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7 オリーブ、初恋の男の子に会う
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カーター様とはあの初めてのデート以来、何回か会ったけれどいつだってスカーレット様が横にいた。二人は自分たちの行きたい場所に行き、私の意見は通らない。
そして今日も、
「観劇のチケットが二人分だけですって? なぜ私のぶんがないのかしら? せっかくカーター様について来ましたのに、性格が悪いのね? 酷いですわ!」
と、スカーレット。
カーター様が見たいと言った観劇のチケットを手配したのは私のお父様だ。プレミアムチケットはなかなか手に入らないし、その席料は通常の3倍だった。
もちろんお父様は、私とカーター様の2枚分しか用意するわけがない。
「そうだよ。なんでスカーレットの席がないんだい?」
「逆にお聞きしますけれど、なぜスカーレット様の席が必要なのですか?」
「だって、オリーブ様はカーター様の妻になるのでしょう? 私はカーター様の従姉妹で、オリーブ様とはいずれ親戚になるのよ。いわば身内、姉妹のようなものでしょう?」
「身内・・・・・・スカーレット様と姉妹のようなものになる? 」
もうダメ。我慢ができない。
幼い頃の恋なんて幻だったのよ・・・・・・
「この劇の内容の元本はすでに読んでおりますから、あらすじを知っている私は帰ります。どうぞお二人で観劇なさってください」
そう言って、その場を後にした私の心は虚しさでいっぱいだ。初恋は掘り起こしてはいけない。甘い記憶のまま封印して、たまに懐かむだけにしておけば良かったのよ。
それでもお父様がせっかく、私の為にシュナイダー伯爵家に打診してくださったこの婚約を、破棄してもいいのかしら?
お父様に言えばもちろんこの婚約は白紙になる。けれど相手は伯爵家、こちらから破棄するには莫大な慰謝料を払わなければいけないのでは?
そう思うと迂闊に両親に、今までのことを報告していいものかと迷う。
そんな時、お兄様が帰国するという知らせを受けた。私の婚約をお祝いする為の一時帰国と聞き、複雑な思いになる。
☆彡
「オリーブ! ただいま! 大好きな初恋の男とはうまくやっているかい? 最近、手紙もこないから心配していたよ」
「えぇと、手紙はこのところ忙しくて、書く暇がなかったのです」
「そうか。婚約したばかりだものなぁ。ところで今から、私とシュナイダー伯爵家に行こう。父上も母上もご一緒に。私の親友がシュナイダー伯爵家で大事な話があるらしいのです」
「親友? いったいどういうお話なのかしら?」
「さぁ、僕にもさっぱりだよ。ただ親友はシュナイダー伯爵家の親戚、メンデス侯爵家の跡継ぎだ。とにかく皆でシュナイダー伯爵家に集合だ」
☆彡
私は両親と兄に伴われてシュナイダー伯爵家に向かう。案内されたサロンではカーター様が二人?
「やぁ、元気だった? 僕がオリーブと一緒にハーパー家の庭園で過ごしたアーサーだよ」
そのアメジストの瞳は澄んでいて優しい。あの頃の彼の穏やかな口調は変わらなかった。
彼だ!
私の初恋の男の子は彼よ!
