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運命は植え込みに突っ込んでくる

お前に会いに来る言い訳を思いつかないんだが、来てしまった……

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 夜、青葉が訪ねてきた言い訳を考えながら、あかりの店に向かうと。

 あかりはカウンターの下にひそませているコンパクトなテレビでバラエティ番組を見ていた。

 からんからん、と開けて入っただけなのに、あかりは顔も上げずに言う。

「最近、賞味期限が十分とか三十秒とかのスイーツ、流行ってるじゃないですか」

 いや、お前は誰に向かって言ってんだ?
と思ったが、こちらを見てあかりは言った。

「木南さん、食べたことありますか?」

 自分だとわかっていたようだ。

 何故だ……と思ったが、そういえば、あかりのいるカウンターから駐車場が見える。

「いや、ないな」
と言いながら、青葉は、ホッとしていた。

 ここに来た上手い言い訳を思いついていなかったからだ。

 このまま、普通に話していれば、来た理由とか言わなくてよくなるかもしれないな、と思っていた。

「やはり、商品が話題になるって大事ですよね」

「……流行ってないのか、この店は」

 まあ、ランプの店とか、ピンポイントに絞りすぎだよな、と思ったとき。

 あかりが斜め後ろに吊るしてある、中世のカンテラみたいなものを見ながら呟いた。

「賞味期限10分のランプとか」

「それ、壊れてるだろ。
 賞味しないし……」

 そのあと、あかりと少し店の話をした。

 やはり、売上はかんばしくないようだった。

「店の名前、変えましょうかね?」

 渋い顔であかりは言う。

「『雑貨とランプの店』とか。
 まあ、実際のところ、ついでに置いてる雑貨の方がよく売れてますしね。

 最近、売れた中で、一番高かったの、ランプに添えたつもりで飾ったスーツケースでしたよ」

 ははは……とあかりは乾いた笑いを浮かべる。

「この間のあれか。
 ランプの方がスーツケースに添えられてたわけだな」

 そうなんですよ、とあかりはまた渋い顔をする。

「まあ、一応、上手くいかなかったときのことも考えて。
 ネットショップの準備もしてるし。
 喫茶コーナーも作れるようにしてるんですけど」

 そういえば、このカウンターそれっぽいな、と思いながら青葉は言う。

「最終的に、お前の友だちとか、来斗とか、早田先生親子とかが溜まって。
 カフェになってそうな気がするぞ……」

「……そうですね。
 あっ、そうだっ」
とあかりがいきなり声を上げた。

「ネットショップこんな感じにしようかなと思ってるんですけど。
 ちょっと見てもらえますか?

 感想、お訊きしたいんですけど」

 そう言いながら、ノートパソコンを開いて見せてくる。

「これ、業者に頼んだのか?
 お前作ったのか?

 意外にセンスいいな」

「意外ってなんですか……」

 そのサイトは、くすみカラーで統一されていて。
 アンティークな雰囲気もあり、よく出来ていた。

「だが、お洒落だが、大胆に商品置きすぎだぞ。
 もっと、ぱっと目に入る品数増やせよ。

 しかも、高い。

『まあ、綺麗ね。
 こんな商品、おうちにあったらいいわねーっ。

 でも、高いわねーって』
 そのまま客がスルーしそうだ」

「う~ん、そうですね~。
 ごちゃついたサイトって、見づらくて好きじゃないんで、こんな感じにしたんですけど。

 確かに最初のページに、もう少し商品があってもいいですよね」
とあかりが身を乗り出して画面を見るので、こっちが引いてしまった。

「どうしたらいいですかね?」
とあかりがこちらを見る。

「安っぽくなくて、この店の雰囲気に合ってるお値打ち商品をひとつでも、トップページに持ってこい。

 ここで買う、とっかかりになるだろ」

「そうですね。
 うーん……。
 仕入れ頑張りますっ」

「いいのがあったら教えてやるよ」
と言ったところで、あかりが、

「あ~、そういえば、木南さん、インテリアの輸入会社の方でしたね」
と苦笑いした。

「……忘れてたのに、相談したのか」

「いやいや。
 なんかパソコンとか得意そうで、頼りになりそうだったから」

 単に、サイト作るのに、頼りになりそうだからと言っただけだったのだろうが。

 何故か、頭の中で、ちょっと照れたように笑いながら、あかりが、

『頼りになりそうだったから』
と言ったシーンが何度も回った。


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