【完結】うさぎの精霊さんに選ばれたのは、姉の私でした。

紫宛

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本編

閑話 メルフィと精霊(R15)

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今回のお話は、暴力的な発言が多く出ます。更にメルフィの本性がでるので、胸糞悪いお話かもしれません。
暴力、暴言、精霊様に対する尊厳を損なう発言などが多く出てきます。

※苦手な方は、御遠慮下さい。自己責任でお願いしますm(*_ _)m

この話を読まなくても、本編に影響はありません。

─────

コーネリアとセラフィが友人同士になった次の日……

「クソがっ!」

あー!腹立つっ!何なのよ、あれは!
メルフィは、昨日の出来事を思い出していた。


--------

折角王城に来たんだから、と贅沢三昧な毎日を送ってやると決めたメルフィは、精霊妃候補なら誰でも出入りできる、サロンに行った。

サロンには、侯爵子息のセルジュや、公爵令嬢のコーネリアなど、自分より遥かに上の身分の人達が優雅にお茶を楽しんでいて……自分も参加させて貰おうと、優雅に見えるように近付いて行った。

精霊妃候補は身分に左右されず、同じ立場として扱われる。

「あら、貴方は……」
「メルフィですわ、コーネリア様」

メルフィは、自分より上の身分の人にだけ挨拶をした。同じ立場や、平民は無視しして会話に加わった。

しかし、メルフィのその行動にコーネリア達は嫌悪感を抱いた。

当然だ、ここにいるのは精霊妃になる者、そして精霊妃の補佐を務めることになるかも知れない人間の集まりなのだから……。

なのに……、メルフィは彼らを見下していた。精霊妃候補は身分に左右されないと分かっているのに、全く理解してないメルフィだった。

「何のお話をされていたんですか?」

完全に彼らを無視し、身分の高い者だけに話しかけた。

「セラフィ様のことですわ」

なんですって?!

「セラフィ様が、精霊様を受け取った次の日に孵したそうです」

はぁ?!
あの屑に、精霊が生まれた?!そんな馬鹿な話ある訳ないわ!

「その話なら聞きましたわ、何でも朝起きた時には既に孵っていたそうよ。ですから、夜中に孵ったのではないかと噂になってますわ」

受け取った日の夜中に孵ったですって?!ふざけんじゃないわよっ!あの屑に、そんな力がある訳ないわ!

メルフィは、優雅に笑って話を聞いてるつもりだったが、顔に全て出ていた。

強い憎しみで怒りに震え、顔は恐ろしい形相になった。この場にいた殆どの人が彼女の形相に椅子を引き距離を取ろうとした。

そんな中、公爵令嬢コーネリアが、メルフィに話しかける。

「メルフィ様もご存知でしょう?」
「え?…い、いいえ、知りませんでしたわ」
「まぁ。メルフィ様の姉君の事なのに、ご存知ありませんの?」

知るわけないでしょう、あんな屑の事などっ


昼食時になって、その話はここで終わった。



あー、腹立つっ!何よっ、セラフィの事ばっかり……あんな屑の話なんかどうでもいいのよっ!
 
昼食後、サロンに行けば誰もいなかった。1人でサロンにいても仕方ないから、探しに出かけたけれど……

「にしても、セルジュ様もアレクシス様もどこに行ったのかしら?」

アレクシス様もセルジュ様と同じ侯爵子息。
仲良くなれば、何れ婚約者になれるかもしれないわ。

精霊妃は、別に結婚が出来ないわけじゃない。精霊はとても寛容で、精霊妃を愛しているが、結婚を反対したりはしない。

ただし、自分が気に入らなければ全力で引き離すが……

「庭園の方にも行ってみるか……」


そうして向かった先に、コーネリア様がいた。

なんで、あの屑も居んのよっ!
しかも、コーネリア様となに仲良く笑って話してるわけ?!

話すな、顔を上げるな、笑うなってあれほど言ったのにっ!本当に、使えない屑ね!

「コーネリア様、こちらにいらしたのね。サロンに居ないから、どこに行ったのかと思いましたわ」
「メルフィ様……」

私がコーネリア様に話しかければ、後ろにいた屑はすぐに俯いた。

「あら?コーネリア様……その鳥は?」
「精霊様ですわ、先ほど孵りましたの」

チッ

あの女も孵ったって言うの!?

孵ったって言う鳥を睨みつけた、近くにいたうさぎも睨みつけたが……

屑にはお似合いの精霊ね!

「それより、メルフィ様?」
「何かしら?」

(何よ……そんな顔して)

「セラフィ様には挨拶しませんの?」

はぁ!?挨拶?馬鹿なの?
なんで私が、あんな屑に挨拶しなきゃなんないのよっ!
しかも、同じ精霊妃ですって?

「はっ!あんなのと一緒にしないで貰えます?」
「……セラフィ様は、最速で精霊様を孵した方ですわ」

最速って……あんなチビで、見るからに雑魚そうな精霊よ?どうせ大したことないわ。

「どうせ、雑魚精霊でしょ?セラフィそっくりの」

その後、セラフィが何か文句を言おうとしたから頬を張り倒したら……



セラフィのそばに居た、うさぎの雰囲気が急に変わった。

「え……?な、に……」


セラフィ達が後ろに下がって、この後のことは殆ど覚えていない。

ただ、あのうさぎの目が急に光ったと思ったら、全身に虫が張り付いていた。

足がいっぱいの細長い虫や、黒く気色の悪い虫が全身を這う感覚…
見たくもないのに、目に入る全てに虫がいて……気が狂う程だった。

気がついたら朝になっていて、あの時の事は一瞬夢だと思った。
でも違った……日にちが変わってたから……



「くそっ!セラフィめっ!私に刃向かったらどうなるか、また体に教えてやらないと分からないみたいね!」
「おやめ下さい、セラフィ達に手を出せば、今度はどうなるか……」

騎士が止めるけれど、無視した。

「うるさいっ!私に指図するな!」

机の上にあった本を侍女に向かって投げつける。けれど、それは、騎士によって止められた。

(チッ)

「……」


騎士や侍女は、もう何を言っても無駄だと理解した。上に報告し、判断を仰ぐしかないと。だから、黙り扉付近に下がった。

「くそっ!そもそも、コイツがさっさと孵らないのが悪いのよっ!」

そう言って手元にあった花瓶を、精霊の卵に投げつけていた。

「なんでお前は孵らないのよっ!」

扉付近に下がった侍女や騎士達だったが、精霊の卵を案じていた。過去に会ったどの候補よりも、メルフィは1番最悪な候補だった。

精霊の卵に危害を加える者など……どれだけ過去を遡っても、メルフィ以外誰1人としていなかったからだ。




「その上、コーネリアの所も精霊が孵ったですって?!ふざけんな!さっさと孵りなさいよっ!この屑っ!私はアンタの精霊妃なんだから!」

卵に向かって、暴言を吐き続けるメルフィ。


彼女は分かっていなかった。
そもそも、精霊を道具としてしか思ってない者に精霊妃になどなれるはずがない事を。

メルフィの卵が、───の精霊妃だと言うことを。



コーネリアとセラフィ以外の卵はみな、精霊王の力を借り精霊妃が卵に化けている事を、彼らはまだ知らない。

『我が精霊妃を、傷付けるなど……』

この日メルフィは、精霊王達を確実に敵に回したのだった。

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