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5章
ゴンドラ商会と染色
しおりを挟む昨日は朝1番にベーネさんにキーウィの実のお取り寄せを頼んでその後はずっとお買い物。
肉屋、八百屋、果物屋、ハーブ専門店、薬草を扱うお店等々…色んなお店を回って今までなかった食材も含め大量に買い足した。
いくら年齢制限が無くても子供が買うと何か言われるかもしれないので、グレンに頼んで白ワイン・赤ワイン・エールを買って来てもらった。
ふへへへ。
昨日の事を思い出してニヤけてしまう。
『主様怪しすぎるわ』
「だって昨日のお買い物で素敵な食材がいっぱい買えたじゃん」
『いくら嬉しくても道の真ん中でニヤニヤしてたら怪しいわ。これから教えてもらった商会に行くんでしょ?』
「うん。あ!グレン次の角を右で」
〈分かった〉
今日も人が多いのでグレンに運んでもらっている。
グレンの足が長さが羨ましい。
子供にして欲しいと頼んだのは自分だけど、身体強化を使って走れないとせかせか足を動かさないと進まないし、人混みに埋もれる。
到着して建物を見上げると、大きい!
木造の建物で壁には細やかな細工がしてあり高級感もある。
「わぁー…」
(カリダの街の領主の家より大きそう…あの家も大きいと思ったけど…)
中に入ると受け付けがあったので受け付けのお姉さんにダンジョン産の物を扱っている場所を聞く。
従業員のお兄さんに案内された部屋には、魔道具に魔物の素材や花など特に惹かれる物がなさそう。
グレンに降ろしてもらい、とりあえず順番に見ていく。
「これは何だ?」
何年放置したんだってくらい錆び付いているネックレスっぽい物が目に付き呟く。
「そちらは幻惑の耐性効果のあるネックレスとなっております」
鑑定をかける前に案内してくれた従業員のお兄さんが説明してくれた。
「なるほど…」
こんなに錆び付いていても商品なのか…
肌荒れしそう…
「特に無さそうだな…あ?ん!?」
瓶の中に透明な黄金色の液体が入っているのを見つけた。
鑑定をかけてみるとなんと“ごま油”!
これは買うしかないし、このダンジョンに行きたい!
「お兄さん!お兄さん!これはどこのダンジョンの!?」
案内してくれた従業員のお兄さんを呼んで聞いてみる。
「こちらは隣国シュグタイルハンのペリアペティのいうダンジョンの街の物でございます」
「これ、あるだけ下さい!」
「えぇっと。こちら変…いえ、少々変わった香りの物ですがよろしいのでしょうか?」
(ごま油のいい香りを変な匂いだなんて!)
「一応匂い嗅いでみてもいいですか?」
「はい。構いません」
お兄さんが瓶の蓋を開けて渡してくれた。
んー!超いい匂い!中華が食べたくなる!
『確かに変わった香りね』
『はい。不思議な匂いです』
肩の上でクラオルとグレウスが首を傾げている。可愛い。
「あるだけ全部買います!」
「…………!かしこまりました。ありがとうございます」
お兄さんは呆然とした後に我に返った。
「他にもみたいのでお会計はちょっと待って下さい」
「かしこまりました」
後は何かないかなぁ?
「お兄さん。これとこれもあるだけ全部下さい。ちなみにこの2つはどこのダンジョンですか?」
真っ黒な唐辛子と緑のこんにゃくを指さしながら言う。
「か、かしこまりました。こちらも先程と同じペリアペティの街のダンジョンです。ペリアペティの街は街の中にいくつかダンジョンがありますので、全てが同じダンジョンかどうかは分かりません」
「なるほど。ありがとうございます。この部屋のはこれだけで大丈夫です。後は他の国からの輸入品を見たいです」
「…っか、かしこまりました」
(一瞬“まだ買うの?”って顔してたな…買うけどね!)
