8 / 13
8 僕は悪くない(カーター視点)
しおりを挟む
カーター視点
「はぁーーん。なるほど、なんとなく事の次第がつかめてきたぞ。どうりでオリーブが最近、元気がなかったわけだ。私はハーパー家で娘と一緒に遊んでくれたご子息に婚約の打診をしたつもりだ。それはあなた方にも伝えましたよね? あなた方は、オリーブを騙したのか!」
すっごい迫力だ。
貴族じゃないくせに、父上よりもずっと風格があるし。
やばい、ごまかさないと・・・・・・
「父上と母上のせいです。僕は言われたとおりにしていただけです」
ハーパー家当主の鋭い視線が怖くて、思わず僕は視線をそらす。アーサーの隣のライリー伯父上は・・・・・・うわぁーー、もっと怖かった。
「私は、そのぅーー、何というか・・・・・・」
父上も、しどろもどろ。僕たちはガタガタ震えながら青ざめた。
「オリバー! はっきり答えろ!」
ライリー伯父上の怒声に父上も母上も飛び上がる。
「アリアの温室庭園にお金がかかりすぎまして、シュナイダー伯爵家は借金だらけになっていたのです。また、このカーターも贅沢者でして160万ダーラーの服などを愛用。これでは到底やっていけない」
「ちっ! 父上こそワインを飲み過ぎですよ! 100万ダーラー以上のワインを頻繁に飲んでいたでしょう! せめて10万ダーラーのものにするべきだったんだ」
「だったら、お前の服だって10万ダーラーで良かったはずだ」
「そうよ。夫と息子の二人のせいですわ」
母上はずるい。僕たちに責任を押しつけて自分だけ逃れるつもりのようだ。
「アリアよ! 君は弟の妻として、当主夫人の自覚はあるか? あの庭園を手放すように私はアドバイスしたはずだが? あれを維持するのにいったいいくらかかると思っているんだ!」
「ですがあれは私の宝物ですわ。手放すなんてできません」
「つまりはカーターに僕のふりをさせて、ハーパー家からお金を引っ張ろうとしていたのか!! 呆れましたよ。情けない!」
弟は心底軽蔑したようで、僕達の顔を毛虫でもみるような眼差しで見つめた。
弟のくせに偉そうなアーサーめっ。少しぐらい優秀だからって調子に乗るなよ!
「ほぉーー、なるほどね。ではこちらから婚約破棄をさせてもらいますよ」
ハーパー家当主が地を這うような声を出す。
「あぁ、破棄ですか? では慰謝料をください! だってそちらが破棄を望むんですよね?」
僕は内心ほくそ笑んだ。
ラッキーだ。
婚約破棄してくれるなら莫大な慰謝料がハーパー家からもらえる。
「ほぉ? シュナイダー伯爵家の嫡男がこれほど愚かだったとは! 慰謝料は有責のそちらが、ハーパー家に払うものだ。詐欺罪で告訴してもいいぐらいだ」
ハーパー家当主を完璧に怒らせた僕は涙目になっていた。
「え? そんなぁ・・・・・・アーサー、僕を助けろ! 大商人とはいえハーパー家は平民だ。貴族を訴えるなんてできるはずがないよな? お前、弟だろ? 助けろよ!」
「元兄上! 今はそんな時代じゃない! 貴族だって悪いことをしたら裁かれる時代なのさ。兄上の頭の中はからっぽなのか? この状況で僕が助けると思うなんておかしいだろう?」
「アーサー、何を言う? ほら、父からも頼む。シュナイダー伯爵家を助けてくれ! お前は私の息子だろう?」
「いや、僕の父上はライリー・メンデス侯爵なので他人ですね。シュナイダー伯爵家がどうなろうと知ったことではない」
冷酷な弟は僕たちを一刀両断。なんて冷たい弟だよ! すると・・・・・・
バタバタバタバタ
「お待ちください! ただいま、来客中です。スカーレット様、お帰りください!」
侍女達の止める声が廊下に響き渡り、愛しいスカーレットが姿を現した。入るなり早速まずい言葉を発しながら。
「カーター様ぁーー! またオリーブにお金を払わせてお出かけしましょうよぉーー。え! まぁーー、アーサーじゃないの! いつ帰ってきたの? 侯爵家の跡継ぎになったのよね? ねぇ、まだ婚約したって話は聞いてないわ。私もまだ婚約者がいないのよ。だから、ほら、ちょうど良いと思わない?」
スカーレットはアーサーにしなだれかかり、胸をその腕に押しつけたのだった。
