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Side - 184 - 22 - れすとらん、ただーの -

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Side - 184 - 22 - れすとらん、ただーの -


爺さん達の誤解を解くのに時間がかかった、疲れたぜ・・・、そう思ってるとまたドアが開いた。

「ベネット!、おまえ生きてたのか!」

親父が乱入して来やがった、また話がややこしくなりそうだ、・・・俺は頭を抱えた、だがここに来るの遅かったな。

「あぁ、親父は宿の食材を買い出しに行ってたんだ、だから俺が従業員に伝言頼んでた」

兄貴が疑問を察したんだろう、俺に言った。

それから兄貴と爺さんが親父に説明してくれた、話が長くなったからか、俺の隣では奴が退屈して居眠りを始めやがった、ソファに座ったまま顔を上に向けて白目を剥いて、・・・おい、涎が出てっぞ、汚ねぇなぁ・・・。

「じゃぁ、こいつが最初にこの街に来たのは170年も前なのか?」

驚く俺に親父は・・・。

「そうだな、タダーノの創業者、タダーノ・カカーシィー・ブライアスの店にふらりとやって来たそうだ、本人に聞いたら美味かったから店の常連になったらしい、そしてタダーノの甥のトシロー・クーチダケ・ブライアスと親しくなった、それからトシローの父親、トーリック・ダーヨォ・ブライアスだが、・・・妻を亡くしていてな、リゼお姉ちゃんの護衛で一緒にこの街に来たシャルロット・ブルナカノンと恋に落ちて再婚した」

「補足すると、トシローとその妹で俺の母親、キャディ・ハオスキー・ブライアスが同じ母親、・・・前妻だな、・・・それから、その下の妹、トーンデモーネ・マテタンダ・ブライアスと弟のハーネーノ・ツイタカヌー・ブライアスはトーリックとシャルロットの子供だ、まだこの代は王族の名残があってみんなミドル・ネーム付きだ、その次の世代・・・俺の代からもうこの大陸でブライアス王家の復興はしないって決めたからミドル・ネームは付けてないな、それからシャルロットの娘と息子はギャラン・ローゼリアでブライアス王家を再興した、元々ここに住んでた元ブライアス王国民の中から希望者を募って向こうの大陸に移住したんだ、大陸の端の方に領地をもらって、この土地に伝わる漁業技術を活かして向こうでも漁業を中心にして栄えさせ、国として独立した」

「おい、待て!、王家って何だ、俺は聞いてねぇぞ!」

「このあたりは昔ブライアス王国ってのがあって、タダーノとトーリックの親父さんが国王だった、その関係でウチは平民みたいな暮らししてるが一応爵位持ちの貴族だぞ、下級だがな・・・」

「・・・は?、・・・貴族・・・」

「そうだぞ、王国時代の国宝もウチが預かって倉庫で保管してるし、毎年新年の晩餐会の招待状も王家から来てる、ウチみたいな下級貴族は来ても来なくても良いっていうから最近は行ってないがな、あと、ギャラン大陸にあるブライアス王国からも毎年招待状が届いてる、遠いから行ってないが・・・今の国王はダターラ・コゲバイイダロ・ブライアス陛下で、うちとは血縁だぞ」

「なんで俺に黙ってたんだよ・・・」

「教えようとしたがお前は勉強が嫌いで、基本的な文字の読み書きや計算を習って次に歴史や王家について教えてやろうとしたらハンターになるんだって出て行ったじゃないか、下手に教えて悪い奴等に利用されないように黙ってた方が良いだろうってことになった、そのうち教えるつもりではいたが・・・すまん忘れてた」

「それで、なんで爺さんや兄貴達がこいつと仲良いんだ?」

「リゼお姉ちゃんは人嫌いで気難しいが、一度身内って認められたら家族同然の付き合いをしてくれる、・・・俺たち一族はリゼお姉ちゃんと誠実に向き合い、家族として付き合ってきたから信頼関係が出来てるんだ、だが・・・例えばお前が白銀の大魔導士様の正体を公表したり、幻影についての秘密を誰かに漏らしたら、・・・俺やお前の代でその信頼は一気に崩れるだろうがな」

「何度も言ってるように俺は恩人を売るようなクズじゃねぇ、だが、何でこいつはあんな魔獣がウヨウヨ居やがる森に隠れて住んでんだ?」

「以前はこの国の王族とも親しかったらしい、女王陛下と親友だったくらいだからな、だが世代が替わると王族や官僚達、高位貴族の中にはお姉ちゃんを利用したり、自分の勢力に取り込もうとする馬鹿が出て来る、お姉ちゃんが身を隠して誰も来ない所に逃げてる理由は単純にそいつらの相手をするのが面倒臭いからだ」

