（本編）カトレーネ・トマス前々公爵夫人の事件簿

雨降って、地、固まる（カトレーネ・トマス前公爵夫人視点）

　「君は、ジェイコブか･･････」

　メイソンは、うんざりして、その男の顔を見ていますよ。

「ほぉ、良くわかったじゃないか？」

ジェイコブは、にっこりと笑っていましたが、メイソンの横に座っていたマリアンヌがゆっくりと立ち上がりました。

「あぁ、貴方がその市井の学校で、メイソン様に罪をきせようとした愚か者なのね！　お婆様から、話は聞いていますよ。いずれ、この私が挨拶しに行こうと思っておりました。貴方のほうから、来ていただけるなんて手間が省けてなんて嬉しいのでしょう！」

　そう言いながら、ヒールを脱ぐと、なんとジェイコブの顔をそれで殴りつけたのです。全く、なんて、はしたない。後で、言って聞かせなければならないわ。そういうことは、誰も、見ていないところでやるものですわ。

「いいですか？　このメイソン様は、トマス公爵になり私の夫になる方ですよ？　このトマス公爵家に仇をなす者は私が許しませんよ。ジョナサン！　こいつを、縛り上げてちょうだい！」

　バーミュレは、大きな声で笑っています。


「さすが、カトレーネ・トマス前公爵夫人のお孫様ね！　ならば、私も負けてはいられないわ。クリストファー、私と結婚しましょう！　この私こそが、貴方を幸せにする女だわ」

　バーミュレに抱きつかれたクリストファーは、真っ赤になっていますよ。全く、だらしない。
なぜ、トマス家の男はこうなのでしょうね？

　ん？　ジェイコブを縛り上げて血が手についたジョナサンは侍女のセリアに手を拭いてもらっていますよ。

　なるほど、トマス家には、あと二組の結婚式が、立て続けにありそうです。


*:ﾟ+｡.☆.+*✩⡱:ﾟ


　皆様が、私の顔を見ております。なんでしょうかね？　全く、こんな年寄りに注目が集まるなど

「「「「カトレーネ・トマス前公爵夫人に乾杯！！　いつまでも、お元気で！」」」」

「「「「女傑の一族に乾杯！！　これからも、トマス公爵家のご婦人達にはさからえないわねぇーー。祝福を！」」」

「「「あははは。その通りだ！！　社交界のドンに永遠の命を！」」」

　全く、酔っ払った貴族の誰かが、永遠の命などと言っておりますよ。ふむ、永遠の命ね？　欲しいものです。だって、私はマリアンヌの子供も、その子供も見たいのですから！　私は今こそ、元気でいなくてはね！

　こんなアクシデントは、ご愛敬ですよ。生きていれば、いろんなことがあるものです。トマス公爵家は戦いますよ！　そして、その度に勝利するでしょう。

　雨降って、地、固まる！　雨なんて怖くはありませんよ。さぁ、これからかわいい孫達の人生ゲームが始まります。結果はもうわかっています。圧倒的勝利です！


完