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13、自業自得の結末
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ー父視点ー
何もすることがない、憂鬱な休日の朝。
俺は自宅の食卓で、久しぶりに家族と共に朝飯を食っているのだが……味をまったく感じない。嫁の飯を食うのもかなり久し振りで、どんな味付けをしていたのか思い出せないほどだが、最低限普通に食べられる味だったはずだが……おかしいな。
ストレスで味覚がおかしくなったのか。それとも、俺の料理だけ手を抜かれているのか。
夫の料理に手を抜くとか、ありえない。
誰の金で生活できていると思っているんだ。
「はぁ……」
いつもならガツンと文句を言ってやるところなんだが、そんな活力もわかないほど、今の俺は疲れている。
職場に俺が浮気をしているだけじゃなく、業務時間中に不貞行為を行っていると証拠付きの書面が会社に送りつけられてから、何もかもが上手くいかない。
波に乗っていた俺の人生は急転直下。今まで築いてきた実績も会社の評価もなにもかもが地に落ちた。
女性社員からゴミを見るような冷たい視線を向けられるのが正直しんどい。
不倫していた女性社員はもっと気まずくて退職してしまった。欠員を出したことで『お前のせいで』と露骨な攻撃的視線が痛い。
会社の規則に社内恋愛禁止はないが、浮気・不倫はさすがにバレたら問題になる。業務時間中の不貞なんて論外……まぁ、逆に言えば、バレなければ問題ないと言うことになる。
俺以外の不倫していた同僚も『このスリルが癖になる』と社内不倫を楽しんでいた……いけないことをするって、楽しいんだよ。
家族と会社を裏切って性的快楽を得るとか、背徳感があって凄く楽しかった。
長年バレることはなかったというのに……いったいどうして、どこからバレたんだ。同僚と協力しあってアリバイ工作までしていたのに、何故だ。
浮気相手に同僚や部下、上司の嫁を摘まみ食いしたのがまずかったか? 他人の女を寝取って孕ませるのが大好きな同僚と乱交したのがまずかったか? 小遣い稼ぎにその動画を売ったのがまずかったか? それとも、手近な職場の若い新人社員を選んだのが失敗だったか?
きちんとした会社に売り込んだし、顔や音声の一部はバレないよう加工してもらっていたし、欲求不満な人妻や若くて世間知らずの独身女ならお手軽で扱いやす制御しやすくて、口止めしておけばバレないと思っていたのに……俺の行動を怪しんで興信所を雇ったりしない限り、バレるはずなんて無かった。
女遊びに協力してくれていた同僚たちも一緒に処罰されることになった。
さすがに解雇まではされなかったが、減給。奉仕活動への強制参加。女性社員への接触禁止。別部署への移動と降格。それに地方の子会社への左遷。
慰謝料が高額になった同僚は退職金を前借りした。それでも足りず、会社の寮に入れられ、必要最低限な生活費を残して支払いに当てる馬車馬のような生活が定年まで続く……それでも足りなければ、年金まで搾り取られるとか……。
仲間は散り散りにされて、連絡の取り合いも禁止。もう連むことも会うこともないだろう。
俺も遠くの男しかいない支社へ移動が伝えられた。しばらくの間はおとなしく引き継ぎと引っ越しの準備に追われることになる。
会社にこんな書類を送りつけてくるのは嫁くらいだろうと思ったのだが、嫁からこの話を切り出してこないのはどういうことだろう。
犯人は嫁じゃない? 俺と一緒に浮気バレした同僚の嫁が探偵でも雇ったのだろうか? 何人か嫁と不倫相手の夫から高額の慰謝料を請求され、離婚するはめになった上に無断で動画を売ったことで不倫相手からも慰謝料を請求されている。
俺のところには今のところ慰謝料の請求はきていない……嫁がこのことを知っているのなら、必ず請求してくるはずなのに、それがない。
もし、俺からこの話を切り出せば『え、あなた浮気してたの? それなら、私も慰謝料もらって離婚するわ』とか言われるだろうから、こちらからは何も言えないのだが……嫁は俺の浮気を本当に知らないのだろうか? もしそうなら、ここから好感度稼ぎをして挽回し、請求額を抑えることができるんじゃないか?
