神に喧嘩を売った者達 ~教科書には書かれない真実の物語~

平行宇宙

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学園編 § 学校生活編

第75話 家庭科教室の霊

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 「まったく、次から次へと余計なもんを・・・」
 翌朝。
 淳平の車で、学校へと向かう道、グチグチと言われ続けている。
 いや、これは異空間である、お狐様の元から、この次元へと戻されて、気がついてからずっと、と言っていいかもしれない。

 僕は気がつくと、客間の布団に寝かされていた。
 僕が、あの祈祷室に戻ったと思って見に行ったら、畳の上で寝ていたらしい。
 夕飯時分には目が覚めたけど、その時からずっとだ。
 ご神職からはうらやましがられた、この加護のマーク、どうやらよっぽどの力ある霊能力者じゃないと見えないみたいで、日常生活には問題ないだろうってことだけど、さすがにこの二人は、そのよっぽどの霊能力者だ。

 「おひいさまの加護か。うらやましいのぉ。そうやって見ると、まさにお稚児さんじゃな。」
 好き勝手言ってくれる神職。
 「おまえさぁ、他の神々、どおするよ。嫉妬で狂って天変地異、とか、洒落にならんぜ。」
 淳平が頭を抱え込んでたけど、こっちからどうこうできる問題じゃないだろうに。
 「一応、大丈夫だと言われた。けど、ひょっとしたら、我も我も、ってなるかもしれない。」
 「はぁ?まったく節操なしが。」
 「仕方ないだろ。」
 「・・・とにかく、できるだけ隠しておけよ。ご神職。済まないがこのことはご内密に願えませんかねぇ。その、こいつがどこかに肩入れってのはちょっとばかし問題が。」
 「ホッホッホッ分かっておる分かっておる。昔から儂は飛鳥の全面的な味方じゃよ。AAOなんぞ関係なく、な。」
 「・・・そちらの方も、その・・・」
 「わかっとるわかっとる。」

 終始、神職はご機嫌だったけど、淳平は苦々しげだ。
 僕がどこかの神に加護を受ける、というのは、どこかの宗派に属すると思われる、まぁ、どこかの家に取り込まれる、という図になりかねない、ということらしい。
 その手のことは前々から言われてるし、知ってるけど、僕のことを、淳平の言い方を真似れば、つばをつけてる神ってのは、複数いるし、今更、な気がしないでもない。

 そんなことは当然淳平も理解しつつ、ついつい愚痴っぽくなるのは仕方ないんだろうけど、朝っぱらから、グチグチ言われるこっちの身になれって思っても、僕は悪くないだろう。
 「蓮華に殴られるのは覚悟しとけよ。」
 学校について、車から降りるときに、言われたその一言で、僕の気持ちはいっそう沈んだ。


 教室。

 「よっ、先生と朝帰りか?」
 また、面倒くさい絡みをしてきた男子生徒。和田、だっけ?あんまり接点はなかったはずだが、なんでこんなに朝からテンションが高いんだか。
 こんなもんに付き合えるだけのモチベーションもないし、僕は一瞥しただけで、無視して席に座った。
 「ちぇっ、澄ましやがって。なぁ、おまえ昨日も先生とどっかへ行ったよなぁ。寮にも帰らず、今朝も先生と登校って、どういう関係なんだ?」
 しつこいなぁ。
 「あんたには関係ないだろ。家庭の事情ってやつだ。放っておいてくれ。」
 「はぁ?だから何すかしてんだって言ってるんだよ。」
 「おーい、和田よぉ。昨日飛鳥は体調不良で早退した、そう言ったろ?」
 そんな様子を見たのか、太朗が慌ててやってきて、そう言った。
 そんな風に説明してくれてたのか。ならそれにのっかるか?
 「あの、飛鳥君のおじさんが大阪都でお医者様なんです。だから、そのおじさんのことも知ってる先生が、おじさんのところへ連れてったんです。」
 生島麻朝だ。そこまでの設定を知ってるのは、昨日親父さんからでも聞いたのか?
 「ほら、飛鳥が本当は体が弱いって先生も言ってただろ?あんまりそういうこと聞いてやるなよな。」
 聖也も参戦してきた。
 味方してくれるつもりかしんないけど、これだけ騒がれても、正直迷惑だな、そんな風に思いながら、僕は昨日の疲れもあって机に突っ伏した。なんだかんだで、霊力を大量に持っていかれて、体力的にも精神的にも結構きてる自覚がある。
 「おまっ!何寝てるんだよ!お前のことだぞ!おい。」
 和田がそんな僕の肩を掴んで起こそうとした。けど、その腕をどうやら太朗が掴んだらしい。

 「はいはーい。全員席につけぇ。朝礼だぞ。」
 そのとき、間抜けな声が響いた。淳平がやってきたらしい。
 「和田、鈴木、喧嘩はダメだぞ。」
 チッ、と和田は舌打ちし、太朗がどうやら僕の頭を撫でてから、席に戻ったらしい。淳平だしいいか、と一瞬思わなくもなかったが、怠い体をなんとか起こして、僕もきちんと座った。

