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7章
スキル取得条件【2】
しおりを挟む二日後、ようやくジルの服が完成した。
付与ができるハズだと、試してみると成功したので、パパ達からもらった服を参考に付けてみた。
物理・魔法攻撃は“減”にしかならず、修復は付けられなかったけど、“破れにくい”が付けられたので、まぁ良しとしよう!
プルトンいわく、こんなに付与が付けられるのは素材がいいかららしい。私の魔力もどうのこうのと言っていたけど、その辺はよくわからなかった。
完成した日の夜、私は満面の笑みでジルを呼ぶ。
「ジ~ル~。これジルの服だよ!」
「僕の……ですか?」
「そうだよ。ダンジョンで破れちゃったでしょ? ポラルと一緒に作ったんだー!」
「僕なんかのために……ありがとうございます……」
私が渡した服を抱きしめて、ジルは涙を零してしまった。
「ジルは自己評価が低すぎだよ。なんかとか言わないの。家族なんだから。着替えて見せて?」
「はいっ!」
着替えに向かわせて、これからもうちょっと自信が付いてくれたらいいなと思う。
覚醒したせいかはわからないけど、ジルもその辺の冒険者より強いと思うんだよね。
「えと……どうでしょうか?」
「おぉー! 似合う、似合う! サイズとかどう?」
「サイズもぴったりですし、着心地も素晴らしいです。本当によろしいのですか?」
「もちろん! ジルのために作ったからね」
〈セナと同じじゃないか〉
「セナ様と同じ……」
ジルが着ている私と色違いのパーカーを見て、期待の眼差しを向けてくるグレンには悪いけど、グレンのは作っていない。
「ごめん。グレンのは作ってない」
〈ムッ〉
「作るからもうちょっと待っててくれる?」
〈作ってくれるのなら待っている〉
「ありがとね」
ジルはパーカーを気に入ってくれたみたいで、いつになく笑顔を振りまいている。
グレンも欲しがるとは思ってなかったけど、ちゃんと作ってあげよう。
「もう一つの方も着てみてくれる?」
「はい!」
再び着替えたジルの服をペタペタと触って大丈夫か確認していく。大きいかもしれないと心配をしていたけど、自動サイズ調整の付与が上手くできたからかぴったりサイズだった。
「うん。こっちも似合ってるね! 動きにくいとかある?」
「いえ。むしろ動きやすいです」
「それなら良かった」
一応付与はしてあるけど、私が作ったのは防具には見えない。
ダンジョンボスとして出てきたアルマジロの胸当てには自動サイズ調整が付いていなかったため、今着れるとすればグレンくらい。
あの胸当てをジル用に改造して防具も作りたいところ。
◇
二日後、グレンに作ったパーカーを渡すと、私を持ち上げてクルクルと回って大喜び。
こんなに喜んでもらえるとは思っていなかった。今度は二人分を作ってから渡してあげよう。
〈我も揃いだな!〉
「うん。三人でお揃いだよ」
〈我らはショーパンとは違うのだな〉
「うん。こっちの方がジルもグレンもカッコイイと思って」
〈そうか! カッコイイか!〉
男性のショーパンは考えてもいなかったんだけど、ジルはまだしも大人のグレンにホットパンツのような短パンは穿かせたくない。ハーフパンツみたいな長めならいいだろうけど……
誤魔化しながら言った「カッコイイから」の言葉で納得してくれたみたいだからこのまま話を流してしまおう。
早速着替えたグレンがジルと服を見せ合っている姿は兄弟みたい。
ジルは私が渡した日から毎日パーカーとズボンを着用していて、相当気に入ってくれたことがわかる。
今度違うお揃い兄弟服を作ってあげよう。どんなのがいいかなぁ~?
『(こういうとき人化できるっていいわね……)』
『(はい……羨ましいです)』
クラオルとグレウスが寂しそうに小声で話しているのが聞こえてしまった。
ふむ。みんなでお揃いの何かを作った方が良さそう。
私にとってはクラオルとグレウスも大事な家族だ。仲間はずれみたいに寂しくさせるつもりは一ミクロンもなかった。
プルトンとエルミスは何も言っていないけど、二人もグレンとジルを見つめていた。
クラオル達もお揃いなら、常に身に付けられるモノがいい。動くのに邪魔にならないものってなんだろう?
◇
考えながらも再びご飯と寝るとき以外は作業を続けること八日、ちょっと歪ではあるものの甚平と全員分の浴衣ができた。結局、クラオル達獣タイプは法被みたいなベストにした。ポラルの足の穴に苦労したよ。
下駄は作ったけど、二人のブーツまでは作れなかった。
みんなでお揃いのモノを何にするか悩みに悩んでブレスレットに決めた。
ミスリルカイーコとポラルの糸を細いミサンガのように編み込んでいく。
「これだけだとなんか寂しいよね……やっぱりクラオルマークかな?」
試しに小さなクラオルマークを神銀石で作ってみてから気付く。
――これはひいきになるのかな?
私にとってクラオルは特別だ。きっと渡せばみんな喜んでくれそうな気はする。ただちょっと……クラオルばっかりズルいと思うかどうかが心配。
「――と、いうわけで呼びました」
《プルトンではなく儂なのか?》
「客観的な意見が欲しくて」
《ふむ。そうだな……》
エルミスは、クラオルが特別なのはわかっているから僻んだりはしないけど、羨ましいと思うと教えてくれた。
結局、いろいろと案を出し合った結果、私のイニシャルである“S・E・L”になった。こちらの世界の文字ではなく、ローマ字。間の点は、プルトンが《このレベルの宝石はそうそうないわ!》と、絶賛していたダンジョンで手に入ったエメラルドを加工した。
真珠じゃなくてエメラルドにしたのは、真珠がオークのレアドロップだから。オークって思うとなんか嫌じゃん?
本当にコレでいいのかと聞いてみると、コレがいいんだそう。
いいならいいんだけど……と、「みんなを守ってくれますように」と願いを込めて全員分作った。
作業をしている間に四つほど村があったので、各村で一泊だけして通過させてもらった。特に特産品がなかったことも大きい。
その後はポーションを作ったり、ダチョウから鶏ガラスープを作ったりと、製作の毎日を送っていた。
明日の夕方には王都に着けそうな位置まで来た夜、ついにジルから念話で反応があった。
「((ジ~ル~))」
「((セ……セナ様? セナ様っ! 聞こえますか?))」
「おぉー! できるようになったんだね! おめでとう!!」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「これで離れてても話せるね!」
「はいっ!」
私から話を聞いてジルも念話を使おうと、頭の中で私に話しかけるようにしていたらしい。エラい!
ただ、ジルが話せるのは私とグレンと精霊達のみという人の言葉が喋れる人だけだった。クラオル達には届くけど受け取れないという一方通行。
そしてみんないっぺんに話しかけることはできないらしく、個人個人としか話せなかった。
この辺は練習すればなんとかなりそうな気がする。
「今日はお祝いだね! 何食べたい?」
「よろしいのですか? 可能ならば以前食べたオムライスというものをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん!」
ジルがオムライスが好きだとは思わなかった。ケチャップが手に入ったらケチャップバージョンもぜひ食べさせてあげたい!
夜ご飯はリクエストのオムライスとたっぷりさくらんぼのタルトを作って、みんなでスキル取得のお祝いをした。
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