「はぁーーん。なるほど、なんとなく事の次第がつかめてきたぞ。どうりでオリーブが最近、元気がなかったわけだ。私はハーパー家で娘と一緒に遊んでくれたご子息に婚約の打診をしたつもりだ。それはあなた方にも伝えましたよね? あなた方は、オリーブを騙したのか!」
すっごい迫力だ。
貴族じゃないくせに、父上よりもずっと風格があるし。
やばい、ごまかさないと・・・・・・
「父上と母上のせいです。僕は言われたとおりにしていただけです」
ハーパー家当主の鋭い視線が怖くて、思わず僕は視線をそらす。アーサーの隣のライリー伯父上は・・・・・・うわぁーー、もっと怖かった。
「私は、そのぅーー、何というか・・・・・・」
父上も、しどろもどろ。僕たちはガタガタ震えながら青ざめた。
「オリバー! はっきり答えろ!」
ライリー伯父上の怒声に父上も母上も飛び上がる。
「アリアの温室庭園にお金がかかりすぎまして、シュナイダー伯爵家は借金だらけになっていたのです。また、このカーターも贅沢者でして160万ダーラーの服などを愛用。これでは到底やっていけない」
「ちっ! 父上こそワインを飲み過ぎですよ! 100万ダーラー以上のワインを頻繁に飲んでいたでしょう! せめて10万ダーラーのものにするべきだったんだ」
「だったら、お前の服だって10万ダーラーで良かったはずだ」
「そうよ。夫と息子の二人のせいですわ」
母上はずるい。僕たちに責任を押しつけて自分だけ逃れるつもりのようだ。
「アリアよ! 君は弟の妻として、当主夫人の自覚はあるか? あの庭園を手放すように私はアドバイスしたはずだが? あれを維持するのにいったいいくらかかると思っているんだ!」
「ですがあれは私の宝物ですわ。手放すなんてできません」
「つまりはカーターに僕のふりをさせて、ハーパー家からお金を引っ張ろうとしていたのか!! 呆れましたよ。情けない!」
弟は心底軽蔑したようで、僕達の顔を毛虫でもみるような眼差しで見つめた。
弟のくせに偉そうなアーサーめっ。少しぐらい優秀だからって調子に乗るなよ!
「ほぉーー、なるほどね。ではこちらから婚約破棄をさせてもらいますよ」
ハーパー家当主が地を這うような声を出す。
「あぁ、破棄ですか? では慰謝料をください! だってそちらが破棄を望むんですよね?」
僕は内心ほくそ笑んだ。
ラッキーだ。
婚約破棄してくれるなら莫大な慰謝料がハーパー家からもらえる。
「ほぉ? シュナイダー伯爵家の嫡男がこれほど愚かだったとは! 慰謝料は有責のそちらが、ハーパー家に払うものだ。詐欺罪で告訴してもいいぐらいだ」
ハーパー家当主を完璧に怒らせた僕は涙目になっていた。
「え? そんなぁ・・・・・・アーサー、僕を助けろ! 大商人とはいえハーパー家は平民だ。貴族を訴えるなんてできるはずがないよな? お前、弟だろ? 助けろよ!」
「元兄上! 今はそんな時代じゃない! 貴族だって悪いことをしたら裁かれる時代なのさ。兄上の頭の中はからっぽなのか? この状況で僕が助けると思うなんておかしいだろう?」
「アーサー、何を言う? ほら、父からも頼む。シュナイダー伯爵家を助けてくれ! お前は私の息子だろう?」
「いや、僕の父上はライリー・メンデス侯爵なので他人ですね。シュナイダー伯爵家がどうなろうと知ったことではない」
冷酷な弟は僕たちを一刀両断。なんて冷たい弟だよ! すると・・・・・・
バタバタバタバタ
「お待ちください! ただいま、来客中です。スカーレット様、お帰りください!」
侍女達の止める声が廊下に響き渡り、愛しいスカーレットが姿を現した。入るなり早速まずい言葉を発しながら。
「カーター様ぁーー! またオリーブにお金を払わせてお出かけしましょうよぉーー。え! まぁーー、アーサーじゃないの! いつ帰ってきたの? 侯爵家の跡継ぎになったのよね? ねぇ、まだ婚約したって話は聞いてないわ。私もまだ婚約者がいないのよ。だから、ほら、ちょうど良いと思わない?」
スカーレットはアーサーにしなだれかかり、胸をその腕に押しつけたのだった。
7
お気に入りに追加
848
あなたにおすすめの小説
【短編】王子のために薬を処方しましたが、毒を盛られたと婚約破棄されました! ~捨てられた薬師の公爵令嬢は、騎士に溺愛される毎日を過ごします~
上下左右
恋愛
「毒を飲ませるような悪女とは一緒にいられない。婚約を破棄させてもらう!」
