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5章
王都見学
しおりを挟むベーネさんにお見送りしてもらい宿を出る。
「これから合流する場所に向かうんだけど、まだ時間があるから街を観光してから向かおっか?」
「はーい」
パブロさんの案内で平民・冒険者が活動するエリアに向かう。
雑貨やポーションなど道具類エリア、野菜や果物など食材エリア、服飾製品のエリア、木工製品のエリア、武器防具のエリア、鍛冶工房があるエリア、屋台や出店がいっぱいのエリア…
ちらほらと違うお店もあるけど、大体は同じ系統のお店が集まっているらしい。
大きな商会も4つ程あり、王族御用達・貴族御用達・貴族と平民の中間層・平民御用達となっているらしい。
大体を見て歩いたら集合場所に向かう。
「着いたよー!」
目の前の建物を見上げると高級そうなカフェだった。
中に入るとウェイターの男の人の案内で2階の個室に案内された。
「…遅かったな」
キョロキョロと見回しているとブラン団長と目が合った。
「ごめん。ごめん。時間が余ってたから一通り観光して来たんだ」
「…そうか。とりあえず席に着け」
ブラン団長に促されて席に座る。
「そうでしたか。楽しめましたか?」
「うん!色んなお店があったよ!」
「楽しめたのならよかったです」
フレディ副隊長がニッコリと笑ってくれる。
「…とりあえず飲み物でも頼むか。セナは果実水でいいのか?グレン殿は?」
「うん!」
〈我もセナと同じ物で良い〉
「…分かった」
ウェイターさんを呼び注文してくれる。
すぐに飲み物が運ばれて来た。
ブラン団長が注文してくれたのはキウイの果実水だった。
「わぁ!おいしい!甘いけどさっぱり!」
「…気に入って良かった。それは“キーウィ”という果物で最近この国にも入ってくる様になったんだ」
「そうなんだ!これも買いたいな」
「…まだ出回り始めたばかりだから扱っている店が少ない。俺も詳しくはないから宿で探してもらってくれ」
「それだとお金払えないよ?」
「…王に呼び出されたんだ。それくらい良いだろう」
「えぇー…」
「…気にするな。買ったからと言って何かを請求する事もない」
「うーん…じゃあ、甘えちゃおうかな…」
〈((セナ。この場所盗聴されているぞ))〉
「((えぇ!?とりあえずみんなに教えるね))」
〈((その方が良いだろう))〉
「ねぇ。見てー!」
無限収納から紙とペンを出して盗聴されてるよと教えてあげる。
「…それは知っている」
(なんですと!?)
フレディ副隊長が私が書いた下に“話を合わせて下さい。後ほど説明します”と書いたので了承の意を込めて頷いておく。
「なんだー。見た事ないかと思ったのに」
何かを披露した事にして話を流す。
「…謁見は3日後になった」
「やっぱり会うんだね…」
「…あぁ。服装などは普通で良い。ただ荷物は城に入る前に預ける事になる」
「分かった」
(ほとんど無限収納だから関係ないしね)
「…あと謁見の間には主要な貴族もいる」
「うへぇ…」
「…すまないが頼む」
ブラン団長が頭を下げる。
「分かった…」
「私達からの報告は以上です。いい時間ですので、夕食も食べましょう」
湿った雰囲気を払拭しようとフレディ副隊長が提案する。
「…そうだな。セナは何が食べたい?」
「分かんないからお任せする!」
「…グレン殿は?」
〈我は肉が食べたい〉
ウェイターさんを呼んで注文してくれる。
出てきたのはひよこ豆のサラダとひよこ豆のコンソメスープと白パン。
グレンは私と同じ物にラビ・ボア・オークの3種類のステーキ。
(ステーキ食べ比べ…)
オリーブオイルと塩コショウをドレッシングにしてサラダにかけているとグレンも食べてみたいと言うのでかけてあげた。
〈むっ!野菜は食った気がしないから食べて無かったがこれなら美味いな!〉
「野菜嫌いだったの?」
〈腹に溜まらないだろ?〉
なるほど。さすが質より量。
健康のためにも野菜をいっぱい食べさせよう。
ゆっくりとご飯を食べ終わり、宿に送ってもらう。
「…セナ。少し良いか?」
宿の部屋の前でブラン団長が言うので宿の部屋のリビングダイニングに通して、念の為結界を張っておく。