 と、正解だったようだ。淳平がどうやらこっちを見てる。
 「田沼、これ取りに来い。」
 なんかビニール袋に入れたものを持ち上げて、淳平は言った。
 なんだ?
 しぶしぶ取りに行ったけど、餅?
 「昨日の体験できなかったんで、お店からいただいたものだ。誰かに教えて貰ってつくって先生に見せるように。昨日の早退の代わりな。昼休みに家庭科教室使えるようになってるから、誰かつきあってやってくれ。」
 麻朝と、いつもの3人が手を上げる。そしてもう一人、さっきの和田か?いやそれはやめて欲しいんだけど。
 淳平も渋い顔をしてるよな。
 「あー、えらく人気者だが、そうだな二人もいればいいか。じゃあ、生島と鈴木、悪いがつきあってやってくれ。」
 「はい。」
 「ウィッス。」
 「ちょっと待ってください。僕も手伝います。」
 「和田かぁ。田沼と仲良かったか?一応、生島は家の仕事でよく知ってるし、鈴木は田沼と仲がいい、ってことで頼んだんだが?」
 「同じ人とばかり付き合うのは良くないと思います。僕も田沼と仲良くなりたいです。」
 「あー、どうする田沼?」
 この流れで振るか?けど、和田はないな。これってどう考えても仕事絡みだろ?ふつうこんな代講あってたまるか。
 「・・・昼休みですよね?時間もないしよく知ってる人の方がさっさとできると思う。」
 「だそうだ。和田、悪いが、また近々なんかあったら協力してやってくれ。」
 立っていた和田が、ガタン、と音を立てて座った。
 納得はしてないようだけど、そこまで僕は気を使えないからな。

 そうして、昼休み、僕は麻朝と太朗とともに家庭科教室にいた。


 この部屋を使うのは、初めてだ。
 なんかゾロゾロついてきそうになったので、3人が入った段階で施錠した。
 なるほど・・・

 チェックで色々と回ったけど、ここいらは僕の担当じゃなかったから、僕がこの部屋へ入るのは初めてだ。特別教室ってことで、そもそもが高等部の学舎にあるしな。
 で、この部屋は水場が多い。
 大きく6台の机があって、そのすべてに水道が備えられている。

 水場、というのは、霊的な干渉を受けやすいんだ。
 雨の日の肝試し、なんて、霊能者からしたら信じられない暴挙だ。
 イベントで肝試しをやるような宿坊でも、雨の日は中止しているぐらいには、常識ってやつだ。

 まぁ、それはいい。
 今、僕は目の前の惨状に、正直頭を抱えそうだ。
 入ってすぐ息を呑む様子が見て取れたから、麻朝にも少しは見えているんだろう。
 なんていうか趣味が悪い。
 これが僕のここに誘導された理由なんだろうけど・・・

 古い霊だろう。
 そこにまずある陣は、むしろ、札、か。
 中国とかアジア圏で見られる降霊の札、もどき。
 そして悪いことに、その下にもう1枚。
 いや、下でもないのか?
 一つの紙に描かれてる?
 もう一つは悪魔教か?
 たぶん、だけど、封じの陣だ。もちろんもどきだけど。
 これだけでも、いつ汚染が発生するかわかんないレベルの異質の法の重ね掛け。
 まして、そこに降霊されたのであろう、古めかしい霊。
 きっと水攻めを含む拷問を受けて死んだのだろう女性の霊だ。
 いや拷問を受けた後、死にかけのまま川かなんかの水に放り込まれたか。水死独特のむくみがひどい。
 そして、死して尚手元に抱くロザリオ。
 キリスト教の殉死者、ということか。

 つまり、だ。 
 ここには、少なくとも3つの異なる法が重なってるってことだ。
 おそらくは術者が素人か霊力が少ないために、また、各陣、札の正確性が担保されていないために、かろうじて汚染が発生していないけど、ほんとうにデタラメな状態だって言える。

 浄化、する?
 といっても僕はちゃんとした浄霊とかはできないんだ。
 これでいいって言ってくれた方法はあるけど、あくまで素人のやり方で・・・

 『・・・お願い・・・』
 僕の逡巡を見極めたように、その霊が言った。
 『助けて・・・』
 霊は、自分が見えていると思うと、すがりついてくるんだ。だから大量にいるいろんな霊に気付いていないふりをしなくちゃならない。すべてをかまうわけにはいかないんだから。
 でもさすがに、この人は・・・

 『僕は滅することしか出来ないんだ。』
 『お願い。あなたのその光をちょうだい・・・』
 途切れ途切れだけど、そんな風に言ってくる。

 僕は、以前封印された霊を解放した方法を思い出す。
 それは怨霊と化していたけど、かわいそうなやつで、僕の霊力をボール状にしてそれで包んで欲しいって言われて、やってあげたんだ。生前の姿を取り戻す力を、ということだった。
 僕はその時と同じように、ボールを手の間に霊力で作っていく。
 それを霊に纏わせる。
 『元の姿を取り戻せますように。』
 そんな祈りにも似た気持ちを込めて、そのボールを維持する。
 するし、ゆっくりと膨れきって、あちこち傷だらけだった顔が、あどけない、と言っても良いぐらいの女性の顔になったんだ。
 『あぁ、もう痛くない。嬉しい、ありがとう。ありがとう。ありが・・・』
 涙を流しながら微笑む顔が、徐々に薄れていった。
 
 僕は、それを確認すると、もう何もいなくなったのにもかかわらず作動する、2つの性質を持った紙を丁寧に引きはがした。


 あ、確保用の袋、持ってないや。

 「飛鳥君、どうぞ。」
 麻朝が渡してくれた霊力遮断の袋を驚きながら受け取り、その中に入れた。 
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