婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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 僕の独占欲を知ったグロリアスは嬉しさとそれを噛み殺すような複雑な顔をして、その晩、熱心に愛を囁き、朝まで僕を手放さなかった。体力……うん、ジョスリン殿下に全く興味を持っていなさそうでホッとした。

 あれだけ強烈な印象を持った女性はいない。どんな男もドキッとするスタイル(僕もある意味そう)。それに男女であれば儀式を受けずとも子供を授かれるから、女性はちやほやされがちだし、僕はなんだか居心地の悪さを覚える。

 でも、だよ。
 グロリアスは僕を選び、僕はグロリアスを選んだ。それだけは、自信を持っていい、はずだ。

 ジョスリン殿下がいかに魅力的であっても、グロリアスは僕を望む。

 男なのに背は高くないし、筋肉もあまり付かない。中性的な顔立ちのせいで女の子に間違われたことは多々あり、そのくせいっぱしの男のように、守られたくない、中途半端なプライドもある。そんな僕をグロリアスが希望しているのだから、彼女が魅力的かどうかなんて関係はない……よね?





 と言い聞かせ、今日もぱんっ、と頬を叩き、気合を入れる。

 僕は地方へ出向き、子供向けの大型遊具施設を作るのだ。グロリアスも意見を出したり、耐久性の確認をしたりと、協力してくれる。僕が出掛ける時は、必ずグロリアスも一緒に同行することになっているし。
 そしてその様子を、ジョイ殿下が視察に、ジョスリン殿下も見学するらしい。

 流石にお仕事なのだから、きちんとしていると……思いたい。



「よし」



 身体を思いっきり遊ばせられる遊具は、何がいいかな。滑り台やロープの網を組み合わせ、どんな巨体が乗っても大丈夫な強度で、かつ、手入れしやすいシンプルな構造で。
 一気に開花するみたいにして、もこもことアスレチック部分が出来る。その横には、全力で走れる広い芝生と、硬い地面で踏み込めるような運動場を作って。

 と、集中して作り上げている間、見学者は後方で簡易的な椅子や机、パラソルを広げてゆったりと座っている。どうも、ジョスリン殿下はグロリアスに話しかけているみたい。ここでは、会話の内容までは分からないので、気にしないようにしなくちゃ……。集中、集中。









『グロリアス様、こちら、帝国で流行りのお菓子なんですの。数が少なくて皆さんには上げられないのだけど、どうぞ、召し上がって下さいまし』
『いえ、結構です。菓子は好かないので』

『では、手軽に食べられるサンドイッチはいかが?これは、わたくしが作らせましたの。材料から一級品ですのよ』
『いえ、結構です。サンドイッチは好かないので』

『まぁ、そうでしたの。では、お茶なら……』
『いえ、結構です。お茶は好かないので』




『ジョスリン!いい加減にしないか。グロリアスは結婚している上、シオン殿一筋の男。いいか、もしこれでグロリアスがお前に惚れたとしても、既婚者の身で他人にうつつを抜かすようなやつは、必ず同じことをするぞ!』


『それはお兄様の意見であって、わたくしとは違いますの。わたくしが妻となれば、よそ見をする方など、この世にいる訳がありませんもの。ね?』

『それはその通りだが!グロリアスはやめておけと言っているんだ!グロリアスとシオン殿に迷惑をかけてはいけない!』

『どうして?わたくし、こんなに素敵な殿方、初めて……。この先、グロリアス様以上の方に、一生お会い出来る気が致しませんわ。お兄様は、グロリアス様以外の、素敵さの劣る殿方に、わたくしを娶らせようと仰るの!』

『ぐぬう、そりゃあ、グロリアスはいい男で、お前の伴侶としても最高だが、既婚者だ!そもそも、お前には公子がいるだろう!』

『あの優しいだけが取り柄のつまらない小国の男より、グロリアス様の方がずっと素敵ですもの。ねぇ、グロリアス様。あ、あら?』










 ふう、終わった。なかなか良い出来の運動施設が出来た。ここで遊んでいくうちに体力がつき、力もつき、バランス感覚も備えられるだろう。

「シオン、素晴らしい出来だったな。帰って報告しようか」

「うん。そうしよう。え、な、なに?」

 ぐい、と腰を引かれて抱き込まれる。大きい身体のくせに、仕草は猫のよう。猫の皮を被った竜だものね、グロリアスは。僕の頭の匂いを嗅いで何してるの?

 ああ、また。グロリアスの、爽やかでいて落ち着くリリーの香りを嗅げば、僕の胸は高鳴るように作られている。

 うう、と照れて顔を隠していると、騒がしい二人が駆け寄ってくる。その反応は全く別々。

「グロリアス様!わたくしが話していたのに、いつの間にこちらにいらっしゃったの?」

「シオン殿、我が帝国に欲しいくらいの腕前だ!なんと素晴らしい!」

「シオン様、わたくし、シオン様とも、もっとお話がしたいんですの。この後、一緒にお茶はいかがです?」

「是非とも帝国に誘致させて頂きたい!お茶会でも開いて、親睦を深めようじゃないか!」




 自然と着地点が同じなのは、兄妹だから?すごい……。
 感嘆と呆れを抱えて、僕は口を開く。

「申し訳ありません、皇女殿下。報告をするまでが仕事なので。帰りは別々になさいますか?」

「ええ、そうしますわ。ねぇ、グロリアス様?一緒に残って下さいますね?」

「まさか。愛する妻と共に帰還します」

 そう言うなり、グロリアスは転移を発動させた。

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