公爵令嬢のマリアは薬を煎じるのが趣味だった。王子のために薬を処方するが、彼はそれを毒殺しようとしたのだと疑いをかけ、一方的に婚約破棄を宣言する。
さらに王子は毒殺の危機から救ってくれた命の恩人として新たな婚約者を紹介する。その人物とはマリアの妹のメアリーであった。
糾弾され、マリアは絶望に泣き崩れる。そんな彼女を救うべく王国騎士団の団長が立ち上がった。彼女の無実を主張すると、王子から「ならば毒殺女と結婚してみろ」と挑発される。
団長は王子からの挑発を受け入れ、マリアとの婚約を宣言する。彼は長らくマリアに片思いしており、その提案は渡りに船だったのだ。
それから半年の時が過ぎ、王子はマリアから処方されていた薬の提供が止まったことが原因で、能力が低下し、容姿も豚のように醜くなってしまう。メアリーからも捨てられ、婚約破棄したことを後悔するのだった。
一方、マリアは団長に溺愛される毎日を過ごす。この物語は誠実に生きてきた薬師の公爵令嬢が価値を認められ、ハッピーエンドを迎えるまでのお話である。
完結/クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私は王太子に婚約破棄され国外追放を命ぜられる〜ピンチを救ってくれたのは隣国の皇太子殿下でした
まほりろ
恋愛
【完結】
「リリー・ナウマン! なぜクラスメイトの私物が貴様の鞄から出て来た!」
教室で行われる断罪劇、私は無実を主張したが誰も耳を貸してくれない。
「貴様のような盗人を王太子である俺の婚約者にしておくわけにはいかない! 貴様との婚約を破棄し、国外追放を命ずる! 今すぐ荷物をまとめて教室からいや、この国から出ていけ!!」
クラスメイトたちが「泥棒令嬢」「ろくでなし」「いい気味」と囁く。
誰も私の味方になってくれない、先生でさえも。
「アリバイがないだけで公爵家の令嬢を裁判にもかけず国外追放にするの? この国の法律ってどうなっているのかな?」
クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私を救って下さったのは隣国の皇太子殿下でした。
アホ王太子とあばずれ伯爵令嬢に冤罪を着せられたヒロインが、ショタ美少年の皇太子に助けてられ溺愛される話です。
完結、全10話、約7500文字。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
他サイトにも掲載してます。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
安息を求めた婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。
そして新たな婚約者は私の妹。
衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。
そう全ては計画通り。
これで全てから解放される。
……けれども事はそう上手くいかなくて。
そんな令嬢のとあるお話です。
※なろうでも投稿しております。
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
婚約者に捨てられたので殺される前に言葉も交わしたことのない人と逃げることにしました。
四折 柊
恋愛
家のために王太子の婚約者として生きてきた日々。ところがその婚約者に捨てられて家族には死を受け入れろと毒を渡される。そんな私にここから逃げようと手を差し伸べてくれたのは言葉も交わしたことのない人でした。 ※「婚約者に捨てられて死を待つ令嬢を連れて逃げた男の話」の対になる女性目線のお話です。こちらを読んで頂ければより分かりやすいと思います。
いくら何でも、遅過ぎません?
碧水 遥
恋愛
「本当にキミと結婚してもいいのか、よく考えたいんだ」
ある日突然、婚約者はそう仰いました。
……え?あと3ヶ月で結婚式ですけど⁉︎もう諸々の手配も終わってるんですけど⁉︎
何故、今になってーっ!!
わたくしたち、6歳の頃から9年間、婚約してましたよね⁉︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる