婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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 ジョイ殿下はグロリアスの二つ下で23歳、ジョスリン殿下は17歳で、僕より二つも年下の学生だ。今回はジョスリン殿下がウィンストン王都内の学園へ留学に来るのに、ジョイ殿下が視察と銘打ってくっついてきたと言う。

「妹が安全だとわかれば帰るさ!ついでに大変革だいへんかくをしたあちこちを視察して、我が帝国に取り入れられればと思い、やって来た!」
「確かに、色々と慌ただしいですから。安全を確認することは、第一優先ですね」
「まさしく、そうだ!しかし、ウィンストン領に入った時点で確信した!ここは大丈夫だと!」

 ジョイ殿下が言うのも、理由がある。
 ウィンストン王都――旧ウィンストン領は、まだ崖の境界線を保ったままなのだ。

 その崖には、これまでより強固でしっかりとした橋を掛けて馬車でも通れるようにしてあるが、入門検査がしっかりしているおかげで、新王都内の治安はかなり高水準と言っていいだろう。ジョイ殿下の、大事な妹御を預かるのに不足はないと、自負している。

「そう言って頂き、光栄です。皇女殿下が、素晴らしい学園生活を送れると嬉し――――」
「シオン殿。ちょっといいだろうか?」

 ちょいちょいと手招きをされる。殿下の目線の先は、僕と同じ。先ほどから畳み掛けるようにグロリアスに話しかけているジョスリン殿下と、夜中に仄かに照らされた神像のように、怪しげな微笑みを浮かべたまま動かないグロリアス。

「すまないな。ジョスリンは、グロリアスに会うのは初めてで……まさか、こんなことになるとは」
「帝国では、グロリアスは、皇女様にお会いしたことは……」

「吾輩の個人的な知り合いだから、帝城で会ったことはないんだ。とは言え、あやつは大物になると確信していたから、是が非でも縁を繋げたくて、よく酒場で飲んだよ。はぁぁ、ジョスリン……」
「…………念の為、確認ですが、ジョスリン殿下にご婚約者は……」

「ああ、もちろんいる!カベリオン公国の公子でね!ジョスリン好みの顔ではないが、落ち着いて優しい、物腰柔らかなお人だ。小国だが歴史は長く、ジョスリンを幸せにしてくれるだろう婚約なのだが、困ったな、あれではすっかり忘れているようだ…」
「……あまり、お見せ出来ないお姿のような」

「違いない。グロリアスは既婚者だというのに……本当にいつのまにか結婚を……いや、しかし友人の結婚ほど喜ばしいものもないな。ハッ!結婚祝い!吾輩としたことが!吾輩の秘蔵の、音楽再生魔道具はどうだろうか!」
「……殿下、話が逸れてしまいましたね。お気持ちはとても嬉しいですが。ありがとうございます」

 ペチンと額を叩くジョイ殿下をジト目で見ると、気まずそうにきゅっと唇を丸めていた。
 ジョスリン殿下は、背の高いグロリアスをうっとりと見上げ、腕を組み胸を強調しながら話している。

『そういえば、グロリアス様。わたくし、つい最近まで暴徒がいると伺っておりましたの。よろしければ、王都を案内してくださいませんこと?わたくし、こわくて……』
『……………………ジョイ殿下も、皇女殿下の側近も、そこらの貧弱で単純な暴徒などに遅れをとることは無いでしょう。そもそも、ウィンストン王都に暴徒などおりませんが……』

『でも……、念には念を、と言いますでしょう?グロリアス様がいらしたら、どんな粗暴な暴徒も、たちまち逃げてしまうでしょう……』
『ですから、元々いません』

 思わず、スン、となった。

 僕は割と、目つきは悪い方だと思う。怖いと言われることも多い。だからか、ジョイ殿下もぎょっとして引いていた。

「本当に、すまない!妹は、世間知らずの箱入り娘で、これまで我儘が通らなかったことがなかったから……悪気はないんだ。暫くしたら目が覚めると思う!」
「ジョスリン殿下は、これまでああいった様子を見せたことが?」

「………………ないなぁ………………」
「ということは、初恋の、一目惚れ、ということですか」


 スン。

 僕の冷え切った視線に当てられ、グロリアスが身震いをしている。そのままじぃ、と見ていると、皇女殿下をほっぽってこちらにやってきた。

「シオン。そんなに熱く見つめられたら、俺、期待しちゃうけど……」

 僕の銀の耳のてっぺんに、口付けを落として。
 それから額、こめかみ、耳に首筋。グルーミングみたいに、次々と唇で触れていく。こ、こら。そんなことされたら、僕、ドキドキして絆されてしまうじゃないか。

『アチャア……じょ、ジョスリン、部屋へ行こう。我々は、お邪魔だ』
『嫌、嫌ですわ!ああもうっ、お兄様!』

 ジョイ殿下の呆れたような声を他所に、僕はグロリアスにされるがまま。
 でも、グロリアスの首元を引き寄せて、揺さぶるように囁く。

「グロリアス。君は、僕のだからね?」








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