 呆然としていたスタルティは驚きつつも礼儀正しくしっかりと自身も名乗った。

「ずっと一人眠らせていたけど、流石に今回は知らせた方がいいという話になったんだよ。目撃することもあるだろうし、何よりセナさんが気にしていたしね」
「なるほど。目撃って?」
「それはこれから。まずは場所を移そうか」

 ガイにぃがパチンと指を鳴らして移動した場所はいつものラウンジじゃなくてガゼボのある草原だった。

「説明の前に。セナさんは以前、ダンジョンで手に入れたコレを覚えているかな?」

 そう言うガイにぃの手の上には見覚えのあるものが乗っていた。

「ん? んん? スライムの核にそんな色のあったっけ??」
『主様……覚えてないの? ゴーレムよ、ゴーレム! 大きさが全然違うでしょ!』
「あぁ! ゴーレムね! そういえばそんなこともあったね」
 
 すっかりさっぱり忘れてたよ。あのときはガルドさんとちょっと気まずくなっちゃったんだったっけ。
 ガイにぃに言われるがまま核に魔力を流すと、以前ダンジョンで試したようにゲームに出てくる巨大な岩の人形と化した。

「やっぱりこの形になったね」
「形がどうかしたの? ってまさか……」
「ふふっ。正解。ちょっと調べたらいろいろ便利そうでね、今回家を作るのにあたってコレに警備させようと思ってたんだ」
「マジか……」

 ただでさえ超チートで一般的な家から超越しているのに、それにゴーレムがプラスされるなんて……

「な、なんかとっても物騒な家ね……」
「そうかな?」
「インプのトラップ城だけでも充分な気がするよ……」
「ヒャーッヒャッヒャ! あれは楽しんでいたからの。じゃが、セナは王都よりカリダの街の方が好きじゃろ?」
「うん」
「じゃと思うたから似たモノを作った。セナが手に入れた核の部下のようなものじゃな。だが、少々問題があっての……」
「問題?」
「あくまでもゴーレムだからね。力仕事は得意でも細かい作業は苦手なんだ」
(あぁ……なるほど。私のイメージも関係してそうだけど、人工生命体アンドロイド人造人間ホムンクルスとは違うってことね)

 ガイにぃが言わんとしていることがわかった。
 たしかに岩の人形であるゴーレムがゴッツゴツの大きな手で細かい作業……例えるなら、裁縫なんかできたら驚きだ。それはそれで見てみたい気もするけどさ。

「それで僕達はコレをいつお披露目するか迷ってたんですけど、シルキーをキヒターが連れて来たのでちょうどいいと思ったんです」
「ちょうどいい?」
「ブラウニーもそうですが、このシルキーも魔力を糧として存在します。呪淵じゅえんの森の魔素に晒され続けたこのシルキーは妖精の力が著しく弱っているんです。それもセナさんのところにいればすぐに回復できるでしょう。さらに! この子はこのゴーレムとは逆に、力仕事は苦手ですが細かい作業が得意なんです」
「つまり、得意不得意を補い合うゴーレムとシルキーに警備させようと?」
「はい!」

 ガイにぃの代わりに答えたエアリルパパに確認を取ると、満面の笑みで頷かれた。

「マジか……ま、まぁ、ジィジ達の安全性が増すならいいんじゃないかな?」

 もう決定事項なら私が言ったところでどうにもならないだろう。
 ジィジが驚いてないところを見ると、聞いていたんだろうしね。

「通常ならセナさんが疑問に思っていたようにに憑くので契約は必要ないんですが、契約すればセナさんの家を管理できるようになります」
「あぁ、そういうことね。全てってことはキヒターの教会も?」
「はい。ができるので遊びに行けるようになりますね」
《本当ですか!?》

 エアリルパパの言葉にパッと顔を上げるキヒター。
 これは契約確定だね。名前考えないと……家事妖精……メイド……かせ……あ、でも女の子とは限らないのか。ヤバい。アレしか頭に出てこない! そしたら……

「うーん。ゾーノ……ってどうかな?」
《……ゾーノ……!》

 嬉しそうな声色で復唱したシルキーが発光し、無事契約が完了。
 ホットプレートの製作者であるゲーノさんと名前が似ちゃったけど、一度アレを思い浮かべたら、もうそれしか頭に浮かばなかったから許してもらいたい。

《オレ、キヒター!》
《……ゾーノ……よろしく……》

 喜ぶ二人のやり取りを見ていたおばあちゃんが笑いながら指を鳴らすと、ゾーノの服が可愛らしいメイド服へと変わった。
 それを見たキヒターが《似合ってます!》と褒め、ゾーノは照れている。
 うん。仲よきことはいいことよ。

「セナ、こっちの核にも魔力を流してくれ」
「はーい」

 アクエスパパに言われて、おばあちゃんが作った小さいゴーレムの核に魔力を流した。
 パパの説明によると、ダンジョンで手に入れた核は一番大きく、一番機能を兼ね備えた王都のあの家を護るそう。
 ただ、四、五メートルはあるから、普段は隠れていて、その代わりに二体の一,五メートルほどのチビゴーレムが巡回するんだって。
 カリダの街の家もチビゴーレムが警備に付くらしい。

「ゴーレムの仕事は敵の追い返しと排除じゃ。自爆してでも護るようにしてあるから安全じゃぞ。あとは……力仕事の手伝いくらいはできると思うぞ」
「え……ちょっと待って。自爆!? 安全じゃなくない!?」
「敵を滅するにはよいじゃろう? まぁ、わらわ達の力も注いであるからこのゴーレム達はなかなかに強い。最終手段というやつじゃ!」

 得意気に微笑むイグねぇに顔が引き攣る。

「そ、その機能はいらないんじゃないかな? 街に被害が出そうだし、ゴーレムが可哀想じゃん」
「はぁ……セナは優しいのぅ。流石わらわの癒し」

 デレっと相好を崩したイグねぇはおばあちゃんの腕の中から私を抱き上げ、頭にチュッチュとキスを落としていく。直す気は……なさそうだ。
 イグねぇが強いと言うからには事実強いんだろう。爆発なんて怖いことが起こらないことを祈るしかない。
 

しおりを挟む
感想 1,797

あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。