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不審な人物が現れました
そんな人たちが集う場所
しおりを挟む雑木林を最初に来た道と繋がっている方角に抜けたご隠居、末太郎は、また、見知った顔に出会った。
いつもフードのついたパーカーを着ている可愛らしい少年のような顔をした男だ。
ランニングでもしているのか、目の前を駆け抜けようとしたので呼びかける。
「小僧。
探偵の小僧」
足を止めた小村真守が振り返る。
こちらを見て、驚いたような顔をした。
「ご隠居じゃないですか」
「なにしてるんだ、こんなところで」
と訊くと、
「ランニングですよ。
体力づくりに。
良い探偵の基本です」
とあどけなくも見える顔で笑う。
「あ、でも、僕の師匠はあんまり体力なさそうなんですけどね」
「師匠?
ああ、通っているとかいう探偵養成学校とかいう胡散臭いとこのか」
「別に胡散臭くないですよ」
普通の専門学校と変わりないです、と真守は言った。
最近はなんでも養成学校とか、専門学校とかあるんだな。
そのうち、日本にも、スパイ養成学校とかできるんじゃないだろうか。
外国みたいに、と末太郎は思う。
「でも、僕の師匠は、養成学校の先生じゃなくて。
そこの喫茶店の店長ですけどね」
と真守はあの森の中のような喫茶店を指差す。
「まさか、雨宮店長か。
……お前までこの店に出入りしてるとは」
ともらすと、
「あれ?
ご隠居、雨宮さんご存じなんですか?
美人好きですからね~、ご隠居」
と真守は笑う。
「お前、ここによく通っているのか?」
「はい。
雨宮さんに探偵指南を受けにと、喜三郎さんの珈琲を飲みに」
喜三郎? と末太郎は渋い顔をする。
「あ、喜三郎さんもご存じなんですね。
今、飲んでこられたんですか? 喜三郎さんの珈琲」
「……飲んだな」
ずいぶん昔に、と末太郎は遠くを見ながら呟いた。
「おい、小僧。
余計なことをあの店で言うなよ。
雨宮店長にも、喜三郎にも」
はいはい、わかりましたよー、と軽い口調で言い、自称 探偵の小村真守は行ってしまう。
友人に、
「うちの孫が探偵になりたいと言うんだが。
なにかいい仕事はないだろうか」
と言われ、一、二度使ったことがあるのだが。
なんの推理もできないが、よく動ける男なので。
雑用を頼んだりするようになっていた。
「おい、探偵の小僧」
と呼びかけると、すごく嬉しそうにやってくる。
例え、頼まれるのが雑用だとわかっていても、誰かに探偵と呼ばれたいようだ。
末太郎は木々の向こうを見た。
木造の店の屋根あたりが窺える。
「変わった店だな。
面白い連中の溜まり場のようだ。
……あの小僧に用事を頼もうと思っていたが。
話が筒抜けになりそうだから、やめとくか」
そう判断した末太郎は正しかった。
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