魔王メーカー

壱元

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第三章

第二十話

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 馬はいないというので、仕方なく徒歩で行くことにしたら、結局城に着いたのは日が沈みかけた頃になってしまった。

門番の兵士に訳を話し、しばらくして出てきた、現在のジャサー城の代表者たちによって出迎えられた。

「おお、よくぞ来てくださいましたグレアさん! 身勝手を承知で、藁にも縋る思いで出したお手紙だったのですが、応じて頂けたのですね。大変なご無理申し上げたのです。さあさあ、どうぞ遠慮せずもてなされてくださいませ」

門の中に迎え入れられた私は、大浴場を貸切りで利用して汗を流した後、昔のように召使いたちによって服を着せられ、代表者たちとの円卓を囲んでの食事会に参加した。

現在のジャサー城は、城内の成人全員の投票によって選ばれた十人の議員が任期一年で統治しているらしい。

「そういえば、お連れの方…ラーラさんはどうされました?」

食事会中、会話の流れの中でふと一人に訊かれたので、私はこれまでの旅の経緯をざっと話した。

話を聞き終わって、一人が「ラーラさんについてですが、もしかしたら我が城の医者であれば治せるやもしれません」と応えた。

「本当? ならありがたいんだけど」

「何人か派遣しましょう。それとも、こちらにお運びしましょうか」

彼らには長期間世話になっている。のみならず、医者を派遣するのであれば、治療が複数日に渡って、彼らも泊まることになってもおかしくない。そうなれば、村民には多大な負担を強いることになろう。

「こちらに連れて来たい」

「わかりました。『亜人語』が出来る者をお送りしましょう」

「ありがとう。…でも、ここは私自身にやらせてほしいんだ」

ラーラは私の為に身体を張ってこうなった。ならば私もラーラの為に出来ることはしたい。それだけでなく、トロールに対しても、迷惑を掛けている張本人が誠意をみせることが有効だろう。

結果、明日の午前にデザ村に戻ることになった。

クリロンの軍勢との戦いに関する会議は、ラーラを城に連れてきた後に、ということにした。


 翌朝、食事と支度を終え、借りた馬に跨る。

議員たちは、誠実にも、皆わざわざ出揃って見送ってくれた。

「こんなことの為に全員出て来て、政治の方はいいの?」

私が冗談まがいに言うと、「これも政治の一環ですよ」と一人が返した。

 馬を走らせ、昼前には村に到着した。

「どうだった?」

キアが声を掛けてきた。

私が一連の決定事項を伝えると、

「わかった。村長の所、話に行こう」と身を乗り出した。

村長との対話はスムーズに進行し、あっさりと許可を得た。

「それで、人の子よ、本日が貴殿らとの別れの日となるのか?」

「…いえ、また戻ります。まだお礼しきれていませんので」

「礼など要らぬ。我らが勝手に起こした迷惑だ」

「…でも、その『迷惑』がなければ私達は今頃地獄に居たはずです。どうしても、それでは割り切れない」

「そうか」

彼は小さく頷いた。

 私はラーラを背負った。

今わざと大きく揺らしたら、目覚めて、文句を言ってくれるだろうか。

いや、それで済んだらこんなに悩まされていない。

ここ数日で、トロールの医術のレベルの高さはよく分かった。人間の医者に頼むのは一縷の望みであり、最後の希望なのだ。

最悪の現実にも向き合う覚悟を胸に、私は村を出た。

「あとで戻る」と伝えたのに、門の近くにはキアも含む何人もの村民が集まっていた。

今日は二度もお見送りに合うようだ。

「頑張ってきて」

照れ気味の私にキアは言った。

「健闘を祈っているわ」

その後、無事に帰城し、相方を運び入れることが出来た。

間も無くして、医者による診察が

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