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第三章
第十八話
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デザ村に来て十二日目(私が目覚めて十日目)。
腰に剣を差した私は、大弓を背負ったキアと村のはずれで待ち合わせた。
「覚悟、出来た?」
「…大丈夫です」
「じゃあ、行こう」
二人は森の中を進んでいった。
しばらくすると道も生い茂る草に隠されて曖昧になり、太陽の光も遮られて薄暗くなってきた。
そんな中、キアが雑草の中に咲く紺色の丸い花を指差す。
「あれ、『雨の花』。雨降った後、水溜まって膨らむ。水は飲めるから、覚えておいて」
「なるほど」
またしばらく歩くと、今度は葉のギザギザした背の高い草を掴む。
「これ、『のこぎりの草』ね。葉っぱ、実は柔らかい。すり潰して水と混ぜると、傷薬になる」
「へえ」
こんな具合に、少し進むたびに彼女は実物とともに医術の知識を授けてくれた。
私はどんどんそれらを学ぶことが出来、忙しくも楽しく、有意義な時間だった。
さらに奥へと進んでいくと、遠くに狼のような影がいくつか見えた。
その姿には既視感があった。
針のように硬く尖った体毛と、赤く丸い目…この特徴は間違いなくスパイクウルフである。
まだ未熟だったころの私が、ラーラ、バセリアと一緒にジャサー城の北で戦った魔物だ。
魔物たちは、私達をしばらく見つめた後、二手に分かれてこちらに向かってきた。
私は剣を抜き、構えた。
かつてバセリアたちと一緒に対峙した時、私は足を引っ張ってばかりだった。二人に劣等感さえ覚え、挙句の果てに拗ねてしまった。
だが、あの時とは違う。
「キアさん、支援は要りません」
「…いいの?」
「約束通り、自分の身は自分で守りますから」
私は突撃した。
敵が二方向から、合計三頭同時に飛び掛かってくる。
「はあっ!」
攻撃を避けながら、「隼斬り」を見舞う。
一瞬にして一体目の首に斬り上げ、そのまま返す刀で二体目の首に斬り下ろし、さらに三体目を斬り上げる。
ボトボトと音を立て、肉塊が地面に落下する。
続く四体目の突撃と噛み付きをタイミングを見計らって「雲歩」で避け、向かい来る背中の棘状の毛を剣で受け止めて防ぐ。
想像以上の硬度で、鉄の剣とかち合っても崩れない。
後ろから突っ込んでくるもう五体目と合わせて、四体目を回転切りで片づける。
さらに六体目の顔面を刀身の側面で打ち、動きを止めてから「隼斬り」で頭部を真っ二つにする。
他に突撃してくる個体はいない。第一波は終わったようだ。
だが、まだ遠くでこちらを睨んでいるのが何体か残っている。
私は剣をしまい、両手から「絹糸」を放つ。
「おお!?」
その瞬間、背後でキアが歓声を上げた。
無数の光線が草木ごと敵たちの身体を寸断し、一瞬にして全滅させた。
「…ふう」
昔は手も足も出なかった魔物たちを完封。
復帰戦にしては上出来じゃないだろうか。
「…すごい」
キアが拍手をしながら呟いた。
「あなた、杖じゃなくて剣持ってるから、戦士だと思ってたけど、戦士じゃなかった。本当は魔法使いなの?」
「はい。まあ、そうですね」
「珍しいわ。今まで魔法使い、会ったことなかった」
子供みたいに目を輝かせるキアを見て、爽快感が倍増した。
さらに奥へと進む。
藍色の肌に緑色の縦縞が三本入った丸っこい蛙が、樹の幹にくっついていた。
「これ、『デッドリースプラッシャー』。掴むと毒の水、噴き出す。背中の皮が傷ついても噴き出す。毒、傷に当たったら死ぬ。ちっちゃい傷でも」
「…恐ろしいですね」
さらに行くと、今度は横の茂みに大蛇の身体の一部が見えた。
「これ、『ロックスケイルパイソン』。大きいのは7m。鱗は普通に見える。けど、石みたいに硬くて斬れない。力も強くて、いつもは大人しいけど、怒らせたら誰も勝てない」
「…怒らせないようにしないとですね」
もう少し歩いた所で、今度は茂みの中を小さな何かが次々に駆け抜けていくのを感じた。
それにしても、目で追いきれないほど素早い。
「今のは『バレットマウス』。もっと速く走れる。速すぎて、飛び跳ねた時に空を飛ぶこともある」
「すごいですね」
そんなこんなで、興味深くも恐ろしい原生生物についても知りながら、奥へ奥へと進んでいった。
「あっ!」