「面倒臭い・・・」

「そうだ・・・、城に常駐して王家に仕えろ、騎士団長になれ、兵器や転移装置に魔力を補充しろ、開発した魔道具を寄越せ、祭典で魔法を披露しろ、子は産まなくていいから嫁になれ、他国の王族が顔を見たいと言っている・・・これはほんの一部だ、・・・俺が知らないだけで他にもっとあると思うぞ、毎日のようにこんな事を言われて、それに嫉妬した貴族連中に敵視されてみろ、誰だって嫌になるってもんだ」

「確かに隠れたくもなるな・・・」

「それに相手するのが面倒だって事もあるが、王族や他の貴族連中を守る為でもある、・・・さっき俺が言っただろ、人嫌いで気難しいと・・・、お姉ちゃんは怒りの沸点が人より低い、嫌だって言ってるのにしつこく無理強いするとブチ切れる、大魔導士って呼ばれてるくらいのヤバい力を持ってるのにブチ切れてみろ、国が更地になっちまう、実際何十年か前にブチ切れて王都の南にある山の上半分消し飛ばした、一体何をやってそんなに怒らせたのかは分からんが、・・・それをよく理解してる統一国王陛下からは白銀の大魔導士様を怒らせるなって命令も出てる、まぁ言っても分からん馬鹿が沢山居るからこんな事になってるんだがな」

爺さんの話を聞いてると、俺の隣で白目剥いて爆睡してた奴がビクッと跳ねて目を醒ました、呑気に夢でも見てやがったのかよ・・・。

「んぅ・・・朝なのです?」

「寝ぼけてるな・・・」

「あぅ・・・ごめん、・・・寝坊しちゃった、おじさんの朝ごはん・・・作らなきゃ、・・・あれ・・・サリーくんのお家?」

「よく寝てたな・・・、お前が白銀の大魔道士で、幻影っていうハンターだってこと話してた」

「え・・・もう知ってると思ってたのです・・・」

「あの家でお前ほとんど喋らなかったじゃねぇか、それでどうやって知るんだよ」

「そうなのですか・・・、あ、そうだ、私、サリーくんにご飯作ってあげようと思って・・・食材持ってきたのです・・・おじさんに酷い目に遭わされたから忘れてたのです、・・・ちょっとお台所借りるのです」

「・・・なぁ、本当にアレが白銀の大魔導士で冷酷非道なハンターって言われてる幻影なのか?」

「そうだぞ、疑うんなら今度お前の大剣で襲いかかってみろ、命の保証はせんが・・・」

「いやいい、せっかく助かった命だ、無駄に捨てようとは思わねぇ」





「うめぇ・・・」

「あぁ、お姉ちゃんの料理は絶品だ、俺は生涯かけても追いつけなかったな・・・」

あれから親父と兄貴は宿の仕事があって帰った、ここは田舎で観光客も滅多に来ねぇが、宿で提供してる風呂や食事を目当てにして地元の奴らが来る、だからこの時間は忙しくなるんだ。

・・・今俺と爺さんは奴が作った料理を食ってる、夕食には少し早いがな、やっぱり美味い、爺さんや兄貴の料理も美味いがどこか違う、調味料か、素材の捌き方か・・・あの家で食ってた味だ、まだそんなに経ってねぇが懐かしいな。

ハーブのたっぷり入ったトマトソースの肉入りパスタ、ニンニクやスパイスの効いた炙り焼きチキン、それから酸味のあるドレッシングを使ったハムと野菜のサラダ・・・。

「・・・まだ私も創業者、・・・タダーノおじさんの味には・・・追いつけないのです、・・・何が違うのかなぁって・・・工夫してるんだけどね」

「初代タダーノ、どれだけ美味かったんだよ、これより美味いとか・・・」

「あぁ。俺もガキの頃食ったがあれは別格だ、いまだに忘れられないな・・・貝の入ったリゾットが特に美味かった、俺も近付けようと努力はしたんだが・・・」

「なぁ爺さん、あの店、再開する気はねぇのか?、爺さん・・・爺さんの息子が早くに亡くなって閉めちまっただろ、この味を途絶えさせるのは惜しいぜ」

「孫・・・、お前の親父は料理の才能が無かったが、お前の兄貴、カカーシィー坊主には伝えてある、絶える事は無いだろうよ、初代に比べたらアレだがあいつの料理も十分美味い」

「まだ聞いてなかったが、何で早くにあの店畳んじまったんだ、人気あったんだろ」

「そうだな・・・、俺の技術は息子に全て伝えた、そりゃ真剣に教えたさ、これで店は安泰だって思ったんだがあの野郎、早くに死んじまっただろ、それで・・・息子との思い出があるあの店に居るのが辛かったって事もあってな、・・・だが一度は閉めたが、またレストランを再開させようと思って、お前の親父に教えてみたら才能が全く無かった、魚料理が別の何かになっちまった時には驚いたな・・・それで、お前の兄貴に教え始めた、そこそこの料理ができるようになったが奴には宿の仕事があってレストランまでは手が回らん、この辺で気力も何もかも尽きちまったんだろうなぁ・・・、もう潮時だって思ったんだ、だから再開は諦めた、恐らくお前の兄貴の下の子供達やお前の子供が料理できるようになるまで俺は生きてないだろう、初代タダーノには申し訳ないがな」

