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第一章
第四話
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ある日、編み物をしながら家にいると、何やら外が騒がしく感じた。
窓からこっそり伺うと、何やら黒いものが見えた。
「うん…?」
それは一見犬のようだった。
でも、決定的な相違点があった。毛並みは逆立ち、目は吊り上がって光っていた。
「エボンウルフ」だ。
普段は森に群れで居るが、稀にはぐれたヤツが村に降りてくるという。
中心部に出現すれば男の人が農具を振り回して追い払うが、我が家とその周辺は村の中でも特に端の方で、畑やそこで作業する人の姿はない。
代わりに、そこには子供たちが居た。
今、私と同世代くらいの男の子が、他の子を背中に匿いながら狼と睨み合っている。
貧弱な一本の木枝を武器に。
どうする?
私は震えていた。
確かに初めて生で見る「魔物」の姿に恐怖していた。
だが、未知や死への恐れ以上に、葛藤があった。
彼らを見捨てたくない。
それは本心だが、彼らの内少なくとも何人かは、私を憎み、嫌がらせをしてきた子に違いない。
「うわ!」
迷っている間、事態は悪化した。
例の男の子がブーツを噛まれ、身体を引きずられていたのだ。
狼は首を激しく振り、ブーツを荒々しく奪った。そして、それを離すと、遂に彼に飛びかかった。
「『火球』」
空中の狼に直径三十センチメートル程の炎の玉が飛んでいく。
脇腹に当たり、吹き飛んで地面に墜落する。
赤々と発光する自身の側体部を見て相手はパニックに陥り、飛び起き、絶叫しながら森の方へと走っていった。
反撃に遭わなくてよかった。
「大丈夫?」
安堵しながら私が振り返ると、そこには誰も居なかった。
胸騒ぎがした。
夕方、三人で夕食を食べていた所で、扉が叩かれた。
お父さんが立ち上がる。
きっと以前のように誰かが「勇者」気取りで「悪魔」を懲らしめに来たんだろう。
目立つと決まってこうなるのだ。
「おいグレア、仕立て屋エグの息子のアルクがお前と話したいってよ」
「…断っておいてよ」
「アルク一人だ。本当に話したいだけって言っているぞ」
今までにないパターンだ。
今はお父さんも居て、いざとなったら守ってくれる。
気は進まないが…
「わかった。話してもいいよ」
よし、とお父さんは解錠した。
木の枝で対峙した、あの子だ。
窓からこっそり伺うと、何やら黒いものが見えた。
「うん…?」
それは一見犬のようだった。
でも、決定的な相違点があった。毛並みは逆立ち、目は吊り上がって光っていた。
「エボンウルフ」だ。
普段は森に群れで居るが、稀にはぐれたヤツが村に降りてくるという。
中心部に出現すれば男の人が農具を振り回して追い払うが、我が家とその周辺は村の中でも特に端の方で、畑やそこで作業する人の姿はない。
代わりに、そこには子供たちが居た。
今、私と同世代くらいの男の子が、他の子を背中に匿いながら狼と睨み合っている。
貧弱な一本の木枝を武器に。
どうする?
私は震えていた。
確かに初めて生で見る「魔物」の姿に恐怖していた。
だが、未知や死への恐れ以上に、葛藤があった。
彼らを見捨てたくない。
それは本心だが、彼らの内少なくとも何人かは、私を憎み、嫌がらせをしてきた子に違いない。
「うわ!」
迷っている間、事態は悪化した。
例の男の子がブーツを噛まれ、身体を引きずられていたのだ。
狼は首を激しく振り、ブーツを荒々しく奪った。そして、それを離すと、遂に彼に飛びかかった。
「『火球』」
空中の狼に直径三十センチメートル程の炎の玉が飛んでいく。
脇腹に当たり、吹き飛んで地面に墜落する。
赤々と発光する自身の側体部を見て相手はパニックに陥り、飛び起き、絶叫しながら森の方へと走っていった。
反撃に遭わなくてよかった。
「大丈夫?」
安堵しながら私が振り返ると、そこには誰も居なかった。
胸騒ぎがした。
夕方、三人で夕食を食べていた所で、扉が叩かれた。
お父さんが立ち上がる。
きっと以前のように誰かが「勇者」気取りで「悪魔」を懲らしめに来たんだろう。
目立つと決まってこうなるのだ。
「おいグレア、仕立て屋エグの息子のアルクがお前と話したいってよ」
「…断っておいてよ」
「アルク一人だ。本当に話したいだけって言っているぞ」
今までにないパターンだ。
今はお父さんも居て、いざとなったら守ってくれる。
気は進まないが…
「わかった。話してもいいよ」
よし、とお父さんは解錠した。
木の枝で対峙した、あの子だ。
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