婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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 グロリアスの謎の黒い笑顔も気にせず、ディオンは屈託なく笑った。

「これまで貧弱だったから……恥ずかしい、と思って。不思議なことに、体力が付くほど勉強も進むし、良いことだらけだよ」
「それなら良かった。ディオンは頑張り屋さんで偉いね」

「……兄さん。俺はもう子供じゃないんだから……」

 恥ずかしそうに前髪を撫で付けるディオンは、ちらちらとグロリアスを意識しているようだった。

「ディオンくん。良い心がけだと思う。でも、君の兄さんは君の筋肉が無くったって、愛しているからね」
「……それは、知ってます。言われなくても」

 ディオンは少し拗ねたように口を尖らせた後、僕の片方の猫耳を飾る、髪飾りを見た。

「兄さん、その髪飾り、よく似合ってる。すごく綺麗だよ」
「えへへ……ありがとう。ディオン」

 嬉しいな。お城に向かう時はこの、グロリアスからもらった竜の鱗で作られた髪飾りでおめかしするようにしているんだ。一目で僕が、グロリアスの妻だと分かり、身分証明も不要ということもある。

「む……シオン、行こうか。お父上の所へ」
「……?うん、そうだね。またね、ディオン」

 ディオンは少し拗ねていたようだったけど、どうしてだろう?思春期かな、ついに。







 お父様の執務室に入ると、僕たちを見てパアアッと顔を輝かせるお父様がいた。それに、近衛騎士となったアルフレッドも。

 アルフレッドは最近、ブロディと仲が良い。良く喧嘩をしているのを見る。その会話の中に『シオン様は!』『シオン様が!』と度々僕の名前が出てくるのは、深く気にしてはならない。喧嘩もするけど、飲みにも行っているようなので、ただの仲良しさんだと思って微笑ましく見ている。

 と、それは置いておいて。

「よく来た、シオン!それに、グロリアス様も。実は相談事があって」

 実は、も何もない。お父様はさすがというか、遠慮なく僕とグロリアスを効果的に使える人だ。だから結構しょっちゅう相談を受けるし、それもちょっと心地よいとか考えている僕も僕。ちょうど良い塩梅で仕事をくれるから、良いんだよね。

「今の騎士や傭兵の数が足りなくて、ミニ蛇様をお借りしている状況だが、それでは将来的に不安だろう?全国的に身体能力の高い子供を増やすために、各地に運動施設を増やしたらどうかと思っているんだが、人によって勧める施設概要が違い過ぎてな」

 お父様の元には、企画書が散乱していた。ああ、アスレチック的なものから、だだっ広くて走りやすいサッカーコートのようなもの、騎士の使う本格的な訓練場など、ばらつきがあるね。

 異世界、ニホンの知識もある僕には、それぞれによって育てられる人材が違うことも分かった。
 しかし、公的事業となるため、いちいち地方に合わせるより、同じ仕様書を使いまわし、予算を浮かせたいと。

「んー、でも、子供向けでしょう?お父様、これは僕に任せて!」
「頼もしいな。よろしく頼む。そう言えば、帝国の第三皇子と第一皇女が視察と留学に来ているから、会うかもしれない」
「帝国の?」








 頭の中に完成図を思い描きながら王城を歩いていると、ガヤガヤと騒がしい。

「あー、皇子だ……」
「グロリアス、知っているの?」
「ああ。帝国に住んでいた時、一緒に飲んだんだ」
「どんな仲なの……」

 それを聞く前に、喧騒の方から声をかけられた。

「グロリアス!うわ、グロリアスじゃないか!」

 ルビーのように輝く真紅の髪。瞳もまた力強い鮮明な赤の、溌剌とした男性だった。グロリアスを見て目を見開き、そして隣にいる僕を見て、更に目を大きくしたものだから、飛び出てしまいそう。

「ここで会ったが百年目!違うか!初めまして、グロリアスの良い人だな!?」
「は、初めまして……シオン・ミルヴァンと申します」
「可愛い!綺麗だ!美人と可愛いこちゃんが共存している!ははん、流石のグロリアスもやられたのは納得だ!」

「ふっ、相変わらずけたたましいな、ジョイ。元気そうでなにより」
「ああ!吾輩は常に元気、がモットーだからな!がはは!」

 ジョイ殿下が僕と握手をしようと近づいてくるのを、グロリアスが制する。
 僕もさっと背中に隠れた。初対面、特に大きい男の人は、怖い。どんなに良い人そうでも、身体が言うことを聞かなくなる。

「俺の妻だ、あんまり近付くな」
「は!?グロリアス、結婚したのか!?何故連絡をくれない!」

「今の俺の身分は、元国王の公爵というだけだ。ジョイの貴重なメモリに残すほどでもないと判断した」
「さりげなく馬鹿にしたな?それより、水臭いじゃないか!まったく!出会いは?式はいつ?」

 圧倒的な熱量に、気圧される。さっきまで考えていたことが全部吹き飛んでいくような勢いだった。
 ジョイ・テオ・パルム第三皇子様。あれ、その後ろに……とても妖艶な美女がいる。

「ああ、そうだった。グロリアス、シオン殿。これは吾輩の妹の、ジョスリン・リア・パルム第一皇女だ。同腹の妹でね、可愛がっている!ぜひ良くしてやってくれ」
「ジョスリンと申します。是非、宜しくして頂きたいですわ」

 う、わ、わ。ジョイ殿下の背中から、ドン、と出てきたジョスリン皇女に、衝撃を受ける。初対面で言うのは憚られるが、それにしたって、すごい、爆乳。スイカどころか子供が二人ぶら下がっているような胸を、ボン!と突き出すようにして、派手目の化粧が良く似合っている。

 まるで砂時計のように、腰は細く、お尻は大きく張り出していた。ワインレッド色の髪と瞳で、ジョイ殿下を少し暗めにしたような色味。色っぽい顔立ちは、ジョイ殿下より年上に見えるくらい、大人びて見えた。

 思わず瞬きを繰り返していると、気づいた。ジョスリン殿下が、グロリアスを見て、ほう、と頬を赤く染めていることに。







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