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第三章
第十七話
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デザ村に来て九日目(私が目覚めて七日目)
相変わらずラーラは昏睡状態。
昨日村長が言ったとおり、キアに代わって他のトロールが彼女の面倒を見てくれていた。心配じゃなかった訳ではないが、彼女のキアと同等に繊細な手つきを見ていて安心した。
一方、私の身体は順調に回復している。
多少の倦怠感はあるが、今まで通り全力で走ることが出来るようになったし、よほどの高精度を求めなければ、魔力コントロールも問題ない。
元気を取り戻した私は、料理店で猪の丸焼きを他の客と分け合って食べたり、道端で売られている水色の果実の生絞りジュースを買って飲んだり、野原で子供たちと遊んだりして、一日デサ村を満喫した。
出会う村人は全員トロールだったが、みんな程度の差はあれど「汎人語」が話せるし、とにかく気さくで親切だった。文化も一見無骨に見えるが、その実、こだわりが感じられ、洗練されているように思われた。
また、私達を村まで運んでくれた方とも出会い、お礼を言い会話を楽しんだ。
とにかく楽しかった。
だが、何をしていても、ふと脳裏に「ラーラにも飲ませてあげたかった」という思いが電流のようにちらついて、行く先々でちょっぴり切ない気分にもなった。
デザ村に来て十一日目(私が目覚めて九日目)
まだラーラは目覚めない。
今日は久しぶりにキアが看護担当だ。
彼女の手伝いをしながら、色々と雑談をしたり、簡単な「亜人語」を教えてもらったりした。
キアは代々続く医者の家系の出身で、姉がいるらしい。
姉は今までトロール医術に触れることのなかった一般の村民への知識伝授に専念していて、一昨日来てくれたのはその「弟子」の内の一人らしい。
「姉ちゃん、薬草とか調べてる。人に教えるか、研究するかだけでほとんど部屋から出てこない。もしあの人が出てきたら、きっと槍が降るわ。そうじゃなくても、何か変わったことが起こる」
「へえ、そんなに!?」
「うん。変な人」
二人で笑い合った後、長めの休憩時間を取った。
「そうだ!」
我ながら妙案を思い付いた。
「キアさん、医術を教えてくれませんか? 私達は冒険者なので、自然の中で傷を負ったり病気になってしまう可能性が高いです。そうした時に、その場で出来る対処法とか知りたくて」
「分かった。…もう身体、大丈夫ね? 明日村の外、行こう。実際に見た方が覚えやすいでしょ」
「お、いいですね」
「ただし」
彼女は厳格な口調で言った。
「それなら、自分の身は自分で守ってね。森の中、魔物沢山いるから。冒険者なら、できるよね」
「…」
不安はある。病み上がりに未知の場所をいきなり探索するのだ。
だが、むしろこれは絶好の機会だ。私はいずれ軍勢を相手にしなければならないのだから、早いうちに感覚を取り戻しておくに越したことはない。
「喜んで」
私は答えた。
予想外の返答だったようで、キアの顔には驚きが見えた。
聞くと、彼女は今まで村を訪れた、この辺りの自然環境を知る人間に「森に分け入る」と言っていい顔はされなかったという。
「商人なんてそんなものじゃないですか?」
この村は人間の行商人との交易が盛んであるという話を思い出しながら、私は言った。
「…いや、冒険者もそんな感じだった。確か…『銀』級、嫌がってた」
「…」
少々恐ろしくなってきたが、結局行くことにはした。
…かなり手荒なリハビリになりそ
相変わらずラーラは昏睡状態。
昨日村長が言ったとおり、キアに代わって他のトロールが彼女の面倒を見てくれていた。心配じゃなかった訳ではないが、彼女のキアと同等に繊細な手つきを見ていて安心した。
一方、私の身体は順調に回復している。
多少の倦怠感はあるが、今まで通り全力で走ることが出来るようになったし、よほどの高精度を求めなければ、魔力コントロールも問題ない。
元気を取り戻した私は、料理店で猪の丸焼きを他の客と分け合って食べたり、道端で売られている水色の果実の生絞りジュースを買って飲んだり、野原で子供たちと遊んだりして、一日デサ村を満喫した。
出会う村人は全員トロールだったが、みんな程度の差はあれど「汎人語」が話せるし、とにかく気さくで親切だった。文化も一見無骨に見えるが、その実、こだわりが感じられ、洗練されているように思われた。
また、私達を村まで運んでくれた方とも出会い、お礼を言い会話を楽しんだ。
とにかく楽しかった。
だが、何をしていても、ふと脳裏に「ラーラにも飲ませてあげたかった」という思いが電流のようにちらついて、行く先々でちょっぴり切ない気分にもなった。
デザ村に来て十一日目(私が目覚めて九日目)
まだラーラは目覚めない。
今日は久しぶりにキアが看護担当だ。
彼女の手伝いをしながら、色々と雑談をしたり、簡単な「亜人語」を教えてもらったりした。
キアは代々続く医者の家系の出身で、姉がいるらしい。
姉は今までトロール医術に触れることのなかった一般の村民への知識伝授に専念していて、一昨日来てくれたのはその「弟子」の内の一人らしい。
「姉ちゃん、薬草とか調べてる。人に教えるか、研究するかだけでほとんど部屋から出てこない。もしあの人が出てきたら、きっと槍が降るわ。そうじゃなくても、何か変わったことが起こる」
「へえ、そんなに!?」
「うん。変な人」
二人で笑い合った後、長めの休憩時間を取った。
「そうだ!」
我ながら妙案を思い付いた。
「キアさん、医術を教えてくれませんか? 私達は冒険者なので、自然の中で傷を負ったり病気になってしまう可能性が高いです。そうした時に、その場で出来る対処法とか知りたくて」
「分かった。…もう身体、大丈夫ね? 明日村の外、行こう。実際に見た方が覚えやすいでしょ」
「お、いいですね」
「ただし」
彼女は厳格な口調で言った。
「それなら、自分の身は自分で守ってね。森の中、魔物沢山いるから。冒険者なら、できるよね」
「…」
不安はある。病み上がりに未知の場所をいきなり探索するのだ。
だが、むしろこれは絶好の機会だ。私はいずれ軍勢を相手にしなければならないのだから、早いうちに感覚を取り戻しておくに越したことはない。
「喜んで」
私は答えた。
予想外の返答だったようで、キアの顔には驚きが見えた。
聞くと、彼女は今まで村を訪れた、この辺りの自然環境を知る人間に「森に分け入る」と言っていい顔はされなかったという。
「商人なんてそんなものじゃないですか?」
この村は人間の行商人との交易が盛んであるという話を思い出しながら、私は言った。
「…いや、冒険者もそんな感じだった。確か…『銀』級、嫌がってた」
「…」
少々恐ろしくなってきたが、結局行くことにはした。
…かなり手荒なリハビリになりそ
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