突如、視界がひらけ、明るくなる。
今回の目的地である大きな河に辿り着いたのだ。
腰に剣を差した私は、大弓を背負ったキアと村のはずれで待ち合わせた。
「覚悟、出来た?」
「…大丈夫です」
「じゃあ、行こう」
二人は森の中を進んでいった。
しばらくすると道も生い茂る草に隠されて曖昧になり、太陽の光も遮られて薄暗くなってきた。
そんな中、キアが雑草の中に咲く紺色の丸い花を指差す。
「あれ、『雨の花』。雨降った後、水溜まって膨らむ。水は飲めるから、覚えておいて」
「なるほど」
またしばらく歩くと、今度は葉のギザギザした背の高い草を掴む。
「これ、『のこぎりの草』ね。葉っぱ、実は柔らかい。すり潰して水と混ぜると、傷薬になる」
「へえ」
こんな具合に、少し進むたびに彼女は実物とともに医術の知識を授けてくれた。
私はどんどんそれらを学ぶことが出来、忙しくも楽しく、有意義な時間だった。
さらに奥へと進んでいくと、遠くに狼のような影がいくつか見えた。
その姿には既視感があった。
針のように硬く尖った体毛と、赤く丸い目…この特徴は間違いなくスパイクウルフである。
まだ未熟だったころの私が、ラーラ、バセリアと一緒にジャサー城の北で戦った魔物だ。
魔物たちは、私達をしばらく見つめた後、二手に分かれてこちらに向かってきた。
私は剣を抜き、構えた。
かつてバセリアたちと一緒に対峙した時、私は足を引っ張ってばかりだった。二人に劣等感さえ覚え、挙句の果てに拗ねてしまった。
だが、あの時とは違う。
「キアさん、支援は要りません」
「…いいの?」
「約束通り、自分の身は自分で守りますから」
私は突撃した。
敵が二方向から、合計三頭同時に飛び掛かってくる。
「はあっ!」
攻撃を避けながら、「隼斬り」を見舞う。
一瞬にして一体目の首に斬り上げ、そのまま返す刀で二体目の首に斬り下ろし、さらに三体目を斬り上げる。
ボトボトと音を立て、肉塊が地面に落下する。
続く四体目の突撃と噛み付きをタイミングを見計らって「雲歩」で避け、向かい来る背中の棘状の毛を剣で受け止めて防ぐ。
想像以上の硬度で、鉄の剣とかち合っても崩れない。
後ろから突っ込んでくるもう五体目と合わせて、四体目を回転切りで片づける。
さらに六体目の顔面を刀身の側面で打ち、動きを止めてから「隼斬り」で頭部を真っ二つにする。
他に突撃してくる個体はいない。第一波は終わったようだ。
だが、まだ遠くでこちらを睨んでいるのが何体か残っている。
私は剣をしまい、両手から「絹糸」を放つ。
「おお!?」
その瞬間、背後でキアが歓声を上げた。
無数の光線が草木ごと敵たちの身体を寸断し、一瞬にして全滅させた。
「…ふう」
昔は手も足も出なかった魔物たちを完封。
復帰戦にしては上出来じゃないだろうか。
「…すごい」
キアが拍手をしながら呟いた。
「あなた、杖じゃなくて剣持ってるから、戦士だと思ってたけど、戦士じゃなかった。本当は魔法使いなの?」
「はい。まあ、そうですね」
「珍しいわ。今まで魔法使い、会ったことなかった」
子供みたいに目を輝かせるキアを見て、爽快感が倍増した。
さらに奥へと進む。
藍色の肌に緑色の縦縞が三本入った丸っこい蛙が、樹の幹にくっついていた。
「これ、『デッドリースプラッシャー』。掴むと毒の水、噴き出す。背中の皮が傷ついても噴き出す。毒、傷に当たったら死ぬ。ちっちゃい傷でも」
「…恐ろしいですね」
さらに行くと、今度は横の茂みに大蛇の身体の一部が見えた。
「これ、『ロックスケイルパイソン』。大きいのは7m。鱗は普通に見える。けど、石みたいに硬くて斬れない。力も強くて、いつもは大人しいけど、怒らせたら誰も勝てない」
「…怒らせないようにしないとですね」
もう少し歩いた所で、今度は茂みの中を小さな何かが次々に駆け抜けていくのを感じた。
それにしても、目で追いきれないほど素早い。
「今のは『バレットマウス』。もっと速く走れる。速すぎて、飛び跳ねた時に空を飛ぶこともある」
「すごいですね」
そんなこんなで、興味深くも恐ろしい原生生物についても知りながら、奥へ奥へと進んでいった。
「あっ!」
突如、視界がひらけ、明るくなる。
今回の目的地である大きな河に辿り着いたのだ。
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