転勤先で家事をしてくれる女がいない。
向こうで引っ掛けるのも難しそうだから、嫁を赴任先に連れていくつもりだ。あれは俺の嫁なんだから、俺が行くところについてくるのは当然だろう。
今まで自由にさせてきたんだ。俺の稼いだ金で生活している嫁には夫に尽くす義務がある。
息子も成人して仕事にも馴染んできたことだし、母親の仕事は終わり。あれは嫁になついていて、家事もしていたし、ひとりでも生きていけるから放置で良い。
一人暮らしをして、そのまま適当な女と結婚して、その嫁に俺の老後の世話をさせるのも良いな。性的な介護もさせて、息子にバラされたくなかったらと脅して快楽堕ちさせて息子の嫁を寝取って托卵させる……ふふふ、想像するだけで滾るじゃないか。
遊びの時間は終わりだ。
これからは、夫である俺に尽くしてもらう。
だが、これまで冷遇してきたせいか、どう接したら良いのかとか、妻が好きなものとか趣味が解らず、好感度稼ぎは難航している。
誕生日すら忘れてしまったし、結婚記念日なんて式も挙げていないので存在しない。役所への届け出日なんて、あれにやらせたから知らない。
サプライズとか、急に媚びた態度や贈り物はいかにもなにかやらかしてご機嫌取りしてますって感じで逆に怪しまれる。八方塞がりだ。
それに、この歳で遠い支社に転勤になったとか、確実になにかやらかしたと思われる……怪しまれず、どう伝えたら良いのやら……まぁ、ゴネて従わなかったら力づくでも従わせるだけだ。
この家族がそろったタイミングで家長らしくバシッと話を切り出して、地方の小さな支社だがそこを任されることになったと説明し、女は黙って男についてこい。子供は巣立って自活しろと言ってやろうと様子をうかがっているのだが……目の前で繰り広げられる信じられない光景に、言葉が出ない。
「はーい、ゆき。あーんして?」
「あーん、んぐ……うん、やっぱり母さんのご飯は美味しいね。食べさせてもらってるともっと美味しく感じるよ」
「そうでしょ? 次はどれにしようか……うーん、これが良いかしら?」
「あ、それ、次食べたいなと思ったのだ」
「ふふふ、やっぱりね。なんとなくこれかなって思ったの。ゆきの好みはちゃーーんと把握しているから、ゆきが何を考えているかわかっちゃうのよ?」
「じゃあ、俺は今何を思っているか解る?」
「んー? お母さん大好き、愛してる?」
「大正解」
「やった♪ 正解したご褒美は?」
「あとで母さんにも食べさせてあげるよ。二つとも正解したから、頭撫で撫でもつけちゃおうか」
「やだ……嬉しすぎて濡れちゃいそう」
なんだ、これ。
俺の目の前には満面の笑みで息子にベタベタとくっついて、甲斐甲斐しく飯を食べさせる嫁と、それを嬉しそうに受け入れて甘える息子……ドラマや漫画でしか見ないような、まるで付き合いたてのバカップルか新婚夫婦みたいじゃないか。
嫁よ。お前の夫は俺だぞ? 何故、俺じゃなく息子に奉仕するんだ。相手が違うだろ。なに息子に頭をこすりつけて甘えているんだ。俺にそんな姿見せたことないだろ。相手が違うだろ。
「……な、なぁ、お前たち。いくらなんでもくっつきすぎじゃないか? 母子だぞ? まるで若いバカップルみたいじゃないか……気持ち悪い。
お前は俺の嫁だぞ? そっちじゃないだろ。俺以外の男には適度な距離を保たないか。お前がそんなのだから、息子がマザコンに育って、いつまでも独り立ちしないんだ。いい加減子離れしないか!」
「あら、家庭をかえりみないあなたがそれを言うの? 私のことなんて金食い虫の役立たずって言ってるのに、今更夫面しないでくれない?
息子は小さな恋人って言われるくらいなんだから、こんなの別に普通よ。好き同士がくっつくのは当たり前でしょ? バカップル上等。そんなのには負けないくらい私達は仲良しなんだから。
それに、母子だからベタベタくっついてはいけないって、何か問題があるの? 母子仲がいいのは良いことじゃない……どこかの誰かさんみたいに、お嫁さんを何十年と放置し続けて、家族を大切にしない方が問題でしょ。何言ってるの? 自分の行いを振り返ってものを言ってちょうだい。
それに、この子はちゃんとした職について、生活費も渡してくれるし、家事も手伝ってくれるのよ?
買い物に出れば重たい荷物は真っ先に持ってくれるし、車道とか危ない方を守るように歩いてくれるし、この前も素敵な贈り物をしてくれるし……どこかの誰かさんとは大違いよね~。
あなたが私にしてくれたことなんて、生活費を出してただけじゃない。それも酔わせた私を妊娠させた責任をとるっていう、両親親族の命令みたいなもので、あなたに拒否権なしの義務なんだから、それでマウントはとれないわよ?
