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第三章
第二十二話 前編
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敵の軍勢は真っ直ぐジャサー城に向かっていた。
木に登ったまま望遠鏡で見てみると、敵の軍勢は前から順に、歩兵、弓兵、魔法使いの部隊で構成されていて、歩兵・弓兵部隊の横には騎兵部隊が、魔法使い部隊の横には数台のカタパルトがついている。それに、規模も大きい。
ジャサー城の方からも同じように軍勢が出てくる。
しかし、こちらに魔法使いとカタパルトはなく、人数も相手の四分の一にさえ届かないようだった。
普通に戦えば勝ち目はない。
両軍が足を止め、対面する。
明らかな戦力の差にも関わらず、相手方は律儀にも、代表者を出してきた。
さすがにここまで離れていると音は聞こえないし、読唇も出来ないが、この状況で相手方が大体何を言っているかは推察できる。
「戦いたくなければ、大人しく軍門に下り、城を明け渡せ」
ジャサー側の将軍は首を力強く横に振った。
代表者は引っ込んでいき、両軍は武器を構える。
その時だ。
何者かが森の方から馬に乗ってクリロン軍の後ろに走って来る。
その人物は下馬して剣を抜くと、その先端に魔力を溜める。
敵方の魔法使いが危険性にいち早く気付いて攻撃を仕掛けようとするが、もう遅い。
剣の先端から赤色の光線が飛び出し、敵軍兵士数千人を薙ぎ払い、一瞬で真っ二つにする。
私の新技、「光槍」を切っ先から放つ「紅い光刃」。
私が魔法を使った時、ジャサー軍最前列の兵士たちは、人の背丈ほどもある大盾を構えていた。
しかし、その素材は鉄ではない。
木で骨組みを作った後、その表面に鏡を貼り付けてあるだけの構造。
矢が飛んで来たら、身を守るのに役に立たないどころか、割れて危ない代物だ。
だが、私達はこれを数日間で大量生産した。
その理由は何か?
「障害物」を全て切断してしまった光線は真っ直ぐその向こうーーつまりジャサー軍兵士の方へ向かっていく。
そして鏡が光線を反射し、跳ね返った光線は、先程の攻撃を運よく生き残った敵兵たちに逆方向から追い打ちを掛ける。
地面は死体に覆われ、カタパルトは切断されて倒れ、生きている者を押しつぶす。
クリロン軍全体は大混乱となり、構成はぐちゃぐちゃ、人数は四分の一程にまで減った。
しかし、そんな中、私の光線が途絶える。
というより、魔法全体が使えなくなったような感覚。
先日の「銀級」パーティとの戦いでラーラが食らった、「魔法を禁止する魔法」。
城の図書館でその名前を初めて知った。「沈黙」だ。
その「沈黙」を私に掛けてきたのは、頭から血を流した一人の男性魔法使い。
「今だッ! やれぇ!!」
彼の声に応えるように、斧を持った歩兵が突っ込んでくる。
私は剣でその攻撃を受け止めた。
だが、予想外なその一撃の重さに体勢が崩れる。
その隙をついて他の魔法使いが「中火球」を飛ばしてくる。
私は自分から地面に倒れ込んでそれを回避し、歩兵の斧による追撃も地面を転がって何とか避ける。
素早く立ち上がり、「駿馬」で歩兵に近付くと、斧を振り下ろされる前に懐に入り込み、「隼斬り」で首を刎ねる。
追加の「中火球」を回避しつつ、それを放った魔法使いに「駿馬」で接近し、次の魔法を打たれる前に仕留める。
さらに「沈黙」を使ってきた魔法使いにも接近しようとした時、別の兵士が急接近し、私の「脛を狙って」斬りつけてきた。
私はそれを辛うじて防ぐと、地面を蹴って距離を取った。
その時、相手の顔を見て驚いた。
相手も私と目が合い、驚いたような表情を浮かべた。
「グレ…ア…さん?」
夜の湖のような深青色の、ところどころ跳ねた長い髪と水色の吊り目が特徴的な美少年。
