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本編

第10話

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3日目の朝、私の部屋にコーネリア様と侍女の方が大勢来ました。

お披露目の舞踏会は、夜だと聞きましたが……?

「あの……?」
「セラ様、先ずはお風呂に入りましょう?」

はい?
朝ごはんを食べ終わった頃に急に来て、まさかお風呂に入るよう言われるとは思ってなかったです。

訳が分からなくて、アンナさんを見やると心配そうに私を見つめていました。

「大丈夫ですわ、準備は朝からする物ですから!わたくしに全てお任せてくださいな」
「……分かりました。コーネリア様、侍女の皆様、セラフィ様をよろしくお願い致します」
「アンナさん……」

アンナさんは本当に忙しいのか、一礼して空になった食器を乗せたカートを引いて部屋を出ていった。

ジーク様とフェリクス様は……
流石に部屋の中いるのは良くないみたいで、ネリア様の騎士と一緒に部屋の外に出て行った。


私はと言うと……

部屋の備え付けのお風呂で、ネリア様の侍女の方に脱がされていました。1人で出来ると言い張ったけれど、ニッコリと微笑まれ「ダメです」と言われてしまった。

体を洗うのも、髪を洗うのも、全部侍女の方がやってくれました。

因みにアンナさんは、1人で出来ると言ったら、用意だけして後は任せてくれていました。

その後は、体をマッサージしてくれたり、香油?を髪や体に付けたりしてくれました。
それだけなのに、お昼までかかりました。

お昼ご飯を軽く食べた後は、仕立て屋さんが持ってきたドレスに着替えて、宝石のついたアクセサリーもつけてくれました。

私は、申し訳ないような、でも嬉しいような複雑な気持ちで、されるがままです。

隣で、同じように椅子に座るネリア様を盗み見る。

堂々としてて、凛々しくて、とても格好いいです……私とは大違い…

「あ……」

目が合って、何だか恥ずかしくなった私は、俯いてしまいました。

「俯いてはダメよ、セラ様」
「ネリア様?」
「貴方は、ノクトール様を孵したのだから、自信を持って」
『そうですっ!我が主はから心優しくて、気高くて…そして何よりも、私が──になれたのは、頑張れたのは、貴方の存在があったから、なんですから!自信もって下さい!』

ノクトールが後ろ足で立って、小さな手で胸をドンッと叩いた。その姿は、舞踏会に合わせ私とお揃いの紳士服(上着だけ)を着せられている。

「ありがとう……ノクトール、似合ってるね」
『当然ですっ!あるじ様の隣に立つのに、相応しい格好をしなければっ!』
ぬし様!私は?私も似合ってる?可愛い?』

ノクトールの隣には、ネリア様の精霊様のレーヴェ様が、首元に可愛いリボンを付けてポーズを決めていた。

「ふふ、似合ってるわ、レーヴェ」

ボサボサだった髪の毛は、お城に来てから滑らかになって手で梳かしても引っかかることは無かった。

青みがかかった銀の髪は、緩く三つ編みにされて飾りを付けられた。

顔も化粧水(お城に来て初めて知った)を念入りに付けられて、お化粧と言うものをして貰った。

「セラ様、ほら鏡を見てみて」

ネリア様に手招きされて鏡の前に立つと、凄く綺麗な女の人が立っていた。
少し自分に似ている?気がするけど……だれ?

「ふふ、びっくりした?セラ様ったら、凄く綺麗なんだもの、私もびっくりしたわ」
「…!!、これわたし?」

鏡の中の女の人も、びっくりした顔になった。手を伸ばせば、鏡の中の女の人も同じように手を伸ばす。

「そうだわ、殿方にも意見を貰いましょう?あなた達、騎士様を呼んできて」
「畏まりました」

そうして入ってきたフェリクス様達も、普段の格好と違っていた。
騎士の正装なんだそうです。

いつもと雰囲気が違くて、胸が熱くなった。

「これは……」
「お嬢様!良くお似合いです!」

フェリクス様は驚いて言葉をなくし、逆にジーク様は笑顔で褒めてくれた。


全ての準備が終わる頃、静かに部屋をノックする音が響いた。

「お時間にございます。コーネリア様、セラフィ様」
「分かったわ。行きましょうか、セラ様」
「は、はい、ネリア様」

優しく微笑んでくれるネリア様に釣られて、私も心の底から笑みが零れた。

2人並んで廊下を進むと、階段下にメルフィが立っていた。


「なんで……」

その傍らには、痩せたライオンが控えていた。

「まさか……」

私が震えていると、ネリア様が優しく手を握ってくれます。後ろに控えていたジーク様達も隣に移動してきました。

「メルフィ様、どうなさったのです?そのような所で…」
「ふん。見て、私の精霊よ」
「そのようですわね。それで?貴方も今夜のお披露目に?」
「そうしたかったのだけど…、流石に無理だと、宰相様に言われてしまいましたの」

ネリア様がメルフィと話してる間、ライオンを見ると所々キズがあるように見えた。

『……馬鹿な子、グレイスを傷付けるなんて…殺してくれと言ってるようなものよ』
『そうですね、グレイスのパートナーであるソルレヴェンテは、嫉妬深く残虐な精霊ですから…』
『あの子、選定が終わる前に殺されるんじゃない?』
『有り得ますね』

2人の怖い話は、セラフィ達には聞こえていなかった。

「そう、でしたら何故ここに居るんですか?」
「セラフィが、出るみたいだから見てやろうと思って」

そう言って、メルフィの視線が私に注がれる。怖くなって、ネリア様の手を強く握ってしまう。

「ふーん、まぁまぁじゃない?……でも!」
「っ?!」

急に手を伸ばしてきたメルフィに、私は目を瞑る事しか出来なかった。でも、いつまで経ってもメルフィの手が私に触れることは無く、恐る恐る目を開けると……メルフィの手を握るフェリクス様がいた。

「フェリクス……」
「申し訳ありませんが、セラフィ様に触れないでくれますか?」
「ちょっ!離しなさいよっ」
「出来ません」
「あの屑に、分不相応なアクセサリーを外してやるだけよっ」

ドレスもアクセサリーも、私には相応しくない……そうメルフィは言う。

私も、そう思う。

でも、似合ってるって、言ってくれたから。
綺麗だって言ってくれたからっ

「これは、私のっです!私に似合うように、宰相様やネリア様、ネリア様の侍女の方が用意してくれたんです!だから、私のです!」
「なっ」
「ええ、その通りですわ。さっ、時間に遅れるわ。急ぎましょうか」

ネリア様が手を引き、メルフィの横を通り過ぎる。

ライオンの精霊様は、最後まで一言も話さなかった。

ノクトール様やレーヴェ様みたいに、お喋りじゃないのかな?それにしても、表情が曇ってる気がする……

『話せないのか?』
『あーぁ、ぬし様が巻き込まれないように守らなきゃね』
『ああ、そうだな』

急ぎ足で会場に向かう私達の後ろで、ノクトール達はライオンの精霊様をずっと気にしていた。

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