案内してくれた部屋は広く、野菜に果物、服や布、木工製品に陶芸製品と色々ある。
気になった物を鑑定して、紅茶数種類とりんごサイズのさくらんぼにした。
「こちら大量ですので、応接室にご案内させていただいてよろしいでしょうか?」
「はーい」
もう人混みじゃないのにグレンが抱っこで運んでくれる。
応接室に着きソファに座ると紅茶が出される。
鑑定で毒の有無を確認するとなんと高級茶葉の紅茶だった。
「こちらどちらにお運び致しましょう?」
「持って帰るから大丈夫!」
パンパンとマジックバッグを叩いてみせる。
「なるほど。かしこまりました。ただいまこちらに持って参りますので、そのままお待ち下さい」
「はーい」
紅茶を飲みながら待っていると、別のお兄さんがリュックサックを持って来た。
マジックバッグで、中に全部入っているらしい。
「量が多いですので、1種類ずつお渡しいたします」
「はーい」
ごま油、唐辛子、こんにゃく、紅茶、サクランボを順番に出してもらい無限収納に入れていく。
うん。大量。
全部で大金貨1枚と金貨3枚だった。細かいのはまけてくれたらしい。
本当かどうかは分からないけど。
最後にお兄さんに服飾の事を教えてくれそうな優しいお店を教えてもらい商会を出る。
途中で公園みたいな広場に寄ってみんなでお昼ご飯におにぎりを食べる。
食べたら出発して、聞いた服飾のお店に入ると優しそうなおばあちゃんがいらっしゃいと迎えてくれた。
「こんにちは!」
「はい。こんにちは。可愛らしいお嬢さんだねぇ」
ニコニコとおばあちゃんが返してくれる。
「ありがとう!あのね、お洋服の事聞きたいんですけどいいですか?」
「構わないさぁ。何が聞きたいんだい?」
「お洋服を染める時ってどうするんですか?」
「それはねぇ、染色に適した魔物の素材を煮出した汁に付けた後に色落ち防止をかける方法と、染料を魔力で染み込ませる方法と2通りあるんだよ。染料に興味があるのかい?」
「白と黒に染めたい物があって…染める魔物の材料教えてもらえたりしますか?」
「構わないさぁ。そうだねぇ…色を作るのに色んな種類の素材を集めなきゃいけないから最初から集めるとなると大変さね。ちょっとこっちにおいで。見せてあげよう」
おばあちゃんの案内で移動して工房で待つ。
おばあちゃんは工房の奥のドアの中に行ってしまった。
チラっと見えた感じでは大きな桶が見えた。
(染色する水場とかかな?)
おばあちゃんが持ってきたのは紙と1リットル程の瓶に入った黒と白の液体だった。
紙は色と色んな魔物の名前と部位がビッシリと書かれている一覧表。
1色につき最低でも5種類の部位が必要らしい。
「これだよ。ただねぇ、私達は古いやり方なんだよ。他の新しい店はもっと簡単な方法で作っているらしいから参考にはならないかもねぇ」
ちょっと寂しそうにおばあちゃんが笑う。
「これで良ければあげるよ」
おばあちゃんが持ってきた白と黒の液体を手に乗せて言う。
「えぇ!?」
「これも何かの縁さね。その紙もあげるよ」
ニコニコとおばあちゃんが渡してくる。
「えぇ!?良いの?お仕事に必要でしょ?」
「気にしなくて大丈夫だよ。いらないなら無理にとは言わないけどねぇ」
また一瞬寂しそうな顔をする。
「本当にいいんですか?」
「構わないさ」
おばあちゃんがニコニコと渡してくれたのを受け取る。
「ありがとうございます!」
お礼を言うと頭を撫でてくれた。
「私達のやり方は古いけど、魔物の素材を使っているから付与がしやすいんだよ。若い子に興味を持ってもらえて嬉しいねぇ」
ニコニコと私の頭を撫でながらおばあちゃんが言う。
「ねぇ。おばあちゃん。この材料の中で手に入りにくいのって何ですか?」
何匹か私が呪淵の森で狩っていた魔物の名前が載っていたから、それだったら良いなと聞いてみる。
「ん?そうさねぇ…この中だとブラックマンティスかねぇ?」
(おぉ!ビンゴ!)
「それあったら嬉しいですか?」
「そうだねぇ。嬉しいね」
「細切れだけど良いですか?」
「んん?」
「ブラックマンティス持ってます。ただ細切れなんですけど…」
「本物だったら嬉しいけど、あれは呪淵の森にしか生息してないんだよ?」
「うん。ちゃんと呪淵の森で狩ったやつです。見せますね」
無限収納から呪淵の森で1番最初に遭遇したカマキリのカマを出して見せる。
「っんなー!!!」
おばあちゃんは倒れちゃうんじゃないかってくらい目と口を見開いている。
「これあげます」
「ひぇっ!これ本物じゃないかい!受け取れないよ!」
「じゃあこれと交換してください」
おばあちゃんが渡してくれた白と黒の染料と一覧表の紙を見せる。
「いや…そんな…普通に売った方がお金になるんだよ?」
「荷物に入れたままだったので大丈夫です!なので交換してくれると嬉しいです」
「ほ、本当に良いのかい?」
「はい!」
「ありがとうねぇ…これで色が作れるよ…」
おばあちゃんは涙声でカマを見つめている。
「喜んでもらえて嬉しいです。私もこの染料も素材一覧表もとても嬉しいです!」
「そうかい…そう言って貰えると嬉しいよ…」
泣き笑い状態でおばあちゃんが言う。
「染色のお話聞かせてくれてありがとうございました。そろそろ帰りますね」
「こちらこそありがとうねぇ…」
おばあちゃんの服屋さんを出て、ちょっといい事した気分で宿に帰る。
おばあちゃんはドアの外までお見送りしてくれた。
部屋で夜ご飯を食べてベッドに入る。
明日はお城で謁見。
気が重いけど乗り切らないと。
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