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6 カーター、思いがけない人物の来訪にびびる

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――シュナイダー伯爵家にてーー

(カーター視点)

「どう? オリーブ様とは仲良くできている? カーターには、なんとしてもオリーブ様と結婚してもらわなきゃいけないのよ」

「そうだぞ! シュナイダー伯爵家は建国当初から爵位を賜った名門貴族だ。ここで没落するわけにはいかん。カーターだってこの贅沢な暮らしがなくなったら困るだろう?」

「確かにこの暮らしが消えてしまうのは困りますね。ただオリーブの話はつまらなすぎる。僕はスカーレットが好みなんだ」

「スカーレットは確かに可愛くて良い子よ。でもモロー伯爵家(スカーレットの実家)も経済的には困っているの。スカーレットと結婚してもオリーブ様ほどの持参金なんて望めないのよ!」

「兄上にもアーサーを養子に出した時にかなりの援助金をもらったが、もうとうになくなったしなぁ。だいたい、アリアのあの巨大な植物園に維持費がかかりすぎるんだよ! 少しは規模を小さくして・・・・・・」

「嫌ですわ! お花や植物を愛でることがなぜいけませんの? あそこは私のオアシスですわ」

「父上こそ、ワインを買いすぎ、飲み過ぎでしょう? 一本、100万ダーラー(1ダーラー=1円)以上のお酒しか飲まないなんて」

「いや、カーターこそ、その服はいくらした? それは有名デザイナーの160万ダーラーの服だな?」

「こ、これは必要経費です。僕のような気品のある貴公子は、これぐらいは着こなせないといけない。父上こそ・・・・・・」





「お話中、失礼いたします。バートランド国からライリー・メンデス侯爵様が、もまなくこちらにお着きです!」
 
 執事が先触れの知らせを持ってくると、僕らは顔を見合わせて慌てた。

「なぜ急に兄上が? どういったことでいらっしゃるのだろう?」

「まぁ、大変! おもてなしの用意をしなければ、それにしても、どうしてこんなに急に?」

「アーサー様もご一緒です。そうそう、アーサー様は名門ノヴォトニー学園で副会長を務めていらっしゃるらしいですよ。さきほど先触れの者と少し話したのですが、成績はいつもハーパー家のご子息とトップを争っているとかで、さすがはアーサ-様です!」



 やばい・・・・・・実にやばい状況だ。
 あいつ、絶対怒ってるな・・・・・・




 あいつはシュナイダー伯爵家より家格がずっと上のメンデス侯爵家の養子に迎えられた。ライリー伯父上には子供がいなかったから、双子の優秀な弟が選ばれたのだ。



 父上も母上も、今や顔面蒼白。まさか、アーサ-とハーパー家の息子が繋がっていたなんて思いもしなかったからだ。




「やぁ、兄上。久しぶりだね? 僕が来た理由はわかるよね? やぁ、元父上に母上。ゆっくり話を聞かせてもらいたいな」

「アーサーが私にも聞いて欲しい話だと言ってなぁ。急に来てすまないね。で、アーサー、いったいオリバー達が何をしたというんだい?」

 ほどなくやって来た、ライリー伯父上と弟アーサー。
 

「ハーパー夫妻とご子息にオリーブ様がお着きです」
 
 執事の新たな知らせに、僕の心臓はバクバクだ。嫌な汗が背中をつたいはじめるのがわかった。





*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*


オリバー:アーサ-とカーターの父親です。 



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