転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
164 / 530
7章

スキル取得条件【1】

しおりを挟む


 領主からの呼び出しを拒否したら、冒険者ギルドから「領主がご挨拶に伺いたいとのことです」と、宿に押しかけるかもと言外に伝わってくる手紙が届いた。
 押しかけられるなんてたまったもんじゃないと、冒険者ギルドで会うことになった。

 領主はどうしても直接お礼が言いたかったんだと、お菓子とフルーツを手土産にギルドに現れた。
 フルーツはオレンジだったので遠慮なくもらい、お菓子はクッキーが砂糖でコーティングされたものだった。カリダの街で食べたボロボロクッキーに砂糖コーティングは惹かれなかったので、ギルド職員に食べさせてもいいかと許可を取って、ギルマスに渡した。

 領主は私達をどうこうするつもりはないようで、本当にお礼を言うためだったらしい。
 ひたすらお礼を言う領主に、ジルがまた信者発言を浴びせていて、むしろちょっと申し訳なく思った。



 その後はシュグタイルハンの王都に向かうべく、二日間買い物と減ってしまった軽く食べられる物を量産した。
 パパ達に挨拶しようと思ったけど、クラオル情報ではまだパパ達は忙しいらしく、まともに話せないとのことでコテージのロッカーにお手紙とご飯を入れておいた。

 ニャーベルの街を馬車に乗って出発してから、前々から思っていた疑問をみんなに問いかける。

「ねぇねぇ、スキルってどうやって取得するの?」
『スキル? 主様は何か欲しいスキルがあるの?』
「いや、私は特に思いつかないんだけど、ジルと念話ができたら便利だなって思ってさ」

 私はパパ達から全部スキルをもらっちゃったから、どうやってスキルになるのかがわからない。
 パパ達からの刷り込みでは反復行動でスキル取得になるとしか情報がない。

《そうねぇ……確かにジルベルトも念話が使えたら便利ね》
〈繰り返し行動するとスキルになるが、向き不向きがあるから確実とは言えないはずだ〉
「やっぱりそうなんだ」

 じゃなきゃみんなスキルいっぱい持ってるよね……
 使える魔法の属性によって、取得できるスキルも違うとエルミスとクラオルが教えてくれた。
 魔法の適正があってもセンスが問われるのか、どうやってもスキル取得には至らない場合も充分にありえるらしい。

「念話ってどうやったら取得できるかな?」


 私の質問にみんな揃って首を捻った。

〈念話が使える人間はなかなかいないからな……〉
「そうなの?」
〈あぁ。人間はそもそも喋ることが当たり前だからな〉

 あぁ……なるほど。をしようと思わないのか……便利なのに。
 それなら、頭の中で会話できたら便利だねって話せばできるようにならないかな?
 あれ? そもそもジルって魔法使えるのかな? たぶん風は使えると思うんだけど……ちゃんとした魔法使ってるところ見たことないや。



 お昼ご飯を食べるために、馬車から下りて作ったパラソルを広げると、ジルの瞳が輝いた。パラソルの構造に驚いたらしい。

「ねぇねぇ、ジルはなんの魔法が使えるの?」
「僕は風と闇です。両方ともセナ様ほどは使えませんが……」

 パラソルの骨組みを興味深そうに見ているジルに聞いてみると、申し訳なさそうに答えられてしまった。
 私はパパ達のおかげだから特殊パターンなんだよね。最初から使えてたし、何よりも地球のゲームのイメージの強さがある。

《あら? ジルベルトは光も使えるでしょ?》
「え?」

 プルトンに言われてジルがキョトンと驚いた。
 え? なんで本人が驚いてるの? 
 ジルはステータスを開いて確認したらしく、「ほ、本当にありますね……」と呟いた。
 本人も知らなかったらしい。あれかな? もしかしたら、先祖返りのハイエルフに覚醒したおかげで使えるようになったのかもしれない。

《光魔法の使い方がわからないならウェヌスに聞くといいわ~》
「はい! 使えるのならばセナ様をお守りするチカラにしてみせます!」
「あ、うん。でも一番は自分を大切にしてね?」

 こぶしを握って喜ぶジルに言うと、微笑み返された。
 わかってるかな? 大丈夫かな?

「んと、それは今は置いておいて……ジルは念話ってわかる?」
「念話ですか?」
「うん。頭の中で会話するんだよ」
「自問自答ということでしょうか?」

 他人と話すということが思い浮かばないらしい。不思議そうにコテンと首を傾げながら返されてしまった。
 念話の説明をエルミスとプルトンがしてくれている間に作ったお昼ご飯をみんなに配る。

「なるほど。そのようなことができるのですね。今までの謎が解けました」
「オーク狩りに行ったときに、ギルマスの娘と一緒だったじゃん? ああいうときも念話なら普通に話せるから便利なんだよね」
〈離れていても会話できるしな。セナ、おかわり!〉

 グレンにおかわりを作って渡し、ご飯が進んでいないジルに食べるように促した。
 念話のことを理解してもらうという第一段階は大丈夫だと思う。あとは、ジルにどうやってスキル取得してもらうか。
 みんなで考えた結果、念話で話しかけるということに落ち着いた。



 出発した私達は馬車組とコテージ組に分かれ、私は今ポラルと一緒に裁縫部屋で作業中。
 ポラルは服を作るのに慣れているのか、糸を使ってみんなのサイズを測っていた。
 ジルはネライおばあちゃんが作ってくれた服しか着ていない。以前のときのものはもう着たくないと処分したからだ。
 ダンジョンに入ってから一着が破れてしまったため、今は着替えがない。

「ふふふふふ。これもいいかも! ねぇ、ポラルはブーツも作れたりする?」
〔ハイ! エアリルサマニ、ホン、モライマシタ〕
「ポラルすごーい! そしてパパ素敵!」

 あとで貸してもらおう!
 ポラルにデザイン画を見せ、どれがいいかを相談して、決まったデザインをミシンを使って縫っていく。
 難しいところはポラルが請け負ってくれた。
 二人であーしてこーしてとご飯と睡眠以外はひたすら服作り。
 合間にジルに念話で話しかけることも忘れない。

 エルミスとプルトンがジルにいろいろとアドバイスをしてくれていたおかげか、翌日にはたまにジルに聞こえるようになっていた。
 ただ、たまにしか聞こえず返せないらしいので、このまま繰り返しみんなで念話で話しかけることになった。
しおりを挟む
感想 1,814

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!! もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ! ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。 まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 【5/22 書籍1巻発売中!】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。