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647.温泉再び3

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「うーんうーん、ヴェル。
ごめんね。母は13歳で既にA級だったのよ」
申し訳なさそうにキャロリーヌがヴェルに伝えた。

ヴェルがキョトンとした表情で姉を見つめた。
涙は止まり、口を丸くしていた。
人はこれを呆然自失と呼ぶと誠一は思った。

何故かキョロキョロしだすヴェル。
そして誠一はそんなヴェルと目が合った。
誠一は目を逸らしたかったが、
ヴェルの眼光がそれを許さなかった。

「現学年では最も早いB級だね。
ヴェルトール王国の大魔導士ファウスティノの
主宰する魔術院で僕らは、最も優秀な人材で
パーティってことさ。
それにこの若さでは異例のはやさだりょ」
珍しく誠一は舌を噛んだ。
誠一は、フォローしたことになっているかどうか不安だった。

「そっそうだな。兄貴や姉貴を越えたのは確かだしな。
うおおおっ俺はやったぞ、アル、シエンナ、俺らは学年最強だ」

どうも先ほどのようにヴェルの威勢が良くなかった。
ヴェルは感動を一度、削がれてしまった。
もう一度あの感動と興奮は戻って来なかったようだった。
何となく空々しく聞こえてしまったが、
シエンナの手を握り、ヴェルのように片手を上げた。

「おうううっ!ヴェル、そうだ俺たちはやったぞ。
なあ、シエンナ」

「ひょあ、そっそうね、やったー」
シエンナの目は魚の腐った目のようだった。
棒読みの様な声に何の感動も籠っていなかったが、
それは誠一も同様であった。

「ところで先生、B級からA級への
昇格も数をこなせば、いいのでしょうか?」
誠一の問いに剣豪が首をかしげた。
「ふーむ、今と昔では条件が違うかと。
マリアンヌ殿から説明を受ける方がいいかと」

誠一はマリアンヌに同じことを尋ねた。
受付で説明を受けるのが一番でだが、
ひっきりなしに訪れる冒険者の相手に忙しそうであった。
バルドロのように一人片隅で時間を潰しているような
受付担当者はいないようであった。

「ここの町にはバルドロさんのような方は
いないようですね。すみません、マリ。
教えて頂けませんか?」
マリアンヌがニッコリと微笑んだ。
頼られてうれしそうなマリアンヌだった。
極上の笑みに誠一だけでなく、
周囲でたまたまその笑みを見た冒険者も表情を崩した。
 
誠一の表情に不満げなシエンナ。
しかし何も言わずにマリアンヌの説明に耳を傾けた。
「F級からB級までは、ほぼ同じように昇格する。
単に数をこなせば、B級までは確実に到達するだろうな。
別に迷宮攻略をする必要もない。
近場での薬草の採取でも何十年かかるか分からないが、
理屈ではいつかはB級に到達する」

「B級からA級への昇級は異なる。
ギルド指定の依頼を受けて完遂する必要がある。
無論、一回でなく何度か受ける必要があるがな。
事実上の冒険者として最高峰に位置する。
そのため、ギルドでの精査により昇級が決定される。
S級はまあ、そうだな国家的な危機を未然に防いだとか
最上級遺跡を幾つも踏破した、
天災規模の魔獣や魔人を撃退するといったことで
国や大都市から授与される。
そう意味では、上位魔人を倒した君らも
S級を授与できる資格があるのかもな」

「まあ、あれは最後に上位魔人の首を宣誓が飛ばしましたから」
マリアンヌに適当に相槌を打ちながら、
誠一は、桁外れな量と速度で依頼をこなした結果なのかなと
誠一はB級への昇級を自分自身に納得させた。
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