そもそも、結婚生活ってお金だけあれば良いってモノじゃないのよ? お互いを尊重しあって、困難には支え合って、常日頃から感謝の気持ちを持って、大事だよ、大切だよ、大好きだよって言って、絆を深め合っていくものじゃない? あなたはそれをしてくれた? あなたがしてくれなかったことを全部してくれる息子を母親とか関係なく、女として大好きになっちゃうのは当たり前じゃない?」
妻の冷たい視線と強い言葉の雨。
今まで、こんな返しはされたことがない。
いつもオドオドしていて、俺の言うことには逆らわず、黙って従っていた女が、急にどうしてこんな反抗的な態度をとるようになったんだ……。
「うぐっ、そ、それは……そ、その服装は何だ? いい歳したババアがする格好じゃないだろ。歳を考えないか!」
袖のないニットでできた露出の多いセーターで、下着をつけていないうえに肌着も着ていないで胸が半分ほどしか隠れていない。丈が長いから下なんてはいていないようにも見える。年増がする格好じゃないだろ。
「これ? 家の中くらい、好きな格好しても良いじゃない。誰かに迷惑をかけるとか、あなたとゆきしか見てないんだし。この格好で外に出たりはしないわよ。
公序良俗に違反しているわけじゃないんだし。なんであなたにそんなことを言われないといけないの? あなたに私の自由を制限する権限なんてないでしょ?
この家だって、私の両親が私にくれた、私の家よ? 家主とその息子がどう使ったって良いじゃない。別に家の中でくらい好きな格好したって良いじゃない。
これもゆきからの大切な贈り物なのよ? せっかくもらったのなら、ちゃんと着て、贈り主に見せて喜ばせてあげるのが当たり前じゃない?」
「そうだね、母さん。凄く似合ってるし、母さんの魅力を思いっきり引き出してくれてるよ。想像以上で、本当に眼福。ありがとう、俺のわがままを聞いてくれて。凄く、嬉しいよ」
「ふふふ、喜んでもらえて良かったわ~。まぁ、お母さんはゆきが喜んでくれるのなら、ここで全裸になったっていいのよ? でも、こうした服を着た方がゆきは好きだもんね~。ふふ、変態さんなんだから……あ、今度裸エプロンとか挑戦しちゃおうか? その格好で一日家事しちゃうとか」
「なにそれ最高じゃないか。想像しただけで興奮しちゃうよ。変態なのはしょうがないだろ? 母さんが可愛すぎて、魅力的すぎるのがいけないんだから。こんな素敵な女性が母親だったら、息子はみんなマザコンになっちゃうって……俺以外にマザコンな兄弟が居ても、俺は母さんを独占するつもりだけど」
「あーーん、もう! そんな嬉しいこといわれたら、お母さんの手元から離してあげられなくなっちゃうじゃない♪ お母さん、もう子離れしないわよ~~」
「もとより、母さんから離れる気なんてないから。魅力的で高収入で貢いでくれる女性が現れたとしても、俺は母さんを選ぶから。母さんを他人に任せたくないから、老後もずっとお世話するから安心して。今も隙間時間に介護の勉強してるから」
「本当に? ふふふ、老後の介護までしてくれるだなんて……親孝行の息子に育ってくれて、お母さんとっても嬉しいわ~。そんなにお母さんを喜ばせてどうするの? 何も出ないわよ?」
「母さんを幸せにするのが俺の役目で生き甲斐だから、幸せそうに笑ってくれていたらそれで充分。
母さんは俺の幸せの象徴なんだから、傍にいてくれるだけで何もしなくて良いよ。家事も俺がして、尽くしてあげたい」
「あら、いいの? そんなに甘やかしてくれる男、あなただけよ……でも、何も返さずもらいっぱなしなんて……あ、おっぱいくらいなら、だしてあげようか?」
「まだ父さんが家に居るんだけど?」
「居るからなによ。私たちに興味関心なんてないんだから、どうでも良いじゃない。ほら、見て。この服、結構伸びるし、おっぱいの谷間に生地を押し込むとエッチじゃない?」
妻が胸部を覆う布を谷間に押し込み、乳房を露出させて息子に見せつけている……乳は俺が見てきた誰よりも大きいが、年相応に垂れて……乳房に、紫色の痣が……歯型? 内出血……まさか、キスマーク? 俺の嫁の乳房に、いったい誰が、キスマークをつけたんだ!?
