魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
上 下
6 / 82
第一章

第五話

しおりを挟む
 アルクはこの辺りでは珍しい赤毛のツンツンヘアーで、無愛想な感じの子だった。

「どうしたの?」

私は相手の正体を探るかのように、望みと不安が混ざった心のまま質問した。

「お前、その、魔法? …使ったよな?」

「…うん」

やっぱり、不気味なものとして彼の目に映ったのだろうか。

だがわざわざ直接文句を言いに来るものなのか。

でも彼は狼に立ち向かうくらい勇敢で行動力がある。わからない。

私は静かに、次の言葉を待った。

「あれさ…」

彼は言った。

「すげーカッコよかったぜ!」

「え?」

私はぽかんとした。

「あれ、どうやってやるんだ? 手から火が出るとか、すげーよ!」

「ええと、それは、手に魔力を集中すると出来るんだよ」

「うん? マリョクってなんだ?」

「ああ、魔力はね、あらゆるものを流れているエネルギーでね…」

私達はしばらく会話を続けた。

「へーなるほどな! わかんね。でも面白かったぜ! じゃあな」

歯をむき出した向日葵のような笑顔を見せながら、彼は帰っていった。

「じゃあね」

私は小さく手を振って見送った。

お父さんがドアを閉めた。

「良かったな」

お父さんが言う。

「うん」

頷き、無意識に横を向いた時、お母さんの笑顔が目に入った。

「あれ、どうして笑っているの?」

「グレアがあんなに楽しそうに話すの、初めて見た」

私はそこで、やっと自分の上がりっぱなしの口角に気付いた。

ふと見たガラス窓に映る自分の笑顔は、多少戸惑いの表情に侵食されても尚、正直に言って眩しすぎた。

そうか、私、あの子と喋っていて、楽しかったんだ。

「やっぱりそうなのね!」

楽しそうにお母さんは笑った。

お父さんに頭を撫でられた。

「楽しかったか?」

「…うん」

「はは、良かったな!」

そうだ。良かった。

あの子と…アルクと話せて、良かった。

お父さんとお母さんを除けば、初めて他の誰かに好かれた。

人に好かれるって、こんなに楽しいんだ。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:48

焚書

SF / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:269pt お気に入り:8,020

【完結】思い込みの激しい方ですね

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:3,498

黄泉月の宴 (よみづきのうたげ)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

恋と愛とで抱きしめて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:1,518

CODE:HEXA

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...