「・・・なぁ爺さん、俺がレストラン再開させたいって言ったら・・・教えてくれるか?」

「お前、ハンター辞めちまうのか?」

「あぁ、やりたいことやって、行けるとこまで行った結果が金級のハンターだ、自分でもよくやったと思ってる、だが自分の力に慢心してあの大陸で死にかけた、自分の年齢を自覚・・・ハンターやるにはもう歳だって感じたし、命が惜しくなった、まだいろんな契約があってすぐには辞められねぇ、だが徐々に仕事を片付けて最終的にはこの街で落ち着きてぇ、それでハンターしかやってねぇ俺に何ができる・・・って考えた時、料理ならそこそこやれるんじゃねぇかって思った、護衛の依頼で野営した時も俺の料理を一緒に食ってた奴らからの評判良かったからな、まだどれだけ爺さん達の味に追いつけるかは分からねぇが・・・」

「・・・そうか、だが少し遅かったな、俺は腰を痛めてるし・・・年齢のせいか、最近味覚が鈍って来やがった、お前が作った料理、美味いかどうか正しく判断出来んぞ・・・」

「・・・あの、・・・私がおじさんに・・・教えようか?」

「お姉ちゃんが・・・でも、他の仕事忙しいのに・・・」

「・・・この街の私の薬屋・・・また再開するつもりなのです!、・・・だからしばらくこの街を行ったり来たりするの、・・・おじさんもまだハンターの仕事あるだろうから、・・・落ち着いたら少しずつ教えてあげるのです、・・・どう?」

「お前が・・・教えてくれるのか?、だが何でだ、お前には得な事何もねぇと思うが・・・」

「あのレストランは・・・私にとっても大事な場所、・・・続けてくれたら嬉しい、・・・それから、おじさんにお願いがあるのです、・・・これは取引きなのです」

「・・・何だ」

「私の身内に、駆け出しのハンターの子がいて、・・・あの大陸で、おじさんと同じ依頼を受けて、・・・片腕をなくして、もう片方の腕も動かなくなっちゃったの、・・・今はあの家の・・・おじさんが寝てたベッドで治療中なのです・・・でもまだハンターやりたいらしくて、・・・、一人前になれるまで、ハンターの基礎、・・・誰か教えてくれる人、探してたのです・・・ずっと一人でやってた私じゃ参考にならないから、・・・ギルドでの振る舞いや、注意点とか、・・・最初のうちは一緒に依頼を受けて欲しい・・・お願いできないかな、・・・その代わり・・・私のお料理の技術、・・・全部おじさんに教えてあげるのです」

「お姉ちゃんが教えるなら大丈夫だ、俺の孫以外だいたい何とかなる」

「親父・・・どれだけ才能なかったんだよ・・・、それに、駆け出しハンターがあの依頼受けたのか、俺が受けた時は金級以上が条件って言ってたが」

「うん、金級に上がったばかりの人が・・・パートナーとして・・・連れて行ったらしいのです、・・・特に止められなかったって・・・その人はまだ行方不明・・・多分もう・・・」

「俺が失敗したから、条件を緩和したのか・・・、あいつが言ってた依頼を受けた俺以外の馬鹿ってお前の身内だったのか・・・あ、やべぇ!、お前の事、・・・ランサー大陸に白銀の大魔導士が居るって、ここに来る前に情報屋に言っちまった!」

「・・・大丈夫、・・・知られても誰も会いに来ないと思うのです」

「それもそうだな、あの魔獣どもはやべぇ、騎士団でも全滅するだろ・・・、とにかくすまねぇ、知らなかったんだ、奴には白銀の大魔導士が恐らく幻影っていうハンターで、幼女と一緒に住んでたって事を喋った、その時はお前が幻影だって気づいてなかったからな・・・あいつには嘘教えちまったが・・・」

「・・・念の為に、・・・その人に忠告しに行こうか、無闇に人に言っちゃダメって・・・それはどこの誰なのです?」

「・・・待て!、怖えよ!、まさかお前そいつ消しに行くんじゃ無いだろうな、一応奴とは友人なんだが!、行くんなら俺も行く」

「じゃぁ早めに行くのです、明日か明後日か・・・、私が知ってる街なら転移するからすぐなのです」

「・・・おぅ」

「それから最後に、・・・一つだけ注意点、あるのです・・・今、この街で、私が昔名乗ってたリゼル・フェルドって男の子の事を覚えてる人は・・・もうほとんど居ないのです、だからここに居る時は、私はリゼル、薬屋のリゼル・・・その名前でこの街の住人登録してるし、まだ生きてる事になってる、・・・だからこの街では私の事、リゼルって呼ぶ事、・・・いいね」
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