「……うん、これは凄いね。さすが、童貞を殺す服の異名は伊達じゃないね。童貞じゃない俺でも、理性がぐらつくよ。今すぐ襲いかかっちゃいそうだ」
「あら、昨日もお母さんを貪って、全身獣のように吸いついてきたのに、朝からお母さんを襲っちゃうの?
お母さんで童貞卒業しちゃった息子も悩殺できるような服をお母さんに贈ってきたのは、こういうエッチなお母さんを見たかったからでしょ?
良いわよ、朝から可愛がってくれて。下も何も着けてないから、すぐにできるわよ? お母さんはいつでも受け入れOKなんだけど、確認しちゃう?」
「ちょ、ちょっと待て……お、お前……今、なんていった?」
息子が童貞じゃない……それは年齢を考えればおかしくはないことなんだが、母親で童貞を卒業したっていうのは、どういうことだ?
さっきからやたら距離が近く、胃もたれしそうなほどべたつく甘ったるい雰囲気に妻の息子に対する行動と俺に対する態度の温度差、羞恥心の低さ……こいつら、セックスしたのか? 母子で……しかも、俺が居るというのに、目の前で始めるつもりか? 本当に、俺の妻と息子か? 正気なのか?
「チッ……あなた、まだ居たの?」
「な、なんだ、その態度……」
「はぁ……ここまで言って、見せつけて、まだ解らないの? あなた、そこまでバカだったの? こんなのに私に大切な処女は散らされて、戸籍まで汚されたなんて……最悪よ。人生の汚点だわ」
「まぁ、そのおかげで俺が産まれてこれたんだから、そこには感謝しようよ……それ以外の母さんにしてきた仕打ちは絶対に許さないけど」
「そうね。ゆきを仕込んでくれた。会わせてくれた。そこだけは感謝してあげる。お礼に、そこで私達の愛の営みを見る権利をあげるわ。好きなんでしょ? NTRプレイ……まぁ、私は既に堕とされた後なんだけど」
そう言いながら、左手の指を見せつけてくる嫁と息子……その薬指には同じ色の指輪。
「お、おま……そ、それ、は……」
指輪なんて贈ったことはない。それじゃあ、この指輪は何だ? なんで母子でお揃いの指輪をつけてるんだ?
「違うの? 同僚といくつもの家庭をぶち壊しておいて、それを否定するの? 自分の家庭が壊れる可能性とか考えなかった? やり返される可能性とか考えなかった? 自分がやられて嫌な思いをすることは他人にするなって教わらなかった?」
「ぐ、うぅ……お前、まさか、」
「さて、どうだろうね。一応仕事だけはできる父さんなら、これがどういう意味か、解るよね?」
「ねぇ、ゆき。あんなといつまでもしゃべってないで、私の相手をしてよ。あんなのとしゃべってると、頭おかしくなっちゃいそうなの。ゆきの白いお薬で、お母さんを治してほしいなぁ~」
息子の股間に手を伸ばし、甘えるように身体をすり付けながらキスをねだる妻とそれを受け入れて顔を近づける息子……ああ、もう、無理だ。
「……クソッ」
見ていられなくて、自分の部屋に戻る。ほとんど家にいることがなかったから、部屋には最低限の家具と独身時代のものが少しだけしか置かれていない。
そんな私物を一人でダンボールに詰めていく。
ああ、惨めだな。
どうしてこうなった。どこで間違えた。
嫁と息子の幸せそうな顔がチラつく。
嫁と息子をもっと大切にしていたら……今頃は、あの中心にいたのは俺だったのだろうか。
嫁は俺の理想の女じゃない。ただ、摘まみ食いして捨てようと思う程度の女だったはずなのに……。
「どうして、あんなにエロくなってるんだ……あんなにエロい女だったら、放置なんてしなかったのに……」
愛していなかったとはいえ、妻を息子に寝取られた……息子に、自分の下位互換だと思っていた子に、盗られた……そんな敗北感を味わいながら荷物をまとめる。
「ん……これ、は」
緑の紙……妻の名前が書かれた離婚届と手紙。
内容は、『不貞の証拠は握っている』『おとなしく離婚して、金輪際関わらないならなにもしない。慰謝料の請求もしない』『もしなにかしたら、証拠を世間にばらす』『承諾したら、必須項目を記入して紙を置いて出ていけ』『賢明な判断を願う』と書かれていた。
「は、はは……」
もう、ダメだ。お終いだ。
なにもかもが手遅れだ。詰んでいる。
ここまでされたら、抵抗も無駄。諦めよう。