「先程は話を合わせていただきありがとうございます」
全員がソファに座るとフレディ副隊長が頭を下げる。
「それは大丈夫だよ」
「…先に護衛依頼の報酬がこれだ。
そして、今王が不在のため王代理との謁見となる。そして謁見の間でカリダの街の領主の罪状も読み上げられる予定だ」
「ありがとう。王様に呼ばれたんじゃないの?」
ブラン団長からお金を受け取りそのまま無限収納に入れる。
「…呼んだのは王だ。元々俺達と同じくらいに戻って来る予定だったんだが、何かトラブルが起きたらしく戻るのが遅れているらしい。主要な貴族を呼んでいるため日程はずらせない。
おそらく、王がいないためセナが嫌な気持ちになる事もあると思う」
「なるほど。それって普通に対応していいの?」
「…構わない。取り繕わなくて良い」
「分かった」
(王代理か…)
「セナさんは明日、明後日と何する予定ですか?」
「お買い物かな」
「でしたらぜひゴンドラ商会に行ってみて下さい」
「ゴンドラ商会?」
「はい。平民と貴族の中間層の商会ですが、輸入した物やダンジョン産の物を販売しておりますので、セナさんが気に入る物が何か1つはあるかと思います」
「ダンジョン産!」
そうだよ。ダンジョンがあるならそういうお店があってもおかしくないじゃん。
欲しい食材があったらそのダンジョンに籠ろう!
「あ!そうだ!忘れる所だった。3人にプレゼントがあるの」
「「「プレゼント?」」」
「うん。魔道具的な物を作ってみたの。はい!これだよ!」
作ったネックレスを渡す。
(うっ!やっぱりデザインが…まぁ、イケメンが付けたらイケメンオーラで隠れるかもだし!)
「…ありがとう。これが魔道具なのか?」
「ありがとうございます!」
「わぁ!ネックレスだ!」
パブロさんはうさ耳を飛び出させながら嬉しそう。
「うん。防犯ブザーみたいにしたの」
「「「防犯ブザー?」」」
「お守りみたいな?何か本当に緊急事態が発生したらそれに魔力流してね。一応ネックレスで普段使い出来る様にしたんだけど…好みじゃなかったらごめんね」
「…お守りか…」
「お守り!」
「お守りですか…」
3人とも嬉しそうにネックレスを手に眺めている。
しょぼさは大丈夫っぽい。
(防犯ブザーは通じないのにお守りは通じるんだね)
「剣の形なんだね!」
「うん。3人とも騎士だから剣にしたの」
私が説明すると3人とも付けてくれる。
微妙なはずなのになぜか3人が付けるとオシャレに見える。
(イケメンだからマシに見えるかもってちょっと思ったけど、目の前で本当になるとは…イケメンパワーってすごいのね…)
3人とも嬉しそうに大切にすると言ってくれた。
まぁ、気に入ってもらえたみたいで良かったよ!
「…軽いな。これはセナが作ったのか?」
「うん。神銀で軽くて頑丈になるように作ったから、壊れ難いと思うよ」
「「「神銀!?」」」
「うん?そうだよ。神銀の方が魔力浸透力があるって本に書いてあったから」
「…いつの間に作ったんだ?」
「へ?馬車の中で作ってたよ?」
「…炉がないだろう」
「炉使った事ないんだよね」
「…どうやって作るんだ?」
「見せてあげようか?」
「…頼む」
この前作ったネックレスの残りの神銀の塊を出して魔力でコネコネしてみせる。
3人とも口をポカーンと開けて固まってしまった。
〈クククッ。それはセナにしか出来ないやり方だな〉
「へ?そうなの?」
〈まず、他のやつはそんなに魔力が無いし、魔力の制御も出来ない。そんなに柔らかくなる前に魔力枯渇で倒れる〉
「そうなんだ。この方法でしかやった事がないから知らなかった。アクセサリーの魔道具みたいなの作ったの初めてだったし」
「セナさんは何でも出来るんですね」
フレディ副隊長に感心した様に言われたのを皮切りに口々に褒めてくれる。
その後は普通に話してブラン団長達は帰って行った。
夜ご飯の時グレン以外のみんなはご飯を食べていないのでみんなを呼んで夜ご飯のサンドイッチを食べる。
(何買おうかなぁー)
その後着替えてベッドに潜り込むと疲れていたのかすぐに眠りに落ちる。
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