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第三部 12章
閑話:神界side――女神と主神
しおりを挟むセナが怒って男に突撃したとき、無意識に放出した魔力によってヴィエルディーオはようやく、セナの位置を掴むことができた。
地上に住む者が設置した転移魔法陣では距離に限度があると踏んでいたヴィエルディーオ達はセナが活動していた大陸を中心に探していたのだ。
まさか海を越え山を越え、違う季節にある、遠く離れた大陸まで飛ばされているなんて思ってもみなかった。
しかしその場所がヴィエルディーオにとっては問題だった。
「まさかその国におろうとは……あやつは……息災か……」
ヴィエルディーオはどうしようかと思案する。
今天界はセナの行方を躍起になって探す神達によって荒れに荒れている。それは天界だけには留まらず、地上にも影響を及ぼし始めていた。
それぞれ仕事はしているものの、神達の精神的な焦燥によって各地の気候は荒れ、魔物の勢力が上がっている。それによって増えた仕事により、神達はさらにイラだつ。完全に悪循環となっていた。
このままでは異常気象や増えた魔物によって世界が荒れてしまう。
「よもや会わない選択肢はないが……」
しかし、見つけたセナは何かがおかしい。
神眼で調べてみれば、どうやらスキルを使えなくなっているようだった。しかも加護や記憶まで封印されている。
何故こうなったのか……どういう経緯でどう封印されたのかがわからなければ、ヴィエルディーオにすら手が出せない。無理矢理神力を使えば、セナが耐えきれず、壊れてしまう可能性が捨てきれないからだった。
今すぐにクラオル達従魔やジルベルト、ガルド達に教えれば何が何でも会いに行ってしまうだろう。
記憶を封印されているセナは、ある意味セナであってもセナではない。
できることならば記憶を取り戻したセナと会わせてやりたい……が、彼らがセナを想う気持ちを考えると悩んでしまう。
「とりあえずあの子らには教えてやらんとの……」
気が重くともセナのために他神に教えてあげなければならない。
ヴィエルディーオは気を引き締めてエアリル達に連絡を取った。
◆ ◇ ◆
一番の原因となったパナーテルは焦慮に駆られていた。
セナが見つからないのだ。
他神よりも早く見つけなければ……いくらバレない工作をしていても、自身の知らないところで詳しく調べられたらバレてしまう。
他神により、天界は穏やかではない。そのせいで地上も荒れ始めている。その原因の一端が自分にあることをパナーテルは認めたくなかった。
そんなパナーテルを冷めた目で見る眷属も内心焦っていた。
簡単に調べて天狐の下に送ったはいいが、天狐やジャレッドがセナを守るために魔力を纏わせていて、予想外に手出しができなかったのだ。折を見て記憶を甦らせてやろうと思っていたが、パナーテルの封印が強固だったためそれも叶わず。しかもセナはそのままで順応しつつあった。
先日、仕事の報告に来たアクエスはパナーテルに「セナを知らないよな?」と確認していた。
アクエスはとても疲弊した様子で、髪や肌に艶もなく、放つオーラはピリピリと肌を刺し、精神が荒んでいることが一目でわかる風貌だった。
パナーテルは「あ、会わせてくれないのに知るわけないじゃない!」と目を泳がせながら答えていたが、疲れているアクエスはパナーテルの不審さに気付くことはなかった。
眷属はあまりのアクエスの様子に、真実を話そうとしたが……そういう勘だけは鋭いパナーテルに邪魔され、伝えることができなかった。
パナーテルは他神にバレないようにいつも以上に仕事をこなしつつ、セナを探す日々。
眷属は眷属故のジレンマに陥り、あのときの自身の浅はかな考えを自問自答する日々。
二人が共通して思うことは「まさかこんなことになるなんて……こんなはずじゃなかったのに……」ということだけ。
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