もう、これ以上、何も考えたくない。関わりたくない。一刻も早く、この場を去りたい。
そう思った俺は、必要最低限生活に必要な物だけカバンに詰めて、震える手で書類を書くと家を出た。
何もすることがない、憂鬱な休日の朝。
俺は自宅の食卓で、久しぶりに家族と共に朝飯を食っているのだが……味をまったく感じない。嫁の飯を食うのもかなり久し振りで、どんな味付けをしていたのか思い出せないほどだが、最低限普通に食べられる味だったはずだが……おかしいな。
ストレスで味覚がおかしくなったのか。それとも、俺の料理だけ手を抜かれているのか。
夫の料理に手を抜くとか、ありえない。
誰の金で生活できていると思っているんだ。
「はぁ……」
いつもならガツンと文句を言ってやるところなんだが、そんな活力もわかないほど、今の俺は疲れている。
職場に俺が浮気をしているだけじゃなく、業務時間中に不貞行為を行っていると証拠付きの書面が会社に送りつけられてから、何もかもが上手くいかない。
波に乗っていた俺の人生は急転直下。今まで築いてきた実績も会社の評価もなにもかもが地に落ちた。
女性社員からゴミを見るような冷たい視線を向けられるのが正直しんどい。
不倫していた女性社員はもっと気まずくて退職してしまった。欠員を出したことで『お前のせいで』と露骨な攻撃的視線が痛い。
会社の規則に社内恋愛禁止はないが、浮気・不倫はさすがにバレたら問題になる。業務時間中の不貞なんて論外……まぁ、逆に言えば、バレなければ問題ないと言うことになる。
俺以外の不倫していた同僚も『このスリルが癖になる』と社内不倫を楽しんでいた……いけないことをするって、楽しいんだよ。
家族と会社を裏切って性的快楽を得るとか、背徳感があって凄く楽しかった。
長年バレることはなかったというのに……いったいどうして、どこからバレたんだ。同僚と協力しあってアリバイ工作までしていたのに、何故だ。
浮気相手に同僚や部下、上司の嫁を摘まみ食いしたのがまずかったか? 他人の女を寝取って孕ませるのが大好きな同僚と乱交したのがまずかったか? 小遣い稼ぎにその動画を売ったのがまずかったか? それとも、手近な職場の若い新人社員を選んだのが失敗だったか?
きちんとした会社に売り込んだし、顔や音声の一部はバレないよう加工してもらっていたし、欲求不満な人妻や若くて世間知らずの独身女ならお手軽で扱いやす制御しやすくて、口止めしておけばバレないと思っていたのに……俺の行動を怪しんで興信所を雇ったりしない限り、バレるはずなんて無かった。
女遊びに協力してくれていた同僚たちも一緒に処罰されることになった。
さすがに解雇まではされなかったが、減給。奉仕活動への強制参加。女性社員への接触禁止。別部署への移動と降格。それに地方の子会社への左遷。
慰謝料が高額になった同僚は退職金を前借りした。それでも足りず、会社の寮に入れられ、必要最低限な生活費を残して支払いに当てる馬車馬のような生活が定年まで続く……それでも足りなければ、年金まで搾り取られるとか……。
仲間は散り散りにされて、連絡の取り合いも禁止。もう連むことも会うこともないだろう。
俺も遠くの男しかいない支社へ移動が伝えられた。しばらくの間はおとなしく引き継ぎと引っ越しの準備に追われることになる。
会社にこんな書類を送りつけてくるのは嫁くらいだろうと思ったのだが、嫁からこの話を切り出してこないのはどういうことだろう。
犯人は嫁じゃない? 俺と一緒に浮気バレした同僚の嫁が探偵でも雇ったのだろうか? 何人か嫁と不倫相手の夫から高額の慰謝料を請求され、離婚するはめになった上に無断で動画を売ったことで不倫相手からも慰謝料を請求されている。
俺のところには今のところ慰謝料の請求はきていない……嫁がこのことを知っているのなら、必ず請求してくるはずなのに、それがない。
もし、俺からこの話を切り出せば『え、あなた浮気してたの? それなら、私も慰謝料もらって離婚するわ』とか言われるだろうから、こちらからは何も言えないのだが……嫁は俺の浮気を本当に知らないのだろうか? もしそうなら、ここから好感度稼ぎをして挽回し、請求額を抑えることができるんじゃないか?
