魔王メーカー

壱元

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第三章

第二十二話 後編

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 私は剣を構えなおしてキオーテと向き合った。

「…まさか、ここで貴方と会うなんて」

私が言うと、彼は

「それはこちらの台詞ですよ」と返した。

「…主人も他の同僚の方もみんな亡くなったのに、まだこの城にいらっしゃるなんて」

彼は勘違いをしている。

その「主人」も「同僚の方」も、殺したのは私達なのに。

まだ詳細な情報が出回っていないのだろうか。…いや、そんなのは不自然だ。

だって、「貴族に比べたら情報に疎い」はずの冒険者が集う酒場のコルクボードに賞金首としてデカデカと掲示されていた訳だし。

キオーテは敢えて知らない振りをしている。

その時、先程「沈黙シレンシ」を掛けてきた魔法使いが魔力を溜めながら叫ぶ。

「おい新米! 気を抜くな、そいつは『伯爵殺し』の犯人だぞ!」

「分かってます」

キオーテは穏やかながら、重く、その一言を放つと、深呼吸し、私に向かって笑顔を作った。

「グレアさん、貴女がそんなことをしたなんて、僕は思っていません。だって、語ってくれたじゃないですか、『不幸な運命に苦しむ人を救うのが夢』だって。それに、危険を顧みず僕たちをあの魔物の攻撃から守ってくれたじゃないですか。そんな心優しい方だから、僕は尊敬しているのです。…偶然出会ったのが貴女で良かった。こんな状況ですが、どうかその剣を下ろして、しばし一緒にお話しませんか?」

顔は笑っているが、僅かながら声が震えている。

戦場で敵と向かい合うのが怖いのか? 否、彼は自分の「停戦交渉」の成否次第で自軍の存亡が決まると思って、その重すぎる責任に震えているのかもしれない。

だが、どのみちその心配は不要だ。

「こんな状況でも、敵であり、貴方のお仲間の仇でもある私を尊敬してくださって、信じてくださっているのですね」

私はきっぱりと答えた。

「ですが、私にとって、私のしたことは『夢』への一歩で、それが揺らぐことはありませんので」

そう言うと、キオーテの顔から笑みが抜けた。だが、どこか安心した表情にも見える。

「そうですか」

彼は「乾坤流」のやり方で剣を構え、鋭く私を見据えた。

「なら、仕方がありません。剣で決着を付けましょう」

二人の剣士は同時に動き出した。

クオーテがどんどん加速し、その勢いを維持したまま斬りかかってくる。

間違いない、私が教えた「駿馬」だ。

私はそれを剣で受け止めるが、勢いに押されてバランスを崩しそうになり、一旦距離を取る。

敵は再び「駿馬」で急接近し、しかも今度は足を狙った低い斬撃:「脛打すねうち」を食らわしてくる。

これも辛うじて剣で防ぎ、空中で一回転してさらに後方に逃げる。

十分に距離があるので反射的に魔法を放ちそうになったが、まだあの魔法使いは「沈黙」を継続し、私の魔法を封じるのに徹している。

逆にいえば、少なくともあいつはクオーテとの戦いの最中には「沈黙」によるサポートに集中して、攻撃を仕掛けてくる可能性は低い。

クオーテと一対一。剣対剣。あの剣術試合のリベンジマッチが、図らずもここで始まったということか。

私は定期的に距離を取りながら、続く「駿馬」に乗せた敵の攻撃を全て防ぎきる。そして、相手が不慣れな「駿馬」の使いすぎで疲れたことで出来た隙を突いて「隼斬り」を放った。

敵は辛うじて防御が間に合うが、急な攻撃に対応することで手一杯で、防御に意識の全てを奪われた。

その一瞬の虚を突いて敵の背後を取った。

「乾坤流」、「魂取たまとり」。

クオーテが教えてくれた技だ。

「さようなら」

私は全力で剣を振るった。

血が私の服を赤く染め、頬にも跳ねてくっつく。

死体は力なく地面に倒れた。

これで分かった。

今まで、バセリアのような親しい人も含めたあらゆる人間を殺めるとき、哀しいことに、私は一時的ではあるが何も感じなくなるようだ。

まるで相手にしているのが「人」でなく「作業」であるかのように。

 私は唖然として立っている「沈黙」の魔法使いに「駿馬」で接近し、首を刎ねた。

ふと見ると、さらなる何人かの敵兵が私に気付き、こちらに向かってきている。

遠く、前線の方では両軍が互角の戦いを繰り広げている。

もう一仕事するか、と剣を構えた時、空を大きな何かが横切った。

それは赤っぽく、鷹か何かのようだった。だが、桁外れに大きい。

その正体を見極めようとした時、その口が開いて、何かが落とされ、それは前線の方で爆発した。

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