【完結】うさぎの精霊さんに選ばれたのは、姉の私でした。

紫宛

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本編

第11話

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私とネリア様は、2階へ行くための階段を上っていました。

(あれ?)

お披露目の舞踏会会場は、1階のダンスホールで行うと聞いたけど……

(なんで階段を上ってるの?)

「セラ様、今日の主役は私達と精霊様です」
「はい」
「ですから、ホールの階段上から登場し、紹介を受けて下に降りますの」

大きな扉の前に立って、ネリア様は教えてくれました。扉の前には騎士が2人立っていて、私達に頭を下げ

「セラフィ・グリゴール様、並びに、コーネリア・ファス様、ご入場!!」

騎士の方が声高に宣言し扉は開かれ、ホールに居た貴族の方々が一斉に振り向きました。

「っ」

先に私の名前が呼ばれたのは、私が先にノクトールを孵したから……

ネリア様と一緒に前に進みでるけれど、緊張して手と足が一緒に出てしまう。

私の左横には、ノクトールを乗せたクッションを両手で抱えたフェリクス様がいて、私はジーク様の左手に右手を添えました。

エスコートと言うらしいです。

何だか貴族になったみたいって言ったら、セラフィ様は貴族ですよ。と言われてしまいました。

「セラフィ・グリゴール様、月の精霊ノクトール様」

今度は宰相様に名前を呼ばれ、私とジーク様は前に進み出て、ジーク様は胸に手を当て私はドレスのスカートを摘みお辞儀をした。

そして再び、ジーク様にエスコートされて階段下に降りて行きました。

「コーネリア・ファス様、太陽の精霊レーヴェ様」

ネリア様の名前も呼ばれ、私とは反対の階段を降りて行きます。

フロアに降りると待っていたかのように貴族の方が集まってきました。

どうしたらいいのか分からず慌てる私に、ジーク様が代わりに対応してくれました。
彼らは私とノクトールに挨拶をしに来たそうです。

……遠くの方で、伯爵様夫妻がいるのが見えた。私の保護者なので、参加資格があるんだそうです。2人とも睨みつけるように私達を見ていました。

前にノクトールがした事を、根に持ってるんだと思います。

……私が伯爵様に逆らった時は、赤く晴れても鞭で叩かれました。

怖くなった私は、無意識にジーク様の腕を強く握ってしまったみたいで、彼は私の手に右手を添え

「大丈夫です。俺が居ます、フェリクスも居ます、精霊様も居ます。だから、心配しなくても大丈夫です。必ず、守ります」

と言ってくれました。ジーク様の言葉にフェリクス様もノクトールも頷きとても心強かったです。

でも、心で分かっていても、体はこわばって言うことを聞いてくれませんでした。
彼らの視線が気になって、私に親切に挨拶をしてくれる人達に集中出来ませんでした。

その後は、王様が来て伯爵様の視線はそちらに釘付けになり、私からは視線が外れ助かりました。

ネリア様とも合流して、一緒に雑談しながらお披露目会は終了しました。
ただ、伯爵様の態度が……どうしても気になります…。



─────

私達が舞踏会に参加している間、アレクシス様が月の精霊を孵していました。

「オオカミ……?」
『よぉ、俺はカイリオ、よろしくな』

ニカッと笑ったオオカミに、アレクシスは少し残念そうに答えた。

「……俺は、精霊妃には、なれなかったのだな…」
「補佐には、なれるかも知れんぞ」
「……セラフィ様の?」
「……さぁな」

アレクシスは、考えていた。


セラフィ・グリゴール。


メルフィ・グリゴールの姉。
先日、メルフィ嬢がサロンに来たが……第一印象は最悪だった。

セラフィ嬢とは、最初に会ったきりだが……メルフィ嬢の印象が悪すぎて、中々会いに行こうとは思えなかった。

「お前が思ってるような子じゃないぞ…」

カイリオ様が、庇うようなことを言うから、少し……興味が湧いた。

「明日、会ってみるか……」

アレクシスは、次の日セラフィ嬢に会いに行く事を決めた。ただ、1人で行くのにも勇気がいる…もし、万が一、メルフィの様な女だったら?

そこで、彼はセルジュを巻き込むことに決めた。彼は、争い事や怒鳴り声が嫌いでメルフィを避けている節がある。

最初は嫌がるかも知れんが、頼めば付いてきてくれるだろう。

アイツは周りに流されやすい。




───

舞踏会の次の日、セラフィはお城の庭園を一望出来るガーデンハウスに来ていた。アレクシス様にお茶の誘いを受けたからだ。

参加者は

セルジュ・ギャンタ、侯爵子息様
 セルジュ様の卵様
アレクシス・メーヴィル、侯爵子息様
 月の精霊カイリオ様
コーネリア・ファス、公爵令嬢様
 太陽の精霊レーヴェ様
私セラフィ・グリゴール。伯爵家の厄介者…
 月の精霊ノクトール様

4人がけのテーブルに、お菓子やお茶が置かれ、自己紹介が行われた。

私は、汗が流れるのを感じていました。

(絶対、場違いだと思いますっ!)

「まさか、わたくしがセラ様と一緒に舞踏会に出てる間に孵るなんて…思いませんでしたわ」
「……あぁ、俺も思ってなかったな」
「きっかけは何だったですか?」
「……分からん」

3人が和やかに会話してるのを、私はお茶を飲みながら聞いてました。
どうやって会話に参加すれば良いのか、分からないからです。

こんな風に、沢山の人と会話をした事が無かったから……。
友達は、ネリア様が初めてだったから…。




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