転勤先で家事をしてくれる女がいない。
向こうで引っ掛けるのも難しそうだから、嫁を赴任先に連れていくつもりだ。あれは俺の嫁なんだから、俺が行くところについてくるのは当然だろう。
今まで自由にさせてきたんだ。俺の稼いだ金で生活している嫁には夫に尽くす義務がある。
息子も成人して仕事にも馴染んできたことだし、母親の仕事は終わり。あれは嫁になついていて、家事もしていたし、ひとりでも生きていけるから放置で良い。
一人暮らしをして、そのまま適当な女と結婚して、その嫁に俺の老後の世話をさせるのも良いな。性的な介護もさせて、息子にバラされたくなかったらと脅して快楽堕ちさせて息子の嫁を寝取って托卵させる……ふふふ、想像するだけで滾るじゃないか。
遊びの時間は終わりだ。
これからは、夫である俺に尽くしてもらう。
だが、これまで冷遇してきたせいか、どう接したら良いのかとか、妻が好きなものとか趣味が解らず、好感度稼ぎは難航している。
誕生日すら忘れてしまったし、結婚記念日なんて式も挙げていないので存在しない。役所への届け出日なんて、あれにやらせたから知らない。
サプライズとか、急に媚びた態度や贈り物はいかにもなにかやらかしてご機嫌取りしてますって感じで逆に怪しまれる。八方塞がりだ。
それに、この歳で遠い支社に転勤になったとか、確実になにかやらかしたと思われる……怪しまれず、どう伝えたら良いのやら……まぁ、ゴネて従わなかったら力づくでも従わせるだけだ。
この家族がそろったタイミングで家長らしくバシッと話を切り出して、地方の小さな支社だがそこを任されることになったと説明し、女は黙って男についてこい。子供は巣立って自活しろと言ってやろうと様子をうかがっているのだが……目の前で繰り広げられる信じられない光景に、言葉が出ない。
「はーい、ゆき。あーんして?」
「あーん、んぐ……うん、やっぱり母さんのご飯は美味しいね。食べさせてもらってるともっと美味しく感じるよ」
「そうでしょ? 次はどれにしようか……うーん、これが良いかしら?」
「あ、それ、次食べたいなと思ったのだ」
「ふふふ、やっぱりね。なんとなくこれかなって思ったの。ゆきの好みはちゃーーんと把握しているから、ゆきが何を考えているかわかっちゃうのよ?」
「じゃあ、俺は今何を思っているか解る?」
「んー? お母さん大好き、愛してる?」
「大正解」
「やった♪ 正解したご褒美は?」
「あとで母さんにも食べさせてあげるよ。二つとも正解したから、頭撫で撫でもつけちゃおうか」
「やだ……嬉しすぎて濡れちゃいそう」
なんだ、これ。
俺の目の前には満面の笑みで息子にベタベタとくっついて、甲斐甲斐しく飯を食べさせる嫁と、それを嬉しそうに受け入れて甘える息子……ドラマや漫画でしか見ないような、まるで付き合いたてのバカップルか新婚夫婦みたいじゃないか。
嫁よ。お前の夫は俺だぞ? 何故、俺じゃなく息子に奉仕するんだ。相手が違うだろ。なに息子に頭をこすりつけて甘えているんだ。俺にそんな姿見せたことないだろ。相手が違うだろ。
「……な、なぁ、お前たち。いくらなんでもくっつきすぎじゃないか? 母子だぞ? まるで若いバカップルみたいじゃないか……気持ち悪い。
お前は俺の嫁だぞ? そっちじゃないだろ。俺以外の男には適度な距離を保たないか。お前がそんなのだから、息子がマザコンに育って、いつまでも独り立ちしないんだ。いい加減子離れしないか!」
「あら、家庭をかえりみないあなたがそれを言うの? 私のことなんて金食い虫の役立たずって言ってるのに、今更夫面しないでくれない?
息子は小さな恋人って言われるくらいなんだから、こんなの別に普通よ。好き同士がくっつくのは当たり前でしょ? バカップル上等。そんなのには負けないくらい私達は仲良しなんだから。
それに、母子だからベタベタくっついてはいけないって、何か問題があるの? 母子仲がいいのは良いことじゃない……どこかの誰かさんみたいに、お嫁さんを何十年と放置し続けて、家族を大切にしない方が問題でしょ。何言ってるの? 自分の行いを振り返ってものを言ってちょうだい。
それに、この子はちゃんとした職について、生活費も渡してくれるし、家事も手伝ってくれるのよ?
買い物に出れば重たい荷物は真っ先に持ってくれるし、車道とか危ない方を守るように歩いてくれるし、この前も素敵な贈り物をしてくれるし……どこかの誰かさんとは大違いよね~。
あなたが私にしてくれたことなんて、生活費を出してただけじゃない。それも酔わせた私を妊娠させた責任をとるっていう、両親親族の命令みたいなもので、あなたに拒否権なしの義務なんだから、それでマウントはとれないわよ?
