魔王メーカー

壱元

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第三章

第二十三話

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 突然空中に現れた「赤い鷹」は、口から巨大な火球を吐き出し、前線に落とした。

火球の爆発によって前線は粉々になり、両軍兵士の大半は唖然としている。

刹那、二球目、三球目が今度はジャサー軍の真ん中に落ちる。

見ると、「それ」は空中を旋回しながら、次々に火球を落としている。

そうこうしているうちに、あいつはこちら側に回ってくる。

敵軍兵士もパニックになり、敵意を捨ててこちら側に逃げてくる。

私も思わず走り出した。

だが、間に合わない。

爆風で意識を失った。


















 ゆっくりと目を覚ます。

ぼんやりとした視界に、本来有り得ない光景が飛び込んでくる。

「…ここは?」

私は、深い森の中に居た。

身体はなんともない。多少手足にかすり傷があるだけだ。装備にも異常はない。

私は情報収集のため、剣を手に携えて歩き出した。

 森の地面は硬く、苔むし、木の根や自然の力によってか、かなり凸凹でこぼこしていて、この森が数十、数百年の歴史を経て形成されたものであることを裏付けた。

凹凸おうとつに加えて苔が少し濡れていることもあって、気を抜けばすぐに転倒してしまいそうだ。

足元に気を付けながらしばらく歩いていくが、人間の痕跡は全く見られない。だが一方で、こんな人の手も入っていない豊かな秘境なのに獣や魔物の気配も感じられない。 

そもそも、ここはどこなのだろうか。何故私はここに居るのだろうか。戦場に、つまり草原にいたはずだ。

頭がはっきりしてくるにつれ、疑問が次々に湧きだす。

謎ばかりで心細くなってきた時、ふと地面に見覚えのある「青色」を見つけた。

近付いてみて間違いないと確信した。

キアが教えてくれた「雨の花」だ。

絞ると水が出てきて、私はそれで喉を潤した。

とりあえず、これで新しく二つのことが分かった。

・この森は「デザ村」に近い場所にあるか、同じような環境であるということ。

・半日以内に雨が降ったということ。

貴重な情報を得たが、まだまだ謎は多い。

さらなる情報を求めて歩いていた時、地面から何か光るものが突き出しているのが見えた。

近付いて見てみるとそれは金属製で、人工物のようだった。見えているのは全体の一部らしい。

「何だろう」と掘り出してみた時、私は腰が抜けそうになった。

それは死体の頭だった。

光っていたのは鉄製の兜だった。

嫌な想像が脳裏をよぎった。

まさか、と思って他の凸凹も掘り出してみると、そこには必ず死体が埋まっていた。

信じられない。

この森は戦場を「呑み込んだ」のだ。或いは戦場が森を「呑み込んだ」のか。

どちらにしても超常現象だ。

…もし前者なら、ジャサー城に一刻も早く戻りたい。

戻ってラーラたちの安否を確認したい。

運よく高い崖が見つかったので、城の位置を把握する為に上った。

遠くを見渡すと、一面緑の中に…ジャサー城が突き出ているのが見えた。

一瞬期待に胸を膨らませたのも束の間、今度は思わず目を疑った。

「…は?」

ジャサー城は蔦に巻かれ、「花」が咲いていた。

その光景には見覚えがあった。

雨によって開花する南方の希少種。クリロン城を破壊し、私に退治された「巨人花ジヴォイデフレイン」。

それがいくつも生え、蔦が城壁を締め付け、城は今にも崩れてしまいそうな程に歪んでいた。

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