私は嬉しさのあまり、両親も兄もいるというのに彼の胸に飛び込んで顔を埋めた。彼は軽く笑いながらも、しっかりと私の身体を抱きしめる。
「会えてとても嬉しいよ! 愛しいオリーブ!」
彼の声は透明感と重厚感を兼ね備えたバリトンボイス。昔よりもずっと大人びた声には色気もあって、私は恥ずかしさに頬を染めて、慌てて身体を離した。彼は残念そうに私に微笑む。
「さてと、双子の兄上! 私のふりをしてなぜオリーブと婚約したのか聞かせてもらおうか? 父上も母上もゆっくりと皆の前で説明をお願いしたい」
「はぁーーん。なるほど、なんとなく事の次第がつかめてきたぞ。どうりでオリーブが最近、元気がなかったわけだ。私はハーパー家で娘と一緒に遊んでくれたご令息に婚約の打診をしたつもりだ。それはあなた方にも伝えましたよね? あなた方は、オリーブを騙したのか!」
普段は温厚な私のお父様は、怒りで震えて額には青筋が浮き上がっていたのだった。
そして今日も、
「観劇のチケットが二人分だけですって? なぜ私のぶんがないのかしら? せっかくカーター様について来ましたのに、性格が悪いのね? 酷いですわ!」
と、スカーレット。
カーター様が見たいと言った観劇のチケットを手配したのは私のお父様だ。プレミアムチケットはなかなか手に入らないし、その席料は通常の3倍だった。
もちろんお父様は、私とカーター様の2枚分しか用意するわけがない。
「そうだよ。なんでスカーレットの席がないんだい?」
「逆にお聞きしますけれど、なぜスカーレット様の席が必要なのですか?」
「だって、オリーブ様はカーター様の妻になるのでしょう? 私はカーター様の従姉妹で、オリーブ様とはいずれ親戚になるのよ。いわば身内、姉妹のようなものでしょう?」
「身内・・・・・・スカーレット様と姉妹のようなものになる? 」
もうダメ。我慢ができない。
幼い頃の恋なんて幻だったのよ・・・・・・
「この劇の内容の元本はすでに読んでおりますから、あらすじを知っている私は帰ります。どうぞお二人で観劇なさってください」
そう言って、その場を後にした私の心は虚しさでいっぱいだ。初恋は掘り起こしてはいけない。甘い記憶のまま封印して、たまに懐かむだけにしておけば良かったのよ。
それでもお父様がせっかく、私の為にシュナイダー伯爵家に打診してくださったこの婚約を、破棄してもいいのかしら?
お父様に言えばもちろんこの婚約は白紙になる。けれど相手は伯爵家、こちらから破棄するには莫大な慰謝料を払わなければいけないのでは?
そう思うと迂闊に両親に、今までのことを報告していいものかと迷う。
そんな時、お兄様が帰国するという知らせを受けた。私の婚約をお祝いする為の一時帰国と聞き、複雑な思いになる。
☆彡
「オリーブ! ただいま! 大好きな初恋の男とはうまくやっているかい? 最近、手紙もこないから心配していたよ」
「えぇと、手紙はこのところ忙しくて、書く暇がなかったのです」
「そうか。婚約したばかりだものなぁ。ところで今から、私とシュナイダー伯爵家に行こう。父上も母上もご一緒に。私の親友がシュナイダー伯爵家で大事な話があるらしいのです」
「親友? いったいどういうお話なのかしら?」
「さぁ、僕にもさっぱりだよ。ただ親友はシュナイダー伯爵家の親戚、メンデス侯爵家の跡継ぎだ。とにかく皆でシュナイダー伯爵家に集合だ」
☆彡
私は両親と兄に伴われてシュナイダー伯爵家に向かう。案内されたサロンではカーター様が二人?
「やぁ、元気だった? 僕がオリーブと一緒にハーパー家の庭園で過ごしたアーサーだよ」
そのアメジストの瞳は澄んでいて優しい。あの頃の彼の穏やかな口調は変わらなかった。
彼だ!
私の初恋の男の子は彼よ!
私は嬉しさのあまり、両親も兄もいるというのに彼の胸に飛び込んで顔を埋めた。彼は軽く笑いながらも、しっかりと私の身体を抱きしめる。
「会えてとても嬉しいよ! 愛しいオリーブ!」
彼の声は透明感と重厚感を兼ね備えたバリトンボイス。昔よりもずっと大人びた声には色気もあって、私は恥ずかしさに頬を染めて、慌てて身体を離した。彼は残念そうに私に微笑む。
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「はぁーーん。なるほど、なんとなく事の次第がつかめてきたぞ。どうりでオリーブが最近、元気がなかったわけだ。私はハーパー家で娘と一緒に遊んでくれたご令息に婚約の打診をしたつもりだ。それはあなた方にも伝えましたよね? あなた方は、オリーブを騙したのか!」
普段は温厚な私のお父様は、怒りで震えて額には青筋が浮き上がっていたのだった。
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