そもそも、結婚生活ってお金だけあれば良いってモノじゃないのよ? お互いを尊重しあって、困難には支え合って、常日頃から感謝の気持ちを持って、大事だよ、大切だよ、大好きだよって言って、絆を深め合っていくものじゃない? あなたはそれをしてくれた? あなたがしてくれなかったことを全部してくれる息子を母親とか関係なく、女として大好きになっちゃうのは当たり前じゃない?」
妻の冷たい視線と強い言葉の雨。
今まで、こんな返しはされたことがない。
いつもオドオドしていて、俺の言うことには逆らわず、黙って従っていた女が、急にどうしてこんな反抗的な態度をとるようになったんだ……。
「うぐっ、そ、それは……そ、その服装は何だ? いい歳したババアがする格好じゃないだろ。歳を考えないか!」
袖のないニットでできた露出の多いセーターで、下着をつけていないうえに肌着も着ていないで胸が半分ほどしか隠れていない。丈が長いから下なんてはいていないようにも見える。年増がする格好じゃないだろ。
「これ? 家の中くらい、好きな格好しても良いじゃない。誰かに迷惑をかけるとか、あなたとゆきしか見てないんだし。この格好で外に出たりはしないわよ。
公序良俗に違反しているわけじゃないんだし。なんであなたにそんなことを言われないといけないの? あなたに私の自由を制限する権限なんてないでしょ?
この家だって、私の両親が私にくれた、私の家よ? 家主とその息子がどう使ったって良いじゃない。別に家の中でくらい好きな格好したって良いじゃない。
これもゆきからの大切な贈り物なのよ? せっかくもらったのなら、ちゃんと着て、贈り主に見せて喜ばせてあげるのが当たり前じゃない?」
「そうだね、母さん。凄く似合ってるし、母さんの魅力を思いっきり引き出してくれてるよ。想像以上で、本当に眼福。ありがとう、俺のわがままを聞いてくれて。凄く、嬉しいよ」
「ふふふ、喜んでもらえて良かったわ~。まぁ、お母さんはゆきが喜んでくれるのなら、ここで全裸になったっていいのよ? でも、こうした服を着た方がゆきは好きだもんね~。ふふ、変態さんなんだから……あ、今度裸エプロンとか挑戦しちゃおうか? その格好で一日家事しちゃうとか」
「なにそれ最高じゃないか。想像しただけで興奮しちゃうよ。変態なのはしょうがないだろ? 母さんが可愛すぎて、魅力的すぎるのがいけないんだから。こんな素敵な女性が母親だったら、息子はみんなマザコンになっちゃうって……俺以外にマザコンな兄弟が居ても、俺は母さんを独占するつもりだけど」
「あーーん、もう! そんな嬉しいこといわれたら、お母さんの手元から離してあげられなくなっちゃうじゃない♪ お母さん、もう子離れしないわよ~~」
「もとより、母さんから離れる気なんてないから。魅力的で高収入で貢いでくれる女性が現れたとしても、俺は母さんを選ぶから。母さんを他人に任せたくないから、老後もずっとお世話するから安心して。今も隙間時間に介護の勉強してるから」
「本当に? ふふふ、老後の介護までしてくれるだなんて……親孝行の息子に育ってくれて、お母さんとっても嬉しいわ~。そんなにお母さんを喜ばせてどうするの? 何も出ないわよ?」
「母さんを幸せにするのが俺の役目で生き甲斐だから、幸せそうに笑ってくれていたらそれで充分。
母さんは俺の幸せの象徴なんだから、傍にいてくれるだけで何もしなくて良いよ。家事も俺がして、尽くしてあげたい」
「あら、いいの? そんなに甘やかしてくれる男、あなただけよ……でも、何も返さずもらいっぱなしなんて……あ、おっぱいくらいなら、だしてあげようか?」
「まだ父さんが家に居るんだけど?」
「居るからなによ。私たちに興味関心なんてないんだから、どうでも良いじゃない。ほら、見て。この服、結構伸びるし、おっぱいの谷間に生地を押し込むとエッチじゃない?」
妻が胸部を覆う布を谷間に押し込み、乳房を露出させて息子に見せつけている……乳は俺が見てきた誰よりも大きいが、年相応に垂れて……乳房に、紫色の痣が……歯型? 内出血……まさか、キスマーク? 俺の嫁の乳房に、いったい誰が、キスマークをつけたんだ!?
「……うん、これは凄いね。さすが、童貞を殺す服の異名は伊達じゃないね。童貞じゃない俺でも、理性がぐらつくよ。今すぐ襲いかかっちゃいそうだ」
「あら、昨日もお母さんを貪って、全身獣のように吸いついてきたのに、朝からお母さんを襲っちゃうの?