かつて一緒にクリロン城下町を歩いたり、技術を交換し合った、「乾坤流」のクオーテだった。
木に登ったまま望遠鏡で見てみると、敵の軍勢は前から順に、歩兵、弓兵、魔法使いの部隊で構成されていて、歩兵・弓兵部隊の横には騎兵部隊が、魔法使い部隊の横には数台のカタパルトがついている。それに、規模も大きい。
ジャサー城の方からも同じように軍勢が出てくる。
しかし、こちらに魔法使いとカタパルトはなく、人数も相手の四分の一にさえ届かないようだった。
普通に戦えば勝ち目はない。
両軍が足を止め、対面する。
明らかな戦力の差にも関わらず、相手方は律儀にも、代表者を出してきた。
さすがにここまで離れていると音は聞こえないし、読唇も出来ないが、この状況で相手方が大体何を言っているかは推察できる。
「戦いたくなければ、大人しく軍門に下り、城を明け渡せ」
ジャサー側の将軍は首を力強く横に振った。
代表者は引っ込んでいき、両軍は武器を構える。
その時だ。
何者かが森の方から馬に乗ってクリロン軍の後ろに走って来る。
その人物は下馬して剣を抜くと、その先端に魔力を溜める。
敵方の魔法使いが危険性にいち早く気付いて攻撃を仕掛けようとするが、もう遅い。
剣の先端から赤色の光線が飛び出し、敵軍兵士数千人を薙ぎ払い、一瞬で真っ二つにする。
私の新技、「光槍」を切っ先から放つ「紅い光刃」。
私が魔法を使った時、ジャサー軍最前列の兵士たちは、人の背丈ほどもある大盾を構えていた。
しかし、その素材は鉄ではない。
木で骨組みを作った後、その表面に鏡を貼り付けてあるだけの構造。
矢が飛んで来たら、身を守るのに役に立たないどころか、割れて危ない代物だ。
だが、私達はこれを数日間で大量生産した。
その理由は何か?
「障害物」を全て切断してしまった光線は真っ直ぐその向こうーーつまりジャサー軍兵士の方へ向かっていく。
そして鏡が光線を反射し、跳ね返った光線は、先程の攻撃を運よく生き残った敵兵たちに逆方向から追い打ちを掛ける。
地面は死体に覆われ、カタパルトは切断されて倒れ、生きている者を押しつぶす。
クリロン軍全体は大混乱となり、構成はぐちゃぐちゃ、人数は四分の一程にまで減った。
しかし、そんな中、私の光線が途絶える。
というより、魔法全体が使えなくなったような感覚。
先日の「銀級」パーティとの戦いでラーラが食らった、「魔法を禁止する魔法」。
城の図書館でその名前を初めて知った。「沈黙」だ。
その「沈黙」を私に掛けてきたのは、頭から血を流した一人の男性魔法使い。
「今だッ! やれぇ!!」
彼の声に応えるように、斧を持った歩兵が突っ込んでくる。
私は剣でその攻撃を受け止めた。
だが、予想外なその一撃の重さに体勢が崩れる。
その隙をついて他の魔法使いが「中火球」を飛ばしてくる。
私は自分から地面に倒れ込んでそれを回避し、歩兵の斧による追撃も地面を転がって何とか避ける。
素早く立ち上がり、「駿馬」で歩兵に近付くと、斧を振り下ろされる前に懐に入り込み、「隼斬り」で首を刎ねる。
追加の「中火球」を回避しつつ、それを放った魔法使いに「駿馬」で接近し、次の魔法を打たれる前に仕留める。
さらに「沈黙」を使ってきた魔法使いにも接近しようとした時、別の兵士が急接近し、私の「脛を狙って」斬りつけてきた。
私はそれを辛うじて防ぐと、地面を蹴って距離を取った。
その時、相手の顔を見て驚いた。
相手も私と目が合い、驚いたような表情を浮かべた。
「グレ…ア…さん?」
夜の湖のような深青色の、ところどころ跳ねた長い髪と水色の吊り目が特徴的な美少年。
かつて一緒にクリロン城下町を歩いたり、技術を交換し合った、「乾坤流」のクオーテだった。
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