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捧げられし王様
キャベツ畑のコウノトリ
しおりを挟む「それにしても、そんな何もない状態でどうやって使者の心を惹きつけたのだ?」
国の窮状を訴えたハルモニアにジェラルドはそう問うた。
「たまたま花の季節だったので、私は身を飾れました」
「たまたま花の季節だったり。
たまたま牢獄に入れられたり、いろいろだな」
そう呑気に語り合う二人の前で、みんなまだ忙しげにしている。
デュモンだけはそれに参加せず、側で剣を抱き、じっとこちらを見つめていたが。
「まあ、他の者ではなく、お前に子ができたら、面白いであろうな」
「権力的にですか?」
近隣の大国や重臣の娘ではなく、辺境の地にある小国の娘が王の子を宿したら、特に強力な力を持つ者が現れたりすることもなく、面白い、という意味かと思ったのだが、違った。
「いや、面白い子が生まれそうだ」
と言って、ジェラルドは笑う。
そうですかー、と言ったハルモニアはジェラルドを見上げ、訊いてみた。
「……側室妃に任じられると、子どもができるのですかね?」
「ん?」
「それとも、式を挙げると、できるのですかね?」
「コルヌー。
ここに来る前に、ちゃんと教育して来いー」
キャベツ畑からコウノトリが運んでくるんじゃないぞー、といろいろ混ざったようなことをジェラルドは言っていた。
「いやいや、なんとなくはわかるんですよ。
なんとなくは」
宮殿に連れていかれたハルモニアは部屋の支度が整うまで、夜の庭園でお茶をしていた。
「でもほら、なんかいまいちわからない、というか」
「そんな風に純情ぶって、また陛下の気を引こうとしているのだろう」
とまだ剣を抱いたままのデュモンが言う。
「あのー、この方は大丈夫ですか?」
「すまない。
こんな奴だが、私の大事な幼なじみなんだ。
そして、こんな見かけだが、意外と人付き合いが苦手なところがあって。
あまり人に心を許さないというか」
それで、王様に固執してるのか。
愛情の方向性のおかしい方かと思った、とハルモニアは思う。
「ハルモニア姫」
と自分を守るモノであるかのように、剣を抱いたまま、デュモンは言った。
「お前は王ではなく、あの女神像に執着しているようだが」
鋭いな……。
「あの女神像を倒し、自らが女神となって、民に敬われたいのだろう。
そんなことせずとも、お前は、この大陸を統べるものが持つ宝石を持っておるではないか。
この国を打ち倒し、あの女神像を崩して、自らの像を建てれば良い」
だから、王様は置いていけ、とデュモンは言い出す。
「……デュモン」
「ああ、そうですねえ。
攻め滅ぼしてもいいですね」
なにっ? とジェラルドがこちらを見る。
「主にあの女神像を」
「……お前、あの女神像に恨みでもあるのか」
いや、ヒビが入ってるからですよ。
というか、女神像以外は滅ぼさなくていいんですが、とハルモニアは思っていた。
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