お母さんで童貞卒業しちゃった息子も悩殺できるような服をお母さんに贈ってきたのは、こういうエッチなお母さんを見たかったからでしょ?
良いわよ、朝から可愛がってくれて。下も何も着けてないから、すぐにできるわよ? お母さんはいつでも受け入れOKなんだけど、確認しちゃう?」
「ちょ、ちょっと待て……お、お前……今、なんていった?」
息子が童貞じゃない……それは年齢を考えればおかしくはないことなんだが、母親で童貞を卒業したっていうのは、どういうことだ?
さっきからやたら距離が近く、胃もたれしそうなほどべたつく甘ったるい雰囲気に妻の息子に対する行動と俺に対する態度の温度差、羞恥心の低さ……こいつら、セックスしたのか? 母子で……しかも、俺が居るというのに、目の前で始めるつもりか? 本当に、俺の妻と息子か? 正気なのか?
「チッ……あなた、まだ居たの?」
「な、なんだ、その態度……」
「はぁ……ここまで言って、見せつけて、まだ解らないの? あなた、そこまでバカだったの? こんなのに私に大切な処女は散らされて、戸籍まで汚されたなんて……最悪よ。人生の汚点だわ」
「まぁ、そのおかげで俺が産まれてこれたんだから、そこには感謝しようよ……それ以外の母さんにしてきた仕打ちは絶対に許さないけど」
「そうね。ゆきを仕込んでくれた。会わせてくれた。そこだけは感謝してあげる。お礼に、そこで私達の愛の営みを見る権利をあげるわ。好きなんでしょ? NTRプレイ……まぁ、私は既に堕とされた後なんだけど」
そう言いながら、左手の指を見せつけてくる嫁と息子……その薬指には同じ色の指輪。
「お、おま……そ、それ、は……」
指輪なんて贈ったことはない。それじゃあ、この指輪は何だ? なんで母子でお揃いの指輪をつけてるんだ?
「違うの? 同僚といくつもの家庭をぶち壊しておいて、それを否定するの? 自分の家庭が壊れる可能性とか考えなかった? やり返される可能性とか考えなかった? 自分がやられて嫌な思いをすることは他人にするなって教わらなかった?」
「ぐ、うぅ……お前、まさか、」
「さて、どうだろうね。一応仕事だけはできる父さんなら、これがどういう意味か、解るよね?」
「ねぇ、ゆき。あんなといつまでもしゃべってないで、私の相手をしてよ。あんなのとしゃべってると、頭おかしくなっちゃいそうなの。ゆきの白いお薬で、お母さんを治してほしいなぁ~」
息子の股間に手を伸ばし、甘えるように身体をすり付けながらキスをねだる妻とそれを受け入れて顔を近づける息子……ああ、もう、無理だ。
「……クソッ」
見ていられなくて、自分の部屋に戻る。ほとんど家にいることがなかったから、部屋には最低限の家具と独身時代のものが少しだけしか置かれていない。
そんな私物を一人でダンボールに詰めていく。
ああ、惨めだな。
どうしてこうなった。どこで間違えた。
嫁と息子の幸せそうな顔がチラつく。
嫁と息子をもっと大切にしていたら……今頃は、あの中心にいたのは俺だったのだろうか。
嫁は俺の理想の女じゃない。ただ、摘まみ食いして捨てようと思う程度の女だったはずなのに……。
「どうして、あんなにエロくなってるんだ……あんなにエロい女だったら、放置なんてしなかったのに……」
愛していなかったとはいえ、妻を息子に寝取られた……息子に、自分の下位互換だと思っていた子に、盗られた……そんな敗北感を味わいながら荷物をまとめる。
「ん……これ、は」
緑の紙……妻の名前が書かれた離婚届と手紙。
内容は、『不貞の証拠は握っている』『おとなしく離婚して、金輪際関わらないならなにもしない。慰謝料の請求もしない』『もしなにかしたら、証拠を世間にばらす』『承諾したら、必須項目を記入して紙を置いて出ていけ』『賢明な判断を願う』と書かれていた。
「は、はは……」
もう、ダメだ。お終いだ。
なにもかもが手遅れだ。詰んでいる。
ここまでされたら、抵抗も無駄。諦めよう。
もう、これ以上、何も考えたくない。関わりたくない。一刻も早く、この場を去りたい。
そう思った俺は、必要最低限生活に必要な物だけカバンに詰めて、震える手で